ホンダ・オデッセイ ハイブリッド 8人乗り(FF)
21世紀のファミリーカー 2016.05.16 試乗記 去る2月5日、5代目にあたる現行「ホンダ・オデッセイ」のフェイスリフト版が発売された。最大の目玉は、待望のハイブリッドモデルが加わったことだ。ホンダ上級ミニバン初のハイブリッドである。ホンダで一番エラいミニバン
過日、筆者は神奈川県の某ホンダディーラーで「N-ONE」の“新古車”、という言い方は今はしないのですね、もとい「走行距離50kmのデモカー」をキャッシュで購入したおり(エヘン)、ショールームに威風堂々と置かれたオデッセイ ハイブリッドさまを見た。
商品というのは売られているところで輝く。オデッセイ ハイブリッドさまはN-ONEよりもはるかに、隣に並んでいた「ステップワゴン」よりもさらに一回り大きくて、お値段がお高いことが一目でわかった。店内に「レジェンド」も「アコード」も展示してなかったこともあって、蛍光灯が白く輝く中、ともかく一番エラいオーラを放っていた。N-ONEの購入者である私は、「いいですねぇ」とディーラーのひとに申し上げたわけだけれど、それはごく自然な感想であった。
「売れています」とディーラーのひとは言った。「オプション付けていくと500万円です」と、N-ONEの購入者の私に告げた(ホントは、私の奥さんが自分で買ったのですが……)。
ホンダが3月5日に発表したところによれば、オデッセイはハイブリッドの設定からの1カ月で、9000台の受注を得た。月販目標2000台を大幅に上回る。そのうちの7割が新たに加わったハイブリッドだそうである。
主役はモーター、エンジンは脇役
私はこのちょっと前にオデッセイ ハイブリッドを試乗していた。オデッセイ ハイブリッドの一番安いモデルで、車両価格356万円。
オデッセイ ハイブリッドに最初に対面したのは夜、恵比寿のはずれの、明かりの少ないコインパーキングだった。薄暗い中でも現行オデッセイははっきり大きかった。乗り込んで着座すると、木目調パネルが目に飛び込んできた。これはラグジュアリーなミニバンであることを確認した。
室内が広々としているのはホンダ自慢の超低床プラットフォームの恩恵であるらしかった。
いわゆるフツウのミニバンほど着座位置は高くないけれど、フツウの乗用車ほど低くもない。スターターを押しても静かなままなのはもちろんハイブリッドだからである。走り始めても静かなのは、「SPORT HYBRID i-MMD」が電気自動車的性格のハイブリッドだからである。
オデッセイのi-MMDはアコード用のモーターを改良し、小型軽量化が図られている。2リッターのアトキンソンサイクル4気筒は通常、息を潜めていて、バッテリーの蓄電量が少なくなると始動するのは従来と同じだけれど、電気モーターと協働してタイヤを駆動することはない。街中ではほとんど発電用のモーターを回すために稼働する。駆動力として活躍するのは低負荷の高速巡航時に限られる。
フル加速はエンジンが担当……と思いきや
オデッセイ ハイブリッドは、カタチはフツウのオデッセイだけれど、走行感覚はほとんど電気自動車(EV) である。EVモード時はロールス・ロイスよりも静かで、タイヤの走行音と風切り音しかしない。舵(だ)の利きは特にクイックではないものの鈍重ではない。革巻きのステアリングホイールの感触はスポーティーと申し上げてよい。乗り心地は硬めで、フワフワではない。タイヤの存在を時折感じさせて、欧州車のような趣がちょっとある。
不思議なのはフルスロットルを試みた場合だ。アトキンソンサイクル145psの2リッターエンジンが電気掃除機のような傲然(ごうぜん)たる音を発する。その騒音とともに、走行用の電気モーターが32.1kgmという大トルクを0-2000rpmで生み出し、巨体の割に1810kgと相対的に軽めの重量のボディーを怒涛(どとう)のごとく加速させる。だから、筆者はてっきりエンジンが頑張っているのだ、と思い込んだ。
真実はそうではない。エンジンは発電に徹しているのだ。せっせとバッテリーにエネルギーを蓄えるのみ。速さは電気モーターから生まれているのである。
信号待ちでは当然、エンジンが停止する。で、バッテリーの残量によってエンジンが突如目覚める場合がある。そうすると、振動と騒音が伴う。時代が20世紀に戻る。“NVH”がアコードよりも劣るのは、エンジンとキャビンの位置関係の問題で遮音性がアコードに比べると劣ることや、風切り音がボディーの性格上大きくなることに起因しているらしい。
家族みんなで時代の変わり目に立ち会う
バッテリーの残量次第で、60km/hまでEVモードで走ることもあれば、そうでないときもある。高速巡航中の低負荷時にはエンジンドライブモードに切り替わるということだけれど、高速巡航中でもEVモードのランプが点灯したりする。i-MMD付きオデッセイは可能な限り電気モーターで走ることによりガソリンを節約して26.0km/リッターというクラストップの公称燃費を実現した。非ハイブリッドのそれは14.0km/リッターであるから、ほぼ2倍の低燃費を誇ることになる。
オデッセイのようなミニバンのハイブリッドはどういう恩恵をユーザーにもたらすのであるか? 1960年生まれの筆者は、地方の片田舎で育った。祖父母、両親、子ども3人がいて、家族7人がひとつ屋根で暮らしていた。考えてみたら、あのころ、一家7人がクルマに乗って外出するというようなことは想定外だった。ファミレスもモールもミニバンもなかった。
現代は現代で、もちろん多様な問題を抱えている。けれど、オデッセイ ハイブリッドがある21世紀のファミリーは大変幸せである、と言えるのではあるまいか。なによりガソリンと電気の時代の境目にいることを共有できるのである。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
ホンダ・オデッセイ ハイブリッド(8人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1820×1695mm
ホイールベース:2900mm
車重:1810kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:17.8kgm(175Nm)/4000rpm
モーター最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:32.1kgm(315Nm)/0-2000rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95H/(後)215/60R16 95H(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:26.0km/リッター(JC08モード)
価格:356万円/テスト車=404万232円
オプション装備:Honda SENSING(10万8000円)/リア右側パワースライドドア+スライドドアイージークローザー(リア右側)+コンフォートビューパッケージ(7万 5600円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(7万3440円)/Gathersナビ<VXM-165VFEi>(19万4400 円)/フェイスパネルキット(1万2960円)/ナビ取り付けアタッチメント(4320円)/販売店オプション取り付け工賃(1万1512円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:5784km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:335.1km
使用燃料:22.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/17.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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