スバルXVハイブリッド 2.0i-L EyeSight(4WD/CVT)
日本の風景に彩りを 2015.12.14 試乗記 2012年のデビュー以来、たゆまぬ改良により進化を遂げてきた「スバルXV」。ハイブリッドシステムを搭載した上級グレードの試乗を通し、今日の実力を測った。ユニークなボディーカラーも魅力のうち
スバルXVと聞いてまず思い出すのは“色”だ。登場時のイメージカラーであるオレンジは鮮烈だったし、同時に設定されたカーキはオートカラーアウォードのグランプリに輝いた。その後もハイブリッドの追加時にはライトグリーン、限定車ではイエローを出し、今年10月のマイナーチェンジでは明るいブルーをガソリン車のイメージカラーに据えた。
スバルには熱狂的なマニアが存在することで知られる。水平対向エンジンや左右対称の4WDといった独特のエンジニアリングを愛し、ボディーカラーでいえば「WRブルー」を好む人たち。つまり「スバリスト」だ。しかしXVは対照的に、ライフスタイルのパートナーとしてライトにクルマと付き合うユーザーに受けている。このポジショニングを構築するうえで、色が果たした役割は大きかったのではないかと想像している。
そんなイメージをXVに抱いていたので、試乗車のボディーカラーがホワイトと判明したときには、ちょっとがっかりした。しかしウェブサイトを見ると、新型XVハイブリッドのイメージカラーはこのホワイトなのだった。編集スタッフは、そのあたりを見越して選んだのだろうか。それに色の主張が控えめだったおかげで、マイナーチェンジの成果を冷静にチェックすることができた。
エクステリアは、フロントフォグランプ周辺にL字型のクロムメッキを入れ、グリル内の横バーやバンパーのインテーク形状にもメリハリをつけたおかげで、表情がキリッとした。もともと白いXVは、黒いエクステンションパーツとの対比が鮮烈だったが、マイナーチェンジでその傾向が強まった。
インテリアは、インパネの飾り帯やモニター周辺のパネルにピアノブラックを起用して、クオリティーをアップさせていた。ただしメーターにブルー、シートのステッチにグレーを使うというコーディネートは登場時と同じなので、激変したという印象は抱かなかった。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ひんぱんに行われるモーターアシスト
ひさしぶりにXVハイブリッドの運転席に着いて、まず感じたのは視界の良さだ。ほかのスバル車もそうだが、インパネは低く、フロントピラーは適度な位置にあって、広くクリアな視野が得られる。ハザードスイッチがインパネ中央上という絶好の場所をキープしたうえで、立体感を強調した形状になっていることも好ましい。スバルが真剣に安全性を考えていることが伝わってくる。
後席や荷室の作りは以前と同じだ。後席は依然として身長170cmの僕にとっては十分すぎる空間を備えているが、ガソリン車に比べて床が高めとなる荷室については、トヨタの新型「プリウス」が駆動用ニッケル水素バッテリーの大幅な小型化を実現したのを見た後だけに、その技術を用いてフロアを低めてほしいと思った。
2リッター水平対向4気筒エンジンは150ps/20.0kgm、モーターは13.6ps/6.6kgmの最高出力と最大トルクをそれぞれ発生する。ちなみに新型プリウスは98ps/14.5kgm、72ps/16.6kgmだから、それよりもエンジン主導型のハイブリッドシステムと分かる。CVTを用いていることもプリウスとの違いだ。最高出力/最大トルクはマイナーチェンジ前と共通であり、走行感覚もほぼ同じ。ハイブリッドカーらしさは薄く、モーターを最近のダウンサイジングターボのように、トルクブースターとして用いているような感じがする。
インパネ中央上にあるマルチファンクションディスプレイの表示をエネルギーフローに切り替えて、運転しながらハイブリッドシステムの動きを観察すると、かなりひんぱんにモーターアシストを行っていることが分かる。特にトルクが十分ではないエンジンの低回転時に、積極的にモーターを回している。逆にCVTをマニュアルモードにして回転を上げるようなシーンでは、基本的にエンジンだけで走る。
記憶の中にある初期型の印象と最も違っていたのは、音が静かになったことだ。特に水平対向エンジン独特の、低中回転域でのバサバサしたノイズが抑えられたので、以前よりスムーズに回っているような印象を受ける。燃費は車載燃費計によると、おとなしく流せば20km/リッターを超える数字をマークした。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
腰高だからこそ感じる水平対向エンジンの恩恵
運転支援システムではアイサイトに加え、「アドバンスドセイフティパッケージ」がオプション設定された。ルームミラー周辺にアイサイト用とは別のカメラを、リアにミリ波レーダーを装備することで、ヘッドランプのハイ/ロー自動切り替えや斜め後方車両検知を行うというものだ。いずれも他車ですでに実用化されているものだが、定評のあるアイサイトにさらなる安心がプラスされたことは大きい。
2014年の改良で、
というのも、XVはハイブリッドを含めて、最低地上高が200mmもあるとは思えないほど腰の据わったハンドリングを味わわせてくれるからだ。久々にドライブした今回も、ロールを感じることなく自然に曲がれるという印象に終始した。同時に乗った「フォレスター」を含めて、背の高いクルマほど水平対向エンジンの低重心効果が体感できることが再確認できた。
フォレスターや「レガシィアウトバック」では大柄すぎると考えるユーザーにとって、XVは大きすぎないサイズでスバル製SUVの魅力を体感できる絶好の存在である。そこに静かさや乗り心地のレベルアップによって、ロングランでの快適性を高める方向の改良が施されたことはうれしい。
そして、これだけカラフルなボディーカラーをそろえる国産車は軽自動車やコンパクトカーを除けば異例なので、購入を考えている方にはぜひ思い切った色選びをしてもらって、日本の風景に彩りを添えていただきたい。
(文=森口将之/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
スバルXVハイブリッド 2.0i-L EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1780×1550mm
ホイールベース:2640mm
車重:1520kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:150ps(110kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4200rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:6.6kgm(65Nm)
タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17 97V(ヨコハマ・ブルーアースE70)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:286万2000円/テスト車=325万6200円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイト・パール>(3万2400円)/アドバンスドセイフティパッケージ+新型SDナビ<リアビューカメラ+地デジアンテナ+ステアリングリモコンスイッチ付き>+本革シート<ブラックレザー・フロントシートヒーター付き>(36万1800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1088km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
![]() |

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。