メルセデスAMG GLE43 4MATIC クーペ (4WD/9AT)
優雅さへの挑戦 2016.12.07 試乗記 ベースとなった「GLE」から、より長く、より幅広く、そして低められたボディーと、流麗なルーフラインが特徴的な「メルセデス・ベンツGLEクーペ」。3リッターV6搭載の「AMG GLE43 4MATIC クーペ」に試乗し、メルセデスがこのモデルで意図したところを探った。小山のようにデカイ
その巨大なSUVのクーペを初めて見たのは、早朝の東京・丸の内だった。クジラのようにデカイ、と誰かが表現した。なるほどデカイ。
全長4890mm×全幅2015mm×全高1720mmもある。スタンダードのメルセデス・ベンツGLEより45mm低くて65mm幅広く、75mm長い。同類の「BMW X6」同様、小山のようにデカイ。
ヒヤシンスレッドのドアを開けると、純白のレザーシートの背もたれと座面の中央部分に、ベントレーもかくやのダイヤモンドステッチが入っている。オオッと思う。しかも、ヴァージンホワイト。テスト車には「designo(デジーノ)エクスクルーシブパッケージ」という54万円のオプションが装着されていたのだけれど、予算に余裕があれば、ぜひつけたい。誠に贅沢(ぜいたく)はステキだ。
運転席によじ登ると、横方向にうんと広い。アメリカンフルサイズといった趣がある。天井はちょっぴり低い。極太で、3時と9時の部分がスエードになったステアリングはスポーツカーさながらだ。
ふとルームミラーからリアビューを見ると、洞窟から出口を見たときのように後ろの景色がカマボコ型になっている。ファストバックゆえ、リアウィンドウからの視界が狭い。これぢゃバックできないかも……という心配はご無用だ。前後左右のカメラ映像の合成により、周囲の状況を360度映像で見せてくれるからだ。
後席もまた天井が低めではあるけれど、足元が広くて閉所感はない。クーペを名乗るものの、大人5人と荷物を運ぶ実用性を備えている。機能を犠牲にしている、という批判は当たらない。当たらないので、する人もいないでしょうけれど、リアのオーバーハングが伸びているからデパーチャーアングルが小さい、と言う“4×4マニア”はいるかもしれない。もちろん、このクルマでオフロードに行くほうが間違っている、と誰もが思うだろうから、そんなことを言う人はいない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
高速域で真価を発揮
機構的な中身はGLEと同じくする。GLEクーペなのだから当然だ。2915mmのホイールベースもGLEと同一で、日本仕様の場合、エンジンのラインナップも同一。3リッターV6ディーゼルターボのほか、ガソリンの3リッターV6と5.5リッターV8に、それぞれツインターボで武装したAMGユニットが2種設定されている。
試乗したメルセデスAMG GLE43 4MATICクーペは、3リッターV6直噴ツインターボを搭載する、AMGとしては穏健派だ。とはいえAMGを名乗るにふさわしく、最高出力367ps/5500-6000rpm、最大トルク53.0kgm/2000-4200rpmを発生し、スターターボタンを押すと、「AMGエグゾーストシステム」の効果もあって威勢のよい爆裂音を発する。
ヴオンッ! 劇画チックである。
いざ発進すると、自製の9段オートマチックトランスミッションとの組み合わせでもって、車重2310kgのスーパーヘビー級ボディーを軽々と走らせる。前述したように、わずか2000rpmでわき出てくる50kgm超の大トルクが、それを可能にする。前285/40、後ろ325/35のともにR22(!)というジャンボサイズのタイヤ&ホイールゆえ、低速時の乗り心地ははっきり硬い。いわゆるバネ下が重い。コツコツする。
AMG専用の「AIRマチックサスペンション」が能力を発揮し始めるのはそこから先である。速度が増すにつれて、巨大なタイヤ&ホイールが気にならなくなる。大型車ならではのクルーザー感覚がある。ステアリングは微舵の利きが強調されている。ちょっと切るだけでビッと動く。あまりにビッと動くので、当初は人工的な印象を受けるけれど、すぐに慣れる。
“ぬるめ”が心地いいAMGモデル
センターコンソールには「AMGダイナミックセレクト」と呼ばれる電子制御のドライブモードセレクターが付いていて、これを「コンフォート」から「スポーツ」にするとエンジンの回転数が上がり、ステアリングが若干重くなって乗り心地が硬くなるのは例のごとしである。さらに「スポーツ+」にすると減速時にブリッピングをしてシフトダウンする。ドラマチックな演出に心が躍る。
コーナリングでほとんどロールしないのは、「アクティブカーブシステム」という電気仕掛けが前後スタビライザーに能動的に介入しているからだ。この介入ぶりがごく自然で、あたかも重心の低いクルマに乗っているように思える。
4WDの「4MATICシステム」は黒子に徹していて、ドライ路面の今回の試乗ではその存在を感じさせることはなかったけれど、巨体の割に曲がることをいとわない。
とはいえ、もともとこのクルマはAMGとしては控えめな3リッターV6搭載で、そのV6が決して控えめとはいえない大きさのヘビー級ボディーと組み合わされている。「控えめ」×「控えめとはいえない巨体」の相乗効果で、「控えめ」の度合いが強調される。
ようはAMGなのに、運転してみるとホットというより“ぬるめ”に感じる。もちろん、ぬる燗(かん)は悪いものではない。ゆえに筆者はAMGダイナミックセレクトのダイヤルを主にコンフォートに設定して、ゆったりと走らせることのほうに喜びを覚えた。
“ジープ”の面影はない
それにしても、車重2.3トンもの怪獣をフツーに走らせることに意味は? 世界は富の偏在とCO2増加による気候変動で大変なことになっている。というのに、かくも巨大な怪獣SUVクーペが地球上に生息する余裕はあるのだろうか?
このような問題はいつだって答えが出ない。つまり、問題の設定が間違っている。ごめんなさい。試乗後の某日の昼間、筆者は銀座を泳ぐように走る1台のGLEクーペをたまたま見た。リアのオーバーハングが長くて、すぼんでいて、尾びれの長い金魚のようで、エレガントだなぁ、と思った。SUVなのに、ご先祖ともいうべき“ジープ”の面影がなかった。そのGLEクーペはヒヤシンスレッドではなくて、シルバーだったのだけれど、つまりメルセデス・ベンツは優雅なSUVのクーペというものに挑んだのである。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデスAMG GLE43 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×2015×1720mm
ホイールベース:2915mm
車重:2310kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:367ps(270kW)/5500-6000rpm
最大トルク:53.0kgm(520Nm)/2000-4200rpm
タイヤ:(前)285/40R22 106Y/(後)325/35R22 110Y(ピレリP ZERO)
燃費:10.0km/リッター(JC08モード)
価格:1200万円/テスト車=1272万9000円
オプション装備:ボディーカラー<ヒヤシンスレッド>(18万9000円)/designo(デジーノ)エクスクルーシブパッケージ<designo本革ナッパレザーシート[ポーセレン、電動ランバーサポート付き、ダイヤモンドステッチ]、designoナッパレザーインテリア[ダッシュボード、センターコンソール、ドア内張り]、AMGカーボン/ピアノラッカーウッドインテリアトリム>(54万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2701km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:201.3km
使用燃料:26.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/7.6km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。


















































