アウディA3スポーツバックe-tron(FF/6AT)
その魅力は多面的 2015.12.25 試乗記 アウディ初のプラグインハイブリッド車「A3スポーツバックe-tron」に試乗。とかく“電気自動車”としての側面がクローズアップされがちな同車だが、アクセルを深く踏み込み、ステアリングを大きく切れば、クルマとしての“基礎体力”により磨きがかかっていることに気付くだろう。走る楽しみがある
アウディ初のプラグインハイブリッド車として登場したのがアウディA3スポーツバックe-tron。アウディは、ガソリンと電気モーターを組み合わせた「Q5」「A6」「A8」のハイブリッド仕様を日本市場で販売したことがあるが、同社が電気自動車と位置づける「e-tron」を日本に導入するのは初めてだ。
ハイブリッド車ではなく電気自動車に分類するのは、1.4リッター直噴ガソリンターボエンジンと80kW(109ps)の電気モーターに加えて、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載するから。200Vの外部電源で充電できるこの駆動用バッテリーは、満充電の状態なら最長52.8kmのEV走行が可能。日常の短距離移動だけなら電気自動車と何ら変わらず使えるのが、A3スポーツバックe-tronの一番の特徴である。
最大トルク330Nm(33.7kgm)を誇る電気モーターにより、EVモードでもなかなか強力な加速を見せる。しかも、モーターだけで130km/hの最高速をマークするから、日本の高速道路でもなに不自由なく静かでスムーズな走りが楽しめる。
もちろん、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド走行も可能であり、バッテリーの残量が寂しくても、ガソリンがあれば立ち往生の心配はない。アウディA3スポーツバックe-tronには、モーターを主体としてバッテリーの電力を積極的に使う「ハイブリッドオート」、バッテリーの充電量を維持する「ハイブリッドホールド」、そして、バッテリーの充電量を増やす「バッテリーチャージ」の3モードがあり、どれを選んでも、ガソリンエンジンをモーターがアシストすることで、1.4リッターエンジンよりもはるかに素早く力強い加速が得られる。さらに、シフトレバーでSモードを選ぶと、アクセルペダルを少し深く踏んだだけでモーターのアシストが強力に効いて、2リッターターボ顔負けのスポーティーな加速が楽しめるのも魅力のひとつだ。
大容量バッテリーを後席下に搭載するため、標準の「A3スポーツバック」に比べて約250kg重量が増加しているが、パワフルなパワートレインのおかげでその動きにさほど重たい感じはないし、重心高が下がり、後軸重が増えて前後バランスが改善されたためにハンドリングも悪くない。
ハイブリッド燃費(ハイブリッドホールド時)も1.4リッターエンジン車を大きく上回る実力で、EVモードで乗る以外でも、走りや燃費のうえでさまざまな魅力を持つクルマなのだ。
(文=生方 聡/写真=小河原認)
【スペック】
全長×全幅×全高=4330×1785×1465mm/ホイールベース=2635mm/車重=1600kg/駆動方式=FF/エンジン=1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(150ps/5000-6000rpm、25.5kgm/1500-3500rpm)/モーター=交流同期電動機(109ps、33.7kgm)/トランスミッション=6段AT/燃費=23.3km/リッター(ハイブリッド燃料消費率/JC08モード)/価格=564万円
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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