ホンダ・オデッセイ アブソルート EX 7人乗り(FF/CVT)
運転席が一番 2014.01.15 試乗記 2013年11月に発売された「ホンダ・オデッセイ」のスポーティーグレード「アブソルート」に試乗。すっかり普通のミニバンらしくなった5代目オデッセイだが、実際に走らせてみると、ライバルにはないとがった個性を持ち合わせていた。普通のミニバンになりたい!
「普通の女の子に戻りたい」はキャンディーズで、「普通のおばさんに戻りたい」は都はるみ、そして「普通のミニバンに戻りたい」が、5代目となるホンダの新型「オデッセイ」だ。いや、オデッセイは普通のミニバンだったことはないのだから、正確には「普通のミニバンになりたい」だ。あるいは、「早くミニバンになりたい!」かもしれない――。
では4代目までのオデッセイは、どこが普通でなかったのか? なんといっても、普通のミニバンに比べて背が低かった。4代目の全高は1545mmで、全高1550mm制限の一般的な立体駐車場にぎりぎり入庫できたのだ。
それが今回試乗した新型「オデッセイ アブソルート」は1685mm。ホンダが直接のライバルと見なす「トヨタ・エスティマ」の1730mmよりは低いものの、室内の高さを比べると、オデッセイの1325mmに対してエスティマは1255mmと、オデッセイに軍配が上がる。ちなみに「日産エルグランド」の1275mmと比べてもオデッセイのほうが室内の高さでは勝る。
全高が低いのに室内の高さを確保できたのは、床を思いきり低くしたから。そのためにホンダは、従来の約3分の2の厚みの薄型燃料タンクを開発したのだ。
「クルマはスペックだけで判断してはならぬ」というのが鉄則であるけれど、もう少々数字にお付き合いください。
広さとともにミニバン(というかクルマ)選びの重要な要素である燃費を見ると、190psの2.4リッター直列4気筒エンジンを積むオデッセイ アブソルートが14.0km/リッター、170psの2.4リッター直列4気筒エンジンを積むトヨタ・エスティマが11.6km/リッター(いずれもJC08モード)。
もうひとつ、小回りが利くかどうかの目安となる最小回転半径は、オデッセイが5.4m、エスティマが5.9mと、これもオデッセイ。仕様がたくさんあるので直接比較は難しいけれど、ほぼ同じ装備のグレードで価格を比べると、オデッセイがエスティマより10~20万円ほど安い。
何が言いたいかというと、スタイリングの好みはあるだろうけれど、机上の比較ではオデッセイがかなり有利だということだ。
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スポーティーな走りは健在
先代までのオデッセイが普通のミニバンと違ったのは、セダンと同タイプのヒンジドアを採用していたという理由もある。後席にスライドドアを採用するのがミニバン界の常識なのだ。今となっては信じられないような話であるけれど、初代オデッセイが登場した1990年代前半は、「スライドドアは業務用のワンボックスみたい」という拒否反応があった。
でも、いざ使ってみれば、駐車場で隣に止まったクルマにドアがぶつかることを気にせずに、広々とした開口部から乗り降りできるスライドドアのほうが便利。
というわけで晴れて普通のミニバンになったオデッセイのスポーツ仕様、アブソルートのエンジン始動。ノーマル仕様と異なり直噴となる2.4リッターエンジンは、ノーマル比+15psの190psの最高出力を発生する。
ハイチューン版といっても気難しいわけではなく、アクセルペダルを踏んだ瞬間の「ポン!」とはじけるようなレスポンスが気持ちいい。静かで滑らか、CVTとの連携も上々で、ハイチューン版というよりハイソサイエティー版の趣。
当然ながらスポーツカーのパワートレインとは異なるけれど、クルマ好きが納得できる質の高さがある。
そしてパワートレインよりも驚いたのが、首都高速に上がって中速コーナーを2つ、3つとクリアした時の手応えだった。ステアリングホイールの操作に対して、ビシッと正確に向きを変えるのだ。パワートレインよりもハンドリングのほうが、スポーティーさでは数段上回る。
こりゃ面白いってんで、さらにペースを上げる。車高は高くなっているけれど床が低くなっているおかげで、グラッと傾くことはない。安定したロールを伴いながら、コーナーをクリアする。けれども、ここで後席に座るスタッフから大ブーイングが起こった……。
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とがった個性をどうとらえるか
2列目、3列目シートに座るスタッフによる大ブーイングの理由は簡単で、乗り心地がカタいというのだ。サービスエリアで運転を代わり、2列目、3列目の順に座ってみる。
う~ん、広くて快適、と思ったのもつかの間、ちょっとした段差や突起を越えるたびに、ビシッビシッという直接的な衝撃が伝わる。特に3列目シートはつらい。何かの修行をしているような気分になる。
というわけで、すぐにステアリングホイールを奪い返し、ドライバーズシートの人となる。ドライバーズシートがこのクルマのファーストクラスだ。
インテリアの撮影を行いながら、シートアレンジを試す。
3列目シートは簡単操作で床下に格納できる。ほとんど力もいらない。このあたりは各社開発が進んでいるのであまり差がつかないけれど、オデッセイのシートアレンジがよくできていることは間違いない。
撮影の合間に2列目、3列目シートに腰掛けると、あらためて先代より広くなったことに感心する。1列目シートと3列目シートのヒップポイントの距離は155mmも長くなり、2列目シートに座った時のヒザ周りの余裕は115mmも増えている。
スペース的にはライバルたちと真っ向勝負できるようになったことを確認して、帰路につく。帰り道はちょっと疲れたせいか、ファーストクラスだと思った運転席でも突き上げを感じて、ちょっとつらい。
普通のミニバンになった、と思ったオデッセイであるけれど、アブソルートに関しては全然普通じゃなかった。かなりとがった個性を持っている。
机上でいろいろなパラメーターを比較するならオデッセイがライバルに対して有利だけれど、オデッセイ アブソルートの購入をご検討の方は、入念な試乗をおすすめします。ものすごく気に入るかもしれないし、家族にそっぽを向かれる可能性もある。
(文=サトータケシ/写真=森山良雄)
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テスト車のデータ
ホンダ・オデッセイ アブソルート EX(7人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1820×1685mm
ホイールベース:2900mm
車重:1830kg
駆動方式:FF
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:190ps(140kW)/6400rpm
最大トルク:24.2kgm(237Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ヨコハマ・ブルーアースA34)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:358万5000円/テスト車=370万500円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムヴィーナスブラックパール>(4万2000円)/マルチビューカメラシステム+スマートパーキングアシストシステム(7万3500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2108km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:157.3km
使用燃料:16.6リッター
参考燃費:9.5km/リッター(満タン法)/10.0km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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