ルノー・ルーテシア インテンス(FF/6AT)
入りやすくなった 2016.03.16 試乗記 「ルノー・ルーテシア」がマイナーチェンジを受け、1.2リッター直4ターボエンジンと6段ATの設定が変更された。最新型の“街中性能”を、上級グレード「インテンス」の試乗を通じてチェックする。フランス人もびっくり
店構えは大きくないし、品ぞろえも限られている。一見さんお断りの店には思えないが、やはり普通の人にはちょっと入りにくいぐらいの高い趣味性とこだわりが感じ取れる。どう見ても個性的でマニアックな店だが、それにもかかわらずいつもそれなりに客が絶えない。日本におけるルノーはユニークな車種だけをそろえたブランドで、言ってみれば知る人ぞ知る神田神保町の専門書店のようなポジションだと思っていたら、いつの間にかもうニッチとは言えないぐらい広く知られているのかもしれない。ルノー・ジャポンはここ数年、毎年ジワリジワリと着実に国内販売台数を伸ばし、数年前の3000台レベルから、気づいてみれば昨年2015年は5000台を超えた。ちなみにこの数字、先ごろ突然の日本市場撤退を発表したフォードと同程度。もちろん単純に台数だけでビジネスの成否を語ることはできないし、企業としての優先順位もあるはずだが、ルノーが日本市場で立派に存在感を発揮しているのは皆が認めるところだろう。
ちょっと本題から外れるが、ルノーが日本でユニークな地位を築いている証拠が「カングージャンボリー」である。ご存じ、「カングー」は貨客兼用の多用途ワゴンだが、日本では単なる実用車を超えて、ある種のスタイルの象徴となって熱心なファンを獲得していることは今や本国の担当者も理解しており、日本側の要望に応えようとしてくれているという。いまさら言うまでもないことだが、カングーは本国ではほぼ100%頑丈なロバのようにガンガン使い倒すコマーシャルビークルと見なされており、年間1700台も売れているとはいっても全体から見れば微々たるものだ。しかし、思い思いにおしゃれしたカングーが1000台も一堂に集まる国は他にない。まさに単純な台数だけではビジネスを語れないということを象徴している。こういう車こそSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)と呼びたいと思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ユーロ6対応の新パワートレイン
そのルノー・ジャポンにとって、ルーテシアは言うまでもなくカングーと並ぶ主力モデルである。5000台余りの主な内訳はルーテシアがおよそ1800台、カングーが1700台、それにおよそ1000台のキャプチャーを含めて3本柱となっている。
今回は主力のルーテシアの、そのまたメインの1.2リッターエンジンを積むインテンスと「ゼン」がマイナーチェンジを受けた。1.2リッターの4気筒直噴ターボエンジンは排気量、形式ともに従来型と変わっていないが、ユーロ6に適合した新仕様のエンジンに変更されたほか、EDC(エフィシェント・デュアルクラッチ)と称するデュアルクラッチ・ギアボックスのギア比も見直されている。スポーツモデルの「GT」、および0.9リッター3気筒ターボ搭載のゼンは当面エンジンもギアボックスも従来型のままである。
新エンジンは最大トルクが以前の190Nm(19.4kgm)/2000rpmから205Nm(20.9kgm)/2000rpmへ若干増強されている。その代わりに最高出力は88kW(120ps)/4900rpmから87kW(118ps)/5000rpmへほんの少し低くなっているが、EDCのギアリングは1速のレシオ(3.916→4.307)がより低くされるいっぽう、6速はさらに高められた(0.702→0.653)ことでワイドレンジ化され、低回転域のトルク増強と相まって中間加速が素早くなったという。実際に0-100km/h加速タイムは10.1秒と、従来型に比べて1.2秒も速くなっているというから。なかなかのパフォーマンスアップである。
アイドリングストップも追加
今回スタート&ストップ(アイドリングストップ)機構が追加されたこともトピックのひとつだ。パワートレインの改良と合わせて当然、燃費は向上しているはずだが、直接従来型と比べられないのは、これまでは社内参考値しかデータがなかったからだ。というのも、今回のマイナーチェンジでルーテシアは初めて型式認定を取得し、正式な国土交通省審査値としてJC08モード17.4km/リッターという燃費を掲載できるようになったのだ。これまでは輸入自動車特別取扱制度(PHP)という台数が少ないモデル(上限2000台がちょっと前に5000台に引き上げられた)を対象とした認証手続きで登録されていたが、これだと実際の車両一台一台ごとに検査を受けなければならず、ある程度以上の台数となれば型式指定を受けるほうが作業をするディーラーの負担が小さいというわけだ。
