スバル・レヴォーグ1.6STI Sport EyeSight(4WD/CVT)
実用志向のSTIファンへ 2016.10.04 試乗記 「STI Sport」とは、STIとのコラボレーションによって走行性能と質感を高めた、「レヴォーグ」の最上級グレードのこと。170psと“実用的”なパワーを持つ1.6リッター仕様のステアリングを握り、その走りをじっくりと味わった。STIネームのさまざまな効能
レヴォーグという名前は響きがいい。「レガシィツーリングワゴン」の時代からスバルの主力車種としてワゴンは好評を博しており、レヴォーグというネーミングはその伝統を受け継ぎ、新たなる時代を切り開く存在にふさわしいと思う。そこにSTIネームが加わった。STIというとモータースポーツのイメージも強いが、今回のSTI Sportはカタログモデルという扱いで、量産を前提として一般化され、STI風味を利かせた最上級グレードという感覚でまとめられている。
STIの本性はチューニングカーであり、量産車では成しえない細部までの作りこみや、調整においてきめ細かな細工がほどこされていて、製造公差の範囲にあれば見過ごされてきたある種ラフな部分を、一度バラして再度きっちりと組み立て直すというような、高度な仕上げ感をもっている。
その少数生産の手作業的なものがライン化されることにより、工場全体の作業密度が高まることになり、それ以外の製品づくりにも好影響を及ぼすことは間違いない。これまでの日本車は良質感に対して低価格であることが魅力であったが、これからは高品質をもって高価格で売れる商品に成長させようという意気込みが感じられる。
外観デザインや細部のフィニッシュなどは、写真でご覧の通り、丁寧な仕上げによる上質感が漂っている。もっとも、それ以上に大事なことは、日常性や乗り心地などの基本的な振る舞いが上品であるかどうかだ。いくら高性能車らしいエンジンを積んで太いタイヤでたくましくみせても、直進がちょろちょろと乱されたり、ひょこひょことした振動が絶えず、体が揺さぶられたりするような乗り心地では興ざめである。高価格で売るならば、そこは最低限抑えておかねばならない。
1.6がちょうどいい
その点、歴代スバル各車は廉価モデルであっても直進性と乗り心地において、同クラスの中でも優秀な評価を獲得してきた。むやみにごつごつさせないのは、サスペンションのバウンドストロークをちゃんと確保しており、ゴムブッシュなどの変形に頼るコンプライアンス重視のチューニングではなく、凹凸はストロークさせて吸収するという基本を守ってきたからだ。そうして動かした後に強力なダンパーで抑え込む、というストーリーである。
だからスバル各車は日本車の中でも、欧州車のようにフラットな乗り心地感覚を持つ。富士重工の自動車造り黎明(れいめい)期には「スバル360」や「スバル1000」などの名車を造っていたことが思い出されるが、トーションバー・スプリングの優秀性を認め、その特性を生かして良好な接地性を確保していた時代もまた、同社の誇るべき遺産であろう。そうして開発者の体に刻み込まれた体感的伝承はそうやすやすとなくなるものではないし、簡単に作り出されるものでもない。レヴォーグに乗ってみると、そんな伝統が脈々と受け継がれていることをあらためて実感する。
ご承知の通り、レヴォーグは国内専用車種として開発がスタートした。4代目「インプレッサ」をベースに開発されており、ボディーサイズは5代目のレガシィツーリングワゴンと比べて全長を100mm詰め、全高を70mm低くし、ホイールベースも100mm短縮させて日本の道路事情に配慮したものだ。
エンジンもSTI本来の動力性能からいえば2リッターの300psがふさわしいが、1.6リッターの170ps版も用意することにより、300psもの高性能は要らないし、そこそこの燃料経済性もほしいという実用本位のユーザーにとってちょうどいい使い勝手に設定されている。それがSTI Sportシリーズ全体の販売の中で1.6リッターが半分強(52%)、レヴォーグシリーズ全体だと2割強(22%)を占める、高い人気につながっている。
見た目の派手さこそないものの、ユーザーの好みや必要性を真摯(しんし)に解析した結果の製品づくりに共感することも多い。付加価値と称して無用な抱き合わせなどを買わされ、使いもしないものに高額な出費を余儀なくされていた時代もあったが、本革シートやビルシュタインダンパーなど、本当に必要かついいものを標準装備としており、価格相応の価値を見いだせるところが素晴らしい。そこがこのSTI Sportの魅力なのだと思う。
