ホンダ・フリードハイブリット ジャストセレクション 7人乗り(FF/CVT)【試乗記】
邪魔にならないミニバン 2011.11.24 試乗記 ホンダ・フリードハイブリット ジャストセレクション 7人乗り(FF/CVT)……263万7300円
ホンダのコンパクトミニバン「フリード」に、ハイブリッドモデルが追加された。24.0km/リッター(10・15モード)の燃費性能を誇る、多人数向けHVの乗り味は?
ちょうどいいホンダ
ホンダ・ミニバン初のハイブリッドが「フリード」から登場した。「フィット」ベースのコンパクトミニバン、フリードはホンダ自身も驚いているヒット作である。2008年5月の発売から3年間で27万台が売れた。ホンダ車全体のなかでも、フィットに次ぐセカンドベストセラーである。マイナーチェンジを機に、“ちょうどいい”ミニバンにもハイブリッドを載せて商品力アップというわけだ。
パワーユニットは1.5リッターのIMA。4気筒SOHCのエンジン本体は「CR-Z」や「インサイト エクスクルーシブ」に乗る4バルブではなく、2バルブユニット。1.3リッターの「インサイト」や「フィットハイブリッド」のエンジンを今回、1.5リッターに拡大したものだ。といっても、エンジンの出力は1.3リッターと変わらない。最大トルクが12.3kgmから13.5kgmに向上したのが目立つ違いである。
エンジンをアシストするIMAシステムもこれまで通りだ。現行のホンダハイブリッドは1.3リッターでも1.5リッターでも、モーターは同一スペックである。駆動用バッテリーも、形状を含めて同じものが使われている。高い汎用(はんよう)性を持つのがホンダIMAの特徴といえる。
じゃあ、そのうち「ステップワゴン」にもこのユニットが? とエンジニアに聞くと、それはないそうだ。ミニバンとなると、1.5リッターでも今のIMAではフリードが限界だそうだ。
試乗したのは7人乗りの「ジャストセレクション」。「フリードスパイクハイブリッド」にもちょっと乗った。
トルクアップの効果てきめん
車重は1400kg。7人乗りのフリードハイブリッドは1.3リッターハイブリッドのフィットより270kg、フィットシャトルよりも200kgほど重い。ホンダ・ハイブリッド随一のヘビー級は果たしてちゃんと走るのか? というのが興味のポイントだろうが、ちゃんと走る。というか、ひとり乗車なら、十分以上に元気なホンダ車である。1.5リッター化によるトルクアップの効果てきめんだ。
エンジンは基本回りっぱなし。“電動アシストエンジン”ともいえるホンダIMAは、ふつうのエンジン車と変わらない自然さを持つのが特徴だ。さらに、モーター系統を変えずにエンジン排気量だけを大きくすれば、アシスト感を含めたモーターのプレゼンスは相対的にますます小さくなる。フリードハイブリッドもまさにそうで、アイドリングストップしなければなんらふつうのクルマと言っていい。
ニッケル水素電池は3列目シートの床下に置かれている。体重56kgの人がいつもサードシートに座っているようなものだから、重量バランスもこれまでのフリードとは違うはずだが、とくになんの違和感も覚えなかった。
「オデッセイ」よりも17cm全高の大きい背高ミニバンなのに、カーブでコロンといっちゃいそうな不安定さとは無縁なところもこれまでどおりである。ボディーが傾いても、ねばっこく路面を捉えるサスペンションの豊かな"ストローク感"は、「ルノー・カングー」をほうふつさせる。乗り心地のよさも相変わらずだ。
たいへんよくできました
駆動用バッテリーの搭載で、3列目シート下の床は65mm上がった。だが、サードシートのイスの脚をその分、短くしたので、居住性に影響はない。「トヨタ・ノア/ヴォクシー」と比べてみると、フリードのボディー外寸は38cm短く、14cm低い。それを考えれば、3列7席の広さは「たいへんよくできました」である。
フリードスパイクハイブリッドにもちょっと乗った。リアクオーターウィンドウをつぶした後席が気になったので、リアシートに座った。なんですか、この広さは。しかも、座面が前席よりも一段高く、ドライバーが"しもじも"に見える。子どもも喜びそうだ。
もうひとつ、フリードシリーズ全体にいえる美点は、ダッシュボードが低くて、見晴らしにすぐれ、運転がしやすいところだ。低められたダッシュボードは垂直の壁面を持たず、机の平面にスイッチ類が並んでいるようなレイアウトだ。これも新鮮でいい。
今回、燃費は測れなかったが、10・15モード値は24.0km/リッター。純ガソリン・フリード(17.0km/リッター)の4割増しだが、30.0km/リッターのフィットには水を空けられる。
でも、フリードというクルマ、ミニバンに食指が動いたためしがない筆者でも、乗るたびにいいなあと思う。家族4人で、帰る田舎もないから、ミニバンは本当に必要がないのだが、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と同じ全長のフリードは"邪魔にならないミニバン"だと思う。ハイブリッドもまったく邪魔にならないが、ただし、同じ7人乗りジャストセレクションで比べると、“ハイブリッド代”は約44万円と、それなりだ。ちなみに、118psエンジンで、車重も100kg近く軽い1.5リッター純ガソリン版のほうが、加速データはいいそうです。
(文=下野康史/写真=荒川正幸)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。































