日産タイタンXD プラチナムリザーブ(4WD/6AT)/NP300ナバラ ダブルキャブ(4WD/6AT)/NV350キャラバン ライダー ブラックライン トランスポーター(FR/5AT)/NV350キャラバン プレミアムGX(FR/5AT)/e-NV200 G(FF)
本物はカッコいい 2016.04.05 試乗記 日産の小型商用車(LCV)がずらりとそろうオールラインナップ試乗会に参加。北米専用のフルサイズピックアップトラックの「タイタンXD」からEVの「e-NV200」まで、今の日産を代表する商用車のステアリングを握った。商用車は教えてくれる
はたらくクルマがカッコいいのはどうしてか? 商用車がもつ“遊びじゃない感”が独特の迫力を醸し出すからではないだろうか。家でパジャマのままゴロゴロしているお父さんはダサいのに、スーツを含むユニホーム姿でバリバリ仕事をしているお父さんの姿がカッコよく見えるのと同じ。はたらくクルマがはたらいている時というのは、F1マシンがレースしているときと同じで、輝いているからカッコいいのだろう。
ユニホームというのはどんな種類であっても、本当にその仕事をしている人じゃないと着こなせないようにできている。ワークウエアのカタログで金髪の長身モデルがニッカポッカでポーズをとってもカッコよくないが、早朝に疲れた表情で缶コーヒー片手に商用ワンボックスに乗り込む5頭身のおっさんのくたびれたニッカポッカ姿はなぜかカッコよく見える。少なくとも頼もしく見える。コスプレじゃダメなのだ、本物じゃないと。まぁある種のコスプレがそれはそれで魅力的なのも否定しないが。
話をクルマに戻そう。要するにモデルのコスプレニッカポッカ姿は、実際には悪路になんか足を踏み入れないSUVみたいなもので、逆に本職のおっさんのニッカポッカ姿は、遊びじゃなく本当に過酷な用途にさらされているバンやトラックなのだ。カッコよく見られることなんかみじんも考えず、ひたすら仕事に役立つカタチや性能を徹底的に追求するとカッコよくなるというのは、逆説的で示唆に富んでいるじゃないか。カッコよくない男がモテるために必要なのはおしゃれなんかじゃない。仕事なのだということを商用車が教えてくれている。
日産が開催した商用車の試乗会で、とっかえひっかえ商用車を運転しながらそんなことを考えていた。
全長6m超えの「タイタンXD」に試乗
朝いちでいきなり割り当てられたのは、遠くにあるのに近くにあるように見えるほどデカいクルマだった。その名は「タイタンXD」。北米専用のフルサイズピックアップトラックだ。アメリカを走るピックアップの多くは乗用車のような使われ方、すなわち1~2名乗車で空荷の状態で使われている。乗用車よりも税制が優遇されるので乗用車の代わりに使う人がほとんどだ。加えて、大都市圏ではないアメリカ全域、とりわけ中西部や南部では、農業などの作業用と乗用を兼ねていることも多い。
タイタンXDは、全長6m超えという実際の大きさのためだけでなく、クロムメッキがギラギラと光る押し出しの強いフロントグリルのおかげで余計に大きく見える。ドア枚数やベッドの面積など、いろいろな仕様が存在するが、4×4(4WD)のクルーキャブ、標準ベッドのモデルで3.1トンを超える重量があり、さぞ遅いんだろうなと思って乗ったら、グイグイ走るのでびっくりし、慣れたら楽しくなってきて、特設コースを時間いっぱいぐるぐる試乗してしまった。
カミンズ(アメリカのディーゼルエンジン専門のサプライヤー)製5リッターV8ターボエンジン(最高出力314ps/3200rpm、最大トルク76.7kgm/1600rpm)を搭載し、アイシン製6段ATを介して4輪を駆動する。DOHCヘッドをもつこのディーゼルエンジンはスムーズに吹け上がり、振動もよく抑えられている。V8のビートはディーゼルでも感じられることがわかった。
日産の世界販売の20%は商用車
タイタンXDにはブレーキも車重に見合った性能のモノが備わっているようで、乗用車と同じように停止することができる。強くアシストされて軽い力で操作できるステアリングを切れば、車体をぐらりと揺らした後にゆっくり向きが変わる。今回は悪路を試すことはできなかったが、普通の舗装路を走らせる限り、乗り心地は良好で、クルコンをセットして長距離を走らせると気持ちいいんだろうなと想像した。
ここまで大きいと、クルマそのものの評価と日本で使うことを考えた場合の評価はおのずと変わってくるが、2~4トンのトラックが日本全国津々浦々を走っていることを考えると、全幅2020mmのタイタンXDでも本当に好きなら、なんとかならないこともないだろう。実際、フルサイズピックアップを楽しんでいる人を見かけることもあるし。