アイサイトに思う
アイサイトのような運転支援システムも、“実験段階”を終えて実用段階に入って久しい。これらも数を作って実際に売って、さまざまな経験をして、改良を重ねていくことが大切である。第3世代に入ったとはいえ、まだまだ完成とはいえない部分もあるが、時代の流れである自動運転化にさきがけて挑戦したことは評価されるべきだろう。
自動ブレーキも作動速度が50km/hまで引き上げられたし、車間距離を保って追尾するシステムは左右の両足を使わずに走れ、使い方によっては大変便利な装置である。しかしこれも追尾される側の、前を走る車にとってはうっとうしい存在であり、等間隔でどこにでも追ってこられると迷惑に感じることも多いから配慮も必要だ。
またABペダルを操作しないことによるストレスもある。なによりも自分で走らせている実感がなくなるわけだから、注意力が散漫になり、ひとごとのように感じられるときもある。個人的にはそんなところが素直には受け入れがたく、自動運転車が普及しても自分では買わないだろうな、と思う。第一、筆者はそうした運転操作自体を面白いと感じているわけだから、その楽しみを機械なんかに奪われてなるものか……という思いもある。
自動ブレーキも状況によっては安全で効果的な装置だと思う。これも自分でペダルにタッチするとシステムがキャンセルされてしまうなど、どんな場合でも100%止まってくれるわけではない。またデジタルカメラがカバーするのは前方に見える範囲であって、そのまた向こうの先まで判断できるわけではない。逆光に対してはエラーも多いと聞く。そんなことも含めてユーザー側もよく勉強してシステムを理解し、欠点は欠点と自覚して使用しなければならない。
小気味よく軽快
1.6リッターエンジンのパワーは十分なだけでなく高性能でもある。普段のDポジションでは基本のCVT変速機の特性を生かして、エンジン回転をあまり上下させずに速度変化はギアボックスに仕事を任せている。多少モアーッとした感覚もあるにはあるが、トルク感のある走りは燃費を稼いでいるなという気持ちにさせてくれる。
一方で積極的にシフトして走りたい時には、マニュアルシフト側を使ってクロスレシオゆえの回転落差が少なくつながりのいい走りを楽しめる。通常のATシフトショックとは別種の、意識して速度の階段を上下するときのG変化もまた小気味よい。また、小排気量特有のシャープな吹け上がりは、ノーズが軽いこともあって旋回性にも軽快感をもたらす。
燃費については、今回の計測では326.5kmの総平均が7.8km/リッターと、期待したほど伸びなかったが、これには都内でアイサイトを試した走行区間も相当含まれる。流れている郊外の走行や高速道路での定速走行では二桁を割ることはなかったこともお伝えしておきたい。
背の高いSUVタイプの車型が流行ではあるが、ちょっと低めでハッチバックよりは大きく、乗ればセダン並みの乗用車感覚があって、しかも高性能でスポーティーな操縦感覚を持つ。そんなイイとこ取りの万能型大容量乗用車としてレヴォーグは魅力的である。過去を振り返れば、スタイルはだいぶ違うけれども「レガシィランカスター」に出会ったときがコレに近かった。いや、レヴォーグはもっと新鮮な感覚に満ちている。
(文=笹目二朗/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ1.6STI Sport EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:348万8400円/テスト車=357万4800円
オプション装備:サンルーフ<電動チルド&スライド式>(8万6400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1485km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:326.5km
使用燃料:41.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:7.8km/リッター(満タン法)/8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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