トヨタ・オーリス ハイブリッド“Gパッケージ”(FF/CVT)
日本人にとっての普通 2016.05.11 試乗記 日本市場ではこれがないと始まらない? トヨタのCセグメントハッチバック車「オーリス」にハイブリッドモデルが登場。JC08モード計測で30.4km/リッターという燃費を実現する、新たな最上級グレードの出来栄えを報告する。ダウンサイジングターボだけでは戦えない
「まず優先すべきは、ホットハッチ的に運転を楽しんでいただくこと。それにはハイブリッドよりも1.2リッターターボのほうがマッチングがいいと考えました」
主査として、トヨタ・オーリスのマイナーチェンジを担当した遠藤邦彦さんは熱く語っていた。トヨタ初の本格的ダウンサイジングターボエンジンに懸ける思いが伝わってきた。ヨーロッパの本流と真っ向勝負をする態勢が整ったわけで、気合が入るのも当然だ。2015年4月のことである。
1年が過ぎ、ハイブリッドモデルが加わることになった。選択肢が広がるのだから、ユーザーにとっては朗報だ。要望が多かったからこそ、このタイミングで登場することになったのだろう。ただ、それは1.2リッターターボを良しとしない層が一定数あったということを意味する。ダウンサイジングターボを搭載するCセグメントのハッチバックは、ヨーロッパの主流である。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「フォード・フォーカス」「プジョー308」などの強豪が居並ぶ。激戦区に満を持して対抗馬を投入したわけだが、日本ではそもそもこのジャンルがメジャーではない。
1.2リッターターボモデルは、オーリスの中で最上級モデルの位置づけだった。ベースグレードには1.5リッターエンジンが与えられ、スポーティーな「RS」は1.8リッターエンジンに6段マニュアルトランスミッションという組み合わせである。1.2リッターターボの「120T」は116psの最高出力を持ちながら19.4km/リッターという好燃費で、価格はシリーズの中で最も高かった。今回加わったハイブリッドモデルはそれを上回る価格で、最上級グレードの座を譲った形になる。
120Tの試乗会はサーキットで行われた。ホットハッチにふさわしい舞台だと考えたのだろう。実際、ターボラグのないスポーティーなエンジンはなかなかの仕上がりだった。CVTながら活発な走りを見せ、ライバルたちに引けをとらない実力を感じさせた。
ハイブリッドモデルはモーターの助けを借りて十分な動力性能を持つ。運転感覚に新しさはない。先代「プリウス」と同じハイブリッドシステム「THS II」を使っているのだから当然だ。新しいオーリスの投入で、トヨタの国内ハイブリッド車ラインナップは18車種になったのだという。今やハイブリッドは日本人が慣れ親しんだ普通のパワーユニットなのである。オーリスでもこの普通さが欲しいと考える人がいるのはよくわかる。しかも燃費は120Tを大きくリードする30.4km/リッターなのだ(JC08モード)。
今回オーリスには、もう一つ新たに設定されたグレードがある。120Tにスポーティーグレードの“RSパッケージ”が追加されたのだ。1.8リッターのRSにならい、17インチアルミホイールと専用の内外装が与えられる。これまで、120Tではインテリアに木目調のパネルしか選べなかった。ゴージャスさを狙ったもののようだが、この意匠を歓迎する声はあまり多くなかったように思う。“RSパッケージ”には、ごく一般的なブラックのカーボン調パネルが用意されている。内装のせいでダウンサイジングターボを諦めた人にとっては、こちらのほうがうれしいニュースだ。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
【スペック】
全長×全幅×全高=4330×1760×1480mm/ホイールベース=2600mm/車重=1400kg/駆動方式=FF/エンジン=1.8リッター直4 DOHC 16バルブ(99ps/5200rpm、14.5kgm/4000rpm)/モーター=交流同期電動機(82ps、21.1kgm)/燃費=30.4km/リッター/価格=283万2545円
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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