ボルボS60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/8AT)
郷愁にひたっている場合じゃない 2016.02.18 試乗記 これまでの3リッター直6エンジンにかえて、新世代の2リッター直4エンジンが搭載された「ボルボS60 T6 AWD R-DESIGN」に試乗。ターボとスーパーチャージャーを搭載した新ユニットの実力やいかに?「T6」のエンジンが2リッター直4に
2016年2月1日に、2機種のエンジンが新たに登場して、ボルボ「60」系のラインナップが拡充された。
その新ラインナップとは、ひとつがエントリーモデルとして追加となった1.5リッターの「T3」、もうひとつが新世代の2リッター4気筒に切り替えられたトップモデルの「T6」である。ちなみに、新たな売れ筋となっているディーゼル「D4」との差別化が難しかったガソリンの「T4」が、今回日本のカタログから姿を消している。
というわけで、ボルボ60系の新ラインナップは安いほうから、「T3」「D4」「T5」「T6」となる。いまさら説明も不要だろうが、すべて4気筒過給エンジンで、“T”がつくのがガソリン、“D”がディーゼルである。そして、T3以外はすべて2リッター4気筒だ。
今回の主役は、昨年まで販売されていた3リッター直列6気筒ターボにかわって登場した新T6である。その最高出力は6気筒時代より2ps高い306ps。排気量が1リッターも小さいとなれば、最大トルクはさすがにアップとはいかず約1割のダウンとなる。それでも40kgmオーバーだから、2リッターとしては素晴らしい性能というべきだろう。
新世代「Drive-E」にマッチングされた8ATが搭載されるのも、T6としては初(従来のT6は6AT)で、その8ATと4WDの組み合わせも今回が初登場である。
低回転域をスーパーチャージャーでカバー
ただ、これほどの出力/トルクを2リッターのまま絞り出すのだから、なんの手当てもしないとピーキーになりすぎるのだろう。新しいT6はブロックやヘッドなどの基本骨格はT5などと共通だが、メインのターボチャージャーに低速用スーパーチャージャーを追加した新しいツイン過給システムが採用される新機軸となる。
これはフォルクスワーゲン流にいえば「ツインチャージャー」、昔の日産風にいうと「スーパーターボ」と呼ばれたものと同様と考えていい。もっとも、ボルボにはこうした専用の商品名は用意されていない。
T6エンジンのみに追加されるスーパーチャージャーはルーツ式。クラッチを装備しており、3500rpm以上ではキャンセルされて、それ以下の領域でのみ過給するようになっている。つまり、パワーを絞り出す高圧ターボの宿命となるターボラグをアシストする役割をになう。
スロットル操作に間髪入れずに過給が立ち上がる2リッターT6エンジンは、なるほど額面どおりにパワフル、かつトルキーだ。どんな低回転だろうと、とにかく踏んだ瞬間にすさまじいキック力を見舞ってくる。乱暴にあつかうと、瞬間的に走行ラインがブルッと震えるくらいである。
ただ、それを助けるのが電子制御の高反応カップリングを備えるAWD。余剰トルクを絶妙に後輪に吸い出してくれるので、トラクションコントロールが無粋にスロットルを絞ったり、コーナーでダラダラとアウトへはらんでいったりするようなそぶりは、今回のようにスタッドレスタイヤを履いていても見せることはなかった。
クルージング状態では気にならないものの
新T6のトルク感は、ボルボ史上最強ともいえる強力さだが、その供給特性そのものは、ほかのDrive-Eにも共通する洗練されたものである。ただ、新たに追加されたスーパーチャージャーに起因する音はかなり独特。かつ、けっこうな存在感がある。
その音をあえてカタカナで表現すると“ミャー”というか“キーン”という種類の高周波音。なるほど昔の過給エンジンでこういうサウンドはめずらしいものではなかったが、その音量レベルは、現代のクルマとしてはけっこう大きい。ちょっと変な言いかただが、最初は「あれっ、どこかから緊急車両でも近づいてきたか」と思ってしまったほどだ。
まあ、これを高性能エンジンの証し……として好意的に受け取る人も、とくに昭和世代には少なくないかもしれない。いっぽうで、ちょっと好き嫌いが分かれそうな音質でもある。
もっとも、これは停止からの強めのダッシュや、高速料金所から周囲のアタマを取って追い越し車線に滑り込む、あるいはきつめの上り勾配でさらに加速していく……といった高負荷時での話。一定速度のクルージング状態に入れば、どの速度域でもほとんど気にならない程度には静かになる。
また、今回はセダンのS60しか試乗できず、一説には、同じ試乗会に用意されていた「XC60」では、そのボリュームは明らかに小さいとか(「V60」の試乗車は用意がなかった)。いずれにしても、新T6をほしい人は、ディーラー試乗がかなったら、アクセルを半分以上踏み込めるルートを走ってみるように心がけていただきたい。
扱いやすさも燃費も改善
前ページにも書いたが、今回の試乗車はスタッドレス装着車だった。試乗コースが、都心を出発して関越自動車道で新潟県の六日町ICまで走り、魚沼市の「魚沼の里」で折り返して同じルートで再び東京へ……というものだったからだ。なので、乗り心地やハンドリングについての報告は、あくまで参考程度であることを了承いただきたい。
そのうえで、さすがは熟成きわまっているボルボ60系だけに、あえて指摘するような弱点はない。
超優秀なアダプティブクルーズコントロールに任せての高速巡航はフラットそのもので、多少のワダチや目地段差を乗り越えても無粋な突きあげは皆無に近い。サスペンションはどんな場面でも、きちんとスムーズに作動する。
また従来のT6と比較すると、当たり前だがノーズの軽さは明白。6気筒だった昨年モデルと比べて、車検証に記載されている前軸重量は20kg軽い。直列6気筒時代は、普通に交差点を曲がるだけでも良くも悪くもハナ先がズシッと重厚だったが、新しい4気筒T6にはそれがなく、少なくともD4と同程度には軽快だ。
前記のスーパーチャージャー音以外は、新しいT6のほうが、いうまでもなくトータルにおいてモダンで扱いやすい。燃費にいたっては、従来型T6比で、実に6割(!)もの改善を見ているわけだから、いつまでも直6に対するマニアックな郷愁にひたっている場合でもないだろう。
……とはいいつつ、「ポールスターでもなんでもいいから、直6エンジンを続けてくれたらいいのに」といまだに思っている私も、始末の悪いマニアの類いである。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎)
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テスト車のデータ
ボルボS60 T6 AWD R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1720kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:306ps(225kW)/5700rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2100-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R19 92Q/(後)235/40R19 92Q(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:614万円/テスト車=614万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1024km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:489.0km
使用燃料:46.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.6km/リッター(満タン法)/10.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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