MINIクーパー クーペ(FF/6AT)【試乗記】
ますますゴーカート 2011.10.25 試乗記 MINIクーパー クーペ(FF/6AT)……396万5270円
「MINI」の新しいボディーバリエーションとなる「MINIクーペ」が日本に上陸。2シーターの新型に早速試乗した。
リメイクの時期は終わった
顔つきとウエストラインから下は、ざっと見たところ、ハッチバックと変わらない。しかしその上に載るキャビンが小さいために、相対的に足腰のたくましさが強調されていて、「MINIクーペ」のデザインにはいかにもイイ走りをしそうな雰囲気が漂っていた。ハッチバックと比べて車高は50mm低く、Aピラーの角度は13度寝かされている。これにより空力性能が改善され、加速と最高速がわずかに向上しているという(JCW仕様同士で比較した場合、0-100km/hは0.1秒短縮の6.4秒で、最高速は2km/h速い240km/h)。
MINIとしては5番目のバリエーションとなる。いにしえのオリジナルミニに範となるものがない「完全新型」のモデルとしては「クロスオーバー」に続く第2作目である。これまでニューミニは「オリジナルと比較すると……」などという接頭辞付きで語られることが多かったが、もはや過去をなぞる時期は終わり、新しい歴史を創造する段階に入ったわけだ。
その新しい歴史の創造は、クーペの日本発表に際して来日したMINIのカイ・ゼグラー執行役員によれば、順調に進んでいるという。たとえばクロスオーバーは2011年1月に発売され、これまでに3000台が販売された。この台数は日本における全販売の約30%に当たるそうだ。
「ミニブランドに期待されているものは、必ずしも小さなサイズのクルマだけではないということが、クロスオーバーの成功でわかりました。むしろ消費者にとって重要なのは、ミニというエキサイティングなブランドのクルマを所有することだと考えています」とゼグラー氏。クーペもそれに続くことができるだろうか? まずは室内をのぞいてみることにしよう。
リアルスポーツ的な室内風景
インストゥルメントパネルのデザインは、中央に大きなスピードメーターを置いた見慣れたものである。しかし車高が低められ、ウインドスクリーンの傾斜が強められたことによってキャビンはチョップドトップ的な形状になっており、室内はいかにもスポーツカー的な、「穴ぐら」に収まっているような印象がある。
ルーフに帽子のつばみたいなスポイラーが装着されているために、リアウィンドウも、視界が思いのほか限られている。80km/hを超えると「アクティブリアスポイラー」が自動で上昇してくるために、さらに視界は遮られてしまう。スタイリングや雰囲気を優先した、きわめてスポーツカー的なアプローチの造形である。
座席配置は2シーターであり、いわゆるプラス2シートのようなものは存在しない。シートの背後にはガッチリとしたリアバルクヘッドがあり、それによって客室と荷台が完全に仕切られている。シートの後方には手さげカバンが置ける程度の狭い空間が残されているだけだ。もっとも荷台の容量自体は広く、280リッターにおよぶ。これはハッチバックモデルを上回っている。
細いタイヤも試してみたい
実用性をある程度割りきってまで走りに振ったかいあって、フットワークはハッチバックよりいちだんと小気味良さを感じさせるものとなっている。リアバルクヘッドの効果は相当に大きいらしく、あれだけ大きな開口部を持つハッチゲートを備えているのに、リアまわりがブルブルとだらしなく震えることはほとんどなかった。
テスト車はシリーズで一番穏やかな122psの直4NAエンジンを搭載する「クーパー」だったが、これとてなかなかパワフルに走った。ただ世の中にこれだけデュアルクラッチトランスミッションが増え、その感覚に慣れてしまった今となっては、ATのトルコンスリップがややもどかしく感じられたのも事実である。トルコンATのイージーさは捨てがたいが、せっかくクーペを選ぶなら、6段MTにしたほうが作り手の意図をより直接的に体感できるだろう。
ひとつ気になったのはタイヤだ。クーパーでは175/65R15が標準サイズとなるが、テスト車には最上級の「ジョンクーパーワークス」と同じ205/45R17(銘柄はコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト3のランフラット仕様)がオプション装着されていた。これがクーパーには少々オーバーサイズで、目地段差通過時に明確な突き上げを見せ、乗り心地を悪化させていた。クーペならではのピピッと反応するハンドリングは魅力的だが、バランスは大事。1回ノーマルサイズのタイヤがどういった走りを見せるのかも試してみたいところである。
(文=竹下元太郎/写真=高橋信宏)
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竹下 元太郎
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