アウディRS Q3パフォーマンス(4WD/7AT)
レース屋が鍛えた公道マシン 2016.10.05 試乗記 オンロードでの動力性能に特化した高性能SUV「アウディRS Q3」が、さらにパフォーマンスを高めた「RS Q3パフォーマンス」に進化。レーシングマシンも手がけるアウディの“特殊部隊”クワトロGmbHが鍛えた、公道マシンの出来栄えを確かめた。RSのさらなるハイパフォーマンスモデル
アウディのオフィシャルウェブサイトを見れば、「RS」シリーズの特別感がまずはいかほどのものかよく分かる。メニューの横にあるモデルラインナップ。左から順に「A1」や「A3」とセグメントの小さなモデルが並び、「TT」「R8」に続いておかれるのが、このRSシリーズだ。車名の横にはR8と同様に、誇らしげな赤いラインが入る。アウディが参戦するモータースポーツで鍛えられた最先端テクノロジーと、スポーツモデルにふさわしいスタイリングやパフォーマンスを持つ「アウディスポーツ」と呼ばれるシリーズの象徴ともいえる赤いラインだ。
既報だが、アウディはこのアウディスポーツを特別なラインナップとしてサブブランド化。ミドシップスーパーカーのR8を筆頭に、この7月から日本でも本格展開を始めた。アウディスポーツを簡単にいうなら、メルセデスでいうAMGのようなスポーティーでエクスクルーシブな存在として立ち位置を明確化したものになる。
AMGモデルの開発や製造(一部の例外あり)を、メルセデス傘下にある──かつてのハウスチューナーと言った方が通りはよいかもしれない──レーシングディビジョンの武闘派たるメルセデスAMGが担当するように、アウディではレーシングマシンや市販のスペシャルモデルをクワトロGmbH(以下クワトロ社)が担当する。ドイツ国内で人気のレース、DTMの参戦マシンもクワトロ社の手になるもので、現行RSモデルシリーズもクワトロ社謹製だ。
本国に合わせ、アウディスポーツのサブブランド化と同時に、この特別なモデルを取り扱うにふさわしいよう販売網も強化。選ばれた全国24拠点でのみアウディスポーツのセールスを行う。
下は「RS 3」から上は「RS 7」まで、日本で購入可能なRSモデルは全7モデルという陣容だ。その中で唯一SUVスタイルを採用するRSモデルが、このRS Q3パフォーマンスである。ネーミングからも分かるように、このモデルは従来のRS Q3のハイパワーバージョン。今年3月のジュネーブショーでワールドプレミアされたホットなモデルだ。欧州市場ではRS Q3の上級モデルという位置づけだが、日本市場は潔くトップモデルのパフォーマンスのみを導入する。
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その名に恥じぬ実力の持ち主
フロントに横置きされるエンジンは、基本「RS 3スポーツバック」と同じものだ。直列5気筒2.5 TFSIエンジンのプロフィールこそ従来のRS Q3と変わらないが、今度は“パフォーマンス”というだけあって、最高出力は27ps、最大トルクは1.5kgmも向上している。カタログスペックは最高出力367ps、最大トルク47.4kgm。電光石火の変速を行う7段Sトロニックとクワトロの組み合わせで、同じくカタログ数値ではあるが、0-100km/h加速は4.8秒から 4.4秒へと短縮。最高速は250km/h から 270km/h(スピードリミッター作動)にまで向上したという。
注目すべきは最大トルクの発生回転数で、わずか1600rpmから5300rpmまで、よどみなくシームレスに47.4kgmを発生。どのギアからどう踏んでも、すぐにギアが1段(または2段)落ち、強力な加速が体をシートに押しつける。油圧式アクチュエータを用いて多板クラッチをコントロールするクワトロシステムは、前後のトルク配分を電子制御で絶妙にコントロール。4本のタイヤのグリップ力たるや、まさかこのクルマがSUVのスタイルをしていたことなど、瞬間忘れてしまうほどに強力。ステアリングを直進方向に向けている限り、まるで「戦闘機のカタパルト発進とはこうなんだろう」と夢想させる、安定感とパンチ力が仲良く肩を組む加速感が味わえる。そこにはターボラグは存在しないとさえ錯覚させる。とにかく息が長く、トルク感あふれる加速は、RSにプラスされたパフォーマンスというネーミングに恥じないものだ。