ところで、現在、日産が世界中で販売する自動車のうちの5台に1台は商用車だという。日産車の商用車の割合は、北米で10%、メキシコで23%、南米で22%、中国で19%、日本で18%、東南アジアで22%、欧州で8%なのに対し、中東では57%、南アフリカではなんと63%に達するという。
商用車の開発は制限が多く、またデザインが介在できる要素が極端に少ないため、他社と差別化が難しい。乗用車と違って一度開発すれば長く販売できる面はあるものの、商用車ユーザー(企業)は乗用車ユーザーとは比べものにならないほど価格と性能にシビアなため、開発は難しいそうだ。それに商用車ユーザーは日産なら日産、トヨタならトヨタと一度決めたら長く付き合うケースが多く、ライバルが信用を失うようなことをしでかすか、もしくは明確なメリットを提案できないとひっくり返すのは難しいという。
身のこなしが軽やかな「NP300ナバラ」
タイタンに比べれば、ずっと現実的なサイズのピックアップトラックの「NP300ナバラ」。タイで生産され、世界中に輸出される世界戦略車だ。フロントグリルの両端にVの字を描くような斜め線が入る典型的な日産顔で、ほどよい存在感で、周囲を威圧するような雰囲気もない。
2.3リッター直4ディーゼルターボ(最高出力190ps/3750rpm、最大トルク45.9kgm/1500-2500rpm)は、4気筒ディーゼルのため、V8のタイタンXDよりも振動は盛大だが、トルキーで実直なエンジンという印象。テスト車には6段MTが組み合わせられており、小気味よくギアアップし、リズミカルに走らせることができた。見た目から想像するよりもずっと軽やかな身のこなしで、スラローム区間では素直なハンドリングで弱アンダーに終始し、とっちらかることなく走り抜けることができた。
気に入った。しかし180もの国や地域で販売されるにもかかわらず、日本には未導入。現場の日産社員に「こういうの入れないでどうするんですかー?」とあおってみると、「ことあるごとにさまざまな角度から導入を計画してみるんですが、やはり最後は十分な販売台数が見込めないという判断に落ち着いてしまうんですよ」という答えが返ってきた。そうなんだろうなぁ。
実際、「トヨタ・ハイラックス」「三菱ストラーダ」「マツダ・プロシード」、そして「日産ダットサントラック(通称:ダットラ)」など、90年代までは国産各社とも1トンクラスのピックアップトラックをラインナップしていたが、国内のディーゼル規制強化の前後に駆逐されてしまった。三菱は2006年にタイ生産のピックアップトラック、「トライトン」を輸入して発売したが、11年にひっそりと販売を終え、日本での後継モデルに相当する存在はない。アメリカで流行したものは時間差でたいてい日本でも流行するのだが、ピックアップトラックだけはそうならない。軽トラのほうが根本的に国情に合っているのかもしれない。
突然だが、ここで日産の販売台数トップ10(2015年度4~1月累計)クイズ! 6位、7位、8位のクルマを当ててみよう。
1位 ノート(7万2000台)
2位 デイズルークス(5万4000台)
3位 デイズ(5万台)
4位 エクストレイル(4万7000台)
5位 セレナ(4万6000台)
6位 ○○○(3万台)
7位 ○○○(1万9000台)
8位 ○○○(1万7000台)
9位 モコ(1万5000台)
10位 マーチ(1万1000台)
正解はいずれも商用車で、6位が軽トラの「クリッパー」、7位がワンボックスの「NV350キャラバン」、そして8位がバンタイプの「ADバン」。商用車の販売規模がどの程度なのかわかっていただけただろうか。
「e-NV200」のハンドリングはなかなかのもの
日本における日産商用車のメイン車種は「NV350キャラバン」と「NV200バネット」だ。NV350キャラバンは、標準幅(4ナンバー)とワイド幅(1ナンバー)、乗用ワゴン(3ナンバー)、マイクロバス(2ナンバー)といったナンバープレートの分類だけでなく、ロングボディーとスーパーロングボディー、標準ルーフとハイルーフ、定員は3人から14人までと、実に幅広いラインナップを展開し、多様なニーズに応えている。「トヨタ・ハイエース」も同様の多種多様な展開をしているため、販売面で後塵(こうじん)を拝するキャラバンとしてはキャッチアップするために、ハイエースにある仕様はなるべくカバーしなくてはならないのだろう。
ガソリン、ディーゼルともに試乗した。もちろん、運転そのものの喜びを追求したものではないため、“ちゃんと走る”以上の感想をもたなかったが、ルームミラー越しに広がる広大なスペースには何を詰め込んでやろうかとワクワクした。