新しいパワートレインによって中間加速が鋭くなったというが、残念ながら交通量の多い街中だけの試乗会では、新旧の違いを実際に体感するには至らなかった。もともとルーテシアはフルスロットルでの鋭い加速よりも、ごく普通にスロットルを踏んだり放したりする際の身軽さ、軽快感が身上であり、EDCもキレの良い変速より実用域での使い勝手重視の性格を持つ。その観点から言えば、これまで通りまったく不満のない走りっぷりである。
気がつけばユニーク
もっとも、ルーテシアの美点である軽快なスニーカー感覚を大事にするなら、なるべく細いタイヤを選ぶのがベターだと思う。上位グレードのインテンスは205/45R17が標準タイヤだが、路面によってはやや持て余し気味で心もとないバタつきを感じる。ゼンに標準となる195/55R16で十分というか、むしろそちらのほうが軽やかな身のこなしを損なわないはずだ。
今回はインフォテインメントシステムにもマルチメディア機能やエコドライブをサポートする機能が追加されたというが、センターコンソールの中央部分にオプションのナビゲーションを装備するとせっかくの新機能もすべて諦めなければならない。コーディネートされたインテリアの中に無粋な後付けナビを装着するぐらいなら、今やスマホのナビでも十分だと思うのだがどうだろう。
カラフルで多彩なボディーカラーの設定や、MTモデルを多数ラインナップするなど、できそうに思えても実際には他のブランドが手を出さないことに取り組んできたルノーだから、この調子で次は「トゥインゴ」もカラフルにそろえてほしい。知る人ぞ知る、はブレずに続けているうちに確固としたブランドになるはずだ。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア インテンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4095×1750×1445mm
ホイールベース:2600mm
車重:1220kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:118ps(87kW)/5000rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:17.4km/リッター(JC08モード)
価格:239万9000円/テスト車=269万7080円
オプション装備:メタリック塗装<ルージュ・フラムM>(3万2400円)/ナビゲーションシステム(20万880円)/フロアマット(2万520円)/ETC(1万2960円)/エマージェンシーキット(3万1320円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:543km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】 2026.7.20 3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
NEW
ボルボEX90プラス ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.7.22試乗記ボルボのフル電動SUV「EX90」が上陸。3列7人乗りのキャビンを有する圧倒的なサイズや空力性能を磨き上げたボディー、継続的なアップグレードに対応する最新の電子プラットフォームと、新たなフラッグシップにふさわしいトピックが並ぶ。果たしてその走りは? -
NEW
第121回:幽玄なるBMWアルピナ(後編) ―成功のためには美学を捨てろ? “優雅なラグジュアリーカー”の成否を考える―
2026.7.22カーデザイン曼荼羅BMWのクルマをベースに、優雅で上品なグランドツアラーを仕立ててきたBMWアルピナ。BMWの傘下で再出発を切ったラグジュアリーブランドは、その美学を守り続けられるのか? オラオラ系がもてはやされる高級車マーケットでの成否を、カーデザインの識者と考えた。 -
電気自動車の人工的な走行音はどうあるべきか?
2026.7.21あの多田哲哉のクルマQ&AEVの走行時に車内で聞こえてくる人工的な“音”は、本来、どうあるべきなのか? やはり、疑似エンジン音が最適なのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんの考えを聞いてみた。 -
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.7.21試乗記アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。 -
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。





























