第116回:主役じゃないけど印象的。人も、クルマも
『俳優 亀岡拓次』
2016.01.29
読んでますカー、観てますカー
天才・横浜聡子が6年半ぶりに始動
6年半ぶりである。やっと、天才・横浜聡子監督の新作を観ることができるのだ。『ウルトラミラクルラブストーリー』は、松山ケンイチのポテンシャルを最大限に引き出した作品だった。全編津軽弁で何を言っているかわからないのだが、彼のピュアな狂気のようなものがスクリーンからあふれでていた。監督は異様な発想で素材の秘められた魅力を輝かせる。魅力といっても、決してポジティブな意味だけではない。長編デビュー作だった『ジャーマン+雨』では、ゴリラ顔のヒロインを演じた野嵜好美の破壊力によって、観客の善悪を見極める能力を混乱させた。
短編映画を除けば、『俳優 亀岡拓次』が3本目の作品になる。これまでオリジナル脚本ばかりだったが、今回は小説の映画化だ。大御所や売れっ子の俳優が出演していて、そこはかとなくメジャー感が漂う。インディーズ出身の監督が次第に商業映画の掟(おきて)に慣れ親しみ、“ウェルメイド”な作品を撮って輝きを失っていく例は多く見てきた。でも、横浜監督までがその道を歩むのかという心配は無用だ。彼女の自我にこびりついた奇怪な思考は、簡単に消えうせるようなか弱いものではない。
豪華なキャストではあるが、主演は安田 顕だ。テレビドラマ『下町ロケット』で佃社長が信頼を寄せるエンジニアを演じてプチブレイクしたとはいえ、決して華やかなイメージはない。もちろん、イケメンのジャンルからは外れている。昨年公開された映画『龍三と七人の子分たち』や『新宿スワン』では、どちらもチンケな小悪党の役だった。ひどい扱いを受けていたが、なぜか強い印象を残している。典型的な脇役俳優なのだ。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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