NV200バネットのライバルにない特徴は、ガソリン仕様のほかにリーフと同じコンポーネンツを使ったEVの「e-NV200」をラインナップすること。JC08モードでの航続距離は185kmと「リーフ」よりも大幅に短いが、商用車の場合、決まったルートを往復あるいは周回するような使い方が多いはずで、一日のルートがe-NV200の実質的な航続距離の範囲内であれば問題にならない。ちなみにe-NV200はリーフ同様、駆動用バッテリーを搭載するために重心が低く、ハンドリング性能はなかなかのもので、スラローム区間での安定感はNV200バネットを確実に上回っていた。
(文=塩見 智/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
日産タイタンXD プラチナムリザーブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=6167×2050×1999mm
ホイールベース:3851mm
車重:3393kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:314ps(310hp)/3200rpm
最大トルク:76.8kgm(555lb-ft)/1600rpm
タイヤ:(前)265/60R20 121/118R M+S/(後)265/60R20 121/118R M+S(ゼネラル・グラバーHTS)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
日産NP300ナバラ ダブルキャブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5330×1850×1810mm
ホイールベース:3150mm
車重:1963kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.3リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:190ps(140kW)/3750rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1500-2500rpm
タイヤ:(前)255/60R18 112T M+S/(後)255/60R18 112T M+S(コンチネンタル・コンチクロスコンタクトLX2)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
日産NV350キャラバン ライダー ブラックライン トランスポーター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1695×1990mm
ホイールベース:2555mm
車重:1840kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:5段AT
最高出力:130ps(96kW)/5600rpm
最大トルク:18.1kgm(178Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)195/80R15 103/101L LT/(後)195/80R15 107/105L LT
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産NV350キャラバン プレミアムGX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1695×1990mm
ホイールベース:2555mm
車重:1970kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:5段AT
最高出力:129ps(95kW)/3200rpm
最大トルク:36.3kgm(356Nm)/1400-2000rpm
タイヤ:(前)195/80R15 103/101L LT/(後)195/80R15 107/105L LT
燃費:12.2km/リッター(JC08モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
日産e-NV200 G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1755×1850mm
ホイールベース:2725mm
車重:1660kg
駆動方式:FF
モーター:三相交流同期モーター
最高出力:109ps(80kW)3008-10000rpm
最大トルク:25.9kgm(254Nm)0-3008rpm
タイヤ:(前)185/65R15 92H/(後)185/65R15 92H(グッドイヤー・エフィシエントグリップ)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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