ベントレー・コンチネンタルGTC(4WD/6AT)【海外試乗記】
クーペ派にこそ薦めたい 2011.10.17 試乗記 ベントレー・コンチネンタルGTC(4WD/6AT)……2640万0000円
オープンエアモータリングの気持ちよさは、多少のガマンと引き換えに得られるものだった。しかし「コンチネンタルGT」に続いてモデルチェンジを果たした「GTC」は例外と言えそうだ。欧州試乗会からの第一報。
似て非なるスタイリング
正直に言うと先代「コンチネンタルGTC」は、個人的にはあまりササるクルマではなかった。その時は深く考えはしなかったが、今思えば、微妙に腰高感のあるスタイリングが今ひとつエレガントに感じられなかったのだろうという気がする。
しかし新型の肢体には一目でぐぎ付けになった。昨秋デビューした新型「コンチネンタルGT」は、一見したところは先代とほとんど変わらないように見えて、実はプロポーションにしてもディテールにしてもローアンドワイドに見えるよう巧みに演出されている。ルーフをソフトトップへと置き換えたGTCでは、それがますます生きて、さらに流麗なフォルムを手に入れることとなったのだ。
ハードウェアとしての進化については、その新型コンチネンタルGTと多くの部分を共有している。軽量化により車両重量は先代比45kg減の2495kgに。クーペに対して175kgの重量増は、元々のウェイトの大きさからすればそれほど大きいとはいえないだろう。これらは新設計された7ボウ3レイヤーのソフトトップやロールオーバープロテクションのほか、サイドシルの強化やフロアへのブレースおよびガゼットの追加といったボディー補強に費やされている。
その結果として、ボディーのねじり剛性は22500Nm/degという数値を達成している。これは先代と変わらない数値だが、依然としてクラストップである。
クーペのごとき快適さ
6リッターW12ツインターボエンジンは最高出力575ps、最大トルク700Nm(71.4kgm)を発生し、クイックシフトや2段階シフトダウン機能などを搭載した6段ATと組み合わされる。フルタイム4WDシステムは前後駆動力配分が50:50から40:60に変更された。このあたりも、すべてコンチネンタルGTと共通である。
最初はトップを閉じたままでスタート。先代の記憶もあるし、ボディー剛性の数値も見ているから十分に想像できているつもりだったにもかかわらず、数百メートル行ったところで思わず「なんてしっかりしてるんだろう」という言葉が口をついて出た。ボディーや内装のどこも軋(きし)み音を上げたりしないのは当然。乗り心地にもステアリングフィールにも、オープンカーであることをネガティブな意味で意識させる部分がまったく感じられない。試乗車は標準の20インチではなく、21インチのタイヤおよびホイールを履いていたにもかかわらずだ。
実際、最近のオープンカーはどれもレベルが高く、「オープンカーは仕方ないよね……」なんて思わせるものはほとんどない。しかしその中でも、コンチネンタルGTCの完成度は際立っている。何しろトップを上げた状態でしばらく走るうち、これがオープンカーであることも半ば意識から薄れてしまっていたほど。これには高速域でも一切バタついたりしないソフトトップや、効果的に配置された吸音材、防音ガラスによる静粛性の高さも大きく貢献しているはずである。
ボディー剛性は万物に効く
そして、いよいよATのセレクターレバーの手前にあるスイッチを引きオープンに。開閉に要する時間はざっと24秒。約30km/hまでなら走行中でも動作してくれるのがありがたい。
トップを下ろしても好印象に変化はない。舗装が荒れたところでもフロントウィンドウがブルブル震えたりすることは皆無。ステアリングフィールはしっとりと上質だし、乗り心地もしなやかさを失わない。GTもそうだが、このあたりは確実に先代からの進化あるいは熟成ぶりを感じさせる。「ミュルザンヌ」にも一脈通ずるぬくもりある感触が何とも心地良い。
ウインドディフレクターを装着しなければ風はそれなりに巻き込んでくる。けれど、それを特に不快と感じなかったのは、このボディーのしっかり感のおかげだろう。クルマがちゃんとしていると、ささいなことはどうでもよくなってくるということだ。
ちなみに寒い季節のために、前席には新たに背もたれの首のあたりに温風を吹き出すネックウォーマーが内蔵されている。きっと真冬でもガマン要らずでオープンエアドライビングを楽しめるに違いない。
オープン化に伴う犠牲はまったくなしに、うれしさや気持ち良さだけプラスした……なんてありきたりの言い回しではあるが、しかし新型コンチネンタルGTCは真の意味で、そういうクルマに仕上がっている。価格は2640万円。GTとの差は215万円と、それだけでクルマ1台買えるほどだが、元の車両価格からすれば1割にも満たない差だ。この内容からすればこれはバーゲンプライスと言ってもいいんじゃないかという気すらしてしまった。
クーペ派の人も今度のGTCは一度試してみる価値がある。日本導入は2012年春頃になるようだ。
(文=島下泰久/写真=ベントレーモーターズ)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。






