コーナリングフォームは、ボディー剛性の高さもあってか、安定のひとことだ。進入速度さえ見誤らなければ、アンダーステアの気配などみじんも感じさせない。エンジンの出力向上はさすがクワトロ社謹製だけあると感心するが、どうしてどうして。スタビリティーの塊のような、陳腐にもオン・ザ・レールと表現するしかないこちらのシャシーこそが、クワトロ社のクワトロ社たるゆえんである。パーツは緻密に組まれ、精度の高さが想像できる。それは、いいものを手にしたときに誰もが同じように感じるアレだ。装備を盛ってゴージャスにした厚化粧などでは決してない上質感や別格の手応え。エンジン縦置きのクワトロでなければアウディではないといった評判は、もはや都市伝説でしかない。
走行モードは“オート”がベスト
ドライブセレクターによって乗り味が変わるのもRS Q3の面白さだ。快適なセッティングとなるコンフォートモードでも、ノーマルのQ3とは比べものにならないほど引き締まった走りを印象付ける。それを比較するなら、体脂肪率が一桁のアスリートと20%台の普通のオヤジ程度にも違う。俊敏な身のこなしはコンフォートモードであっても感じられ、このクルマが生まれてきた環境を嫌でも連想させる。
ダイナミックモードでは、エキゾーストサウンドも静かにだが確実に野太く変化。いつでも本気で踏んでもらって結構という、さらにヤル気が伝わるモードになる。ステアリングでもソリッドな感覚が一層強まり、操作にボディーがより俊敏に反応するようになる。一般道を走っている限り、コンフォートでも十分に楽しく、果たしてこのダイナミックモードが必要だろうかとさえ思えてしまう。
もしも手っ取り早くRS Q3のパフォーマンスを漏れなく味わいたいのなら、そこはやはりオートモードがベスト。スポーティーさを決して失わない程よい快適さを基本に、手応えが欲しいコーナーではしっとりとステアリングに手応えを感じさせる絶妙な味付けを見せる。この辺のアルゴリズムは、スポーツとラグジュアリーをテーマに長年取り組んできたアウディという大きな組織の中の特殊部隊、クワトロ社のノウハウが生きていると実感する。
RSを名乗るその走りや少し特別感ある内外装にも不満は一切ないが、プレミアムブランドであるはずのアウディなのに、今どき標準でACCも付いていないのは正直大いに不満である。基本装備はクワトロ社の関知しないベースモデルに依存する、といわれればそれまでだが、アウディというブランドと800万円以上のプライスタグには、プレミアムカーでおなじみとなった安全装備も期待する。足良し、エンジン良し、スタイル良しで3拍子はそろっているが、今どきの高級スポーティーモデルは同時に充実の安全装備も兼ね備えていなくては物足りない。
ただし、現在開幕中のパリサロンにはフェイスリフト版のQ3が初お目見えしている。ホイールアーチをボディーとは別のカラー設定としてよりスタイリッシュになったエクステリア同様、セーフティーデバイスもしっかりバージョンアップしていることを期待したい。
(文=櫻井健一/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
アウディ RS Q3パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1840×1595mm
ホイールベース:2605mm
車重:1700kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:367ps(270kW)/5550-6800rpm
エンジン最大トルク:47.4kgm(465Nm)/1625-5550rpm
タイヤ:(前)255/35R20 97Y/(後)255/35R20 97Y(ピレリPゼロ)
燃費:13.0km/リッター(JC08モード)
価格:818万円/テスト車=834万円
オプション装備:オートマチックテールゲート(8万円)、RSダンピングコントロールスポーツサスペンション(8万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:679.6km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:359.5km
使用燃料:39.4リッター
参考燃費:9.1km/リッター(満タン法)/8.2km/リッター(車載燃費計計測値)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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