メルセデス・ベンツGLE400d 4MATICクーペ スポーツ(4WD/9AT)
才色兼備のクロスオーバー 2020.10.20 試乗記 SUVとクーペの融合が図られた、メルセデスの個性派モデル「GLEクーペ」がフルモデルチェンジ。新型のクリーンディーゼル搭載車に試乗した筆者は、その予想外の走りっぷりと優れたユーティリティーに、大いに驚かされたのだった。「Eクラス クーペ」をクロスオーバー化したような……
私のなかでは、メルセデス・ベンツはいまだに“輸入高級セダン”のイメージが強いのだが、時代の流れとともにSUV比率が高まっているというのが現実で、いまや日本市場ではSUVの販売が約3割に達するそうだ。確かに週末の高速道路をはじめ、東京のど真ん中でも、メルセデスのSUV比率が高まっているのを実感できる。
別格の「Gクラス」はひとまず除外するとして、SUVラインナップの足跡を見直すと、1998年に登場した「Mクラス」にたどり着く。プレミアムSUVの“はしり”となったMクラスは、3代目の途中で「GLE」と名を変え、いまに至るのはご存じのとおりだ。エントリークラスの「GLA」からフラッグシップの「GLS」までSUVのラインナップがそろい、ブランド全体の好調を支えているのは、Mクラス(とGLE)があったからなのだ。
そのGLEは2019年のフルモデルチェンジで、4代目に進化。Cピラーやリアクオーターウィンドウの特徴あるデザインにより、ひと目でMクラスの系譜とわかるエクステリアが最新モデルにも受け継がれるあたりに、作り手の歴史を重んじる気持ちが感じられる。
そんなGLEのクーペ版となる「GLEクーペ」が登場したのは2016年のことだが、いかにもSUVというGLEのエクステリアとは大きく異なり、「Eクラス クーペ」を4ドアにしてクロスオーバー化したらこんなスタイルになるのかなぁ……という、まるでGLEとは別物のクルマに仕上がっている。それが嫌いというのではなく、むしろ格好良く見えるというのが、個人的な感想だ。
クーペといっても中は広い
本物のクーペとは違い、ボディーサイズに余裕があるSUVクーペは、後席やラゲッジスペースが広いのがうれしいところ。このGLEクーペも、全高は「GLE」に比べて65mm低い1715mmとはいえ、身長167cmの筆者の場合、後席のヘッドルームは10cm強と十分な余裕があり、レッグルームも楽に足が組めるほど広い。
ラゲッジスペースも、後席を使用する状態で奥行き約115cm、655リッター(VDA方式)もの広い空間が確保されている。GLEに標準装備のサードシートがこのGLEクーペでは選べないが、そこを重視しない人にとっては、GLEクーペでも十分使い勝手のいいキャビンに仕立て上げられている。
そのうえ、走りにも良い影響が見られたのだが、そのあたりはまた後ほど触れるとして、今回試乗したのは、2.9リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンを積む「GLE400d 4MATICクーペ スポーツ」。現在、日本で販売されるGLEクーペは2グレードで、ガソリンエンジンの「メルセデスAMG GLE53 4MATICクーペ」の1421万円に比べると、こちらは1186万円と、“ぐんとお求めやすい”一台である。
やや高めの運転席に陣取ると、最近のメルセデスの文法どおり、12.3インチのワイドディスプレイが2個連結された先進的なコックピットが目に映る。と同時に、センターに鎮座する光り輝く4連のエアベントや、ステッチが美しいダッシュボードなど、隙のないプレミアムSUVとしての演出に、ただただ恐れ入るばかりだ。
頼りになるディーゼルエンジン
圧倒されてばかりもいられないので、気を取り直して走りだすと、低回転から太いトルクを発生する2.9リッターディーゼルエンジンに、再び圧倒されてしまった。
カタログを見ると700N・mもの最大トルクがわずか1200rpmから湧き出すことがわかるが、アクセルペダルを軽く踏んだだけでは、発揮されるのはその実力の数分の1ほどだ。それでも車両重量が2450kgに達するGLEクーペのボディーを軽々と動かすのだから、ディーゼルエンジンはやめられない。
これだけ低速トルクが充実していれば、あえて回転を上げなくても楽に加速できてしまう。この日は箱根まで足を延ばしたが、上り坂でもアクセルペダルに乗せた右足に軽く力を込めるだけで、ぐいぐいと坂を登っていくのは頼もしいかぎりだ。そのうえ、このエンジンは実にスムーズでノイズもよく抑えられており、加速時であってもディーゼルであることを忘れてしまいそうだ。
もちろん、いざという場面でアクセルペダルを思い切り踏み込めば、4000rpmを超えてもなお、力強い加速が続く。山道で少し踏みすぎたのか、試乗を通した平均燃費は10.6km/リッター(車載コンピューターで計測)だったが、ふつうに走ればこの数字は軽く超えるはずで、余裕あるボディーサイズでこれほどの高性能でありながら、燃料代がセーブできるのも、このクルマの魅力といっていい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
SUV離れした走り
GLEクーペの走りは、SUVとしては十分に落ち着いている。このGLE400d 4MATICクーペ スポーツには、エアスプリングと電子制御ダンパーを組み合わせたエアマチックサスペンションが標準装着されており、コンフォートモードでは軽いピッチングが見られることがあるが、乗り心地はおおむねマイルドで快適。目地段差を通過したときにも、ショックの伝わり方は穏やかなほうだ。
驚いたのはワインディングロードを走ったときの挙動で、ハンドリングが素直なうえに、ロールの制御が見事! これに貢献していたのが、オプションで用意されている「Eアクティブボディーコントロール」。GLEよりも低めの全高とあいまって、気持ちの良いコーナリングを楽しむことができたのだ。
やや細い道を走るときや、狭いパーキングに駐車するときなどは、正直なところ気を遣う。しかし、それ以外の場面ではボディーの大きさを気にすることなく運転が楽しめたGLEクーペ。スタイリッシュなエクステリアに似合う街なかだけでなく、ロングツーリングに連れ出したくなる一台である。
(文=生方 聡/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLE400d 4MATICクーペ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4955×2020×1715mm
ホイールベース:2935mm
車重:2350kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:330PS(243kW)/3600-4200rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1200-3200rpm
タイヤ:(前)275/45R21 107Y/(後)315/40R21 111Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.7km/リッター(WLTCモード)
価格:1186万円/テスト車=1281万6000円
オプション装備:パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(18万6000円)/Eアクティブボディーコントロール パッケージ(77万円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:4253km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:293.8km
使用燃料:21.1リッター(軽油)
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。





















































