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【スペック】全長×全幅×全高=4335×1765×1440mm/ホイールベース=2690mm/車重=1420kg/駆動方式=FR/1.6リッター直4DOHC16バルブターボ(170ps/4800-6450rpm、25.5kgm/1500-4500rpm)/価格=367万円(テスト車=457万2000円)

BMW120i(FR/8AT)【試乗記】

不変のこだわり 2011.10.13 試乗記 下野 康史 BMW120i(FR/8AT)
……457万2000円

2004年のデビュー以来、初のフルモデルチェンジを受けた「1シリーズ」。FRレイアウトや50:50の前後重量配分といったBMWならではの基本パッケージは変わっていない。ではどこが変わったかというと……。

ハンドリングは言うことナシ

袖ヶ浦フォレストレースウェイをベースに行われた新型「1シリーズ」試乗会の持ち時間は90分。テストドライブは15分のサーキット走行から始まった。

つまり、いきなり全開。べつにゆっくり走ったっていいのだが、10秒置きくらいに試乗車をコースインさせるので、もたもたしていると後ろに迷惑がかかると思って、可能な限り飛ばす。試乗車は「120i」。旧型と比べると、ステアリングが軽くなったことが第一印象。最近のドイツ車の傾向からして、ああやっぱりという感じだ。

「ステアリングは軽ければ軽いほどいいんですよ」と言ったのは、“現代の名工”でもある日産のテストドライバー、加藤博義さんだ。「操舵(そうだ)フィールがあれば、ね」というただし書き付きだが、新型1シリーズはその点でも見事だ。前の週の雨のせいか、コースの何カ所かに細い川が流れていたが、水の質感がハンドルを通してわかるほどステアリングがインフォーマティブだ。前輪にパワーユニットからのキックバックがまったくないFRは、こういうところでも得をしているわけである。

ぼくなりに攻めているつもりでも、姿勢は乱れない。何をやっても大丈夫に思えるスタビリティーがある一方、ESPがファン・トゥ・ドライブの邪魔をする気配もない。今は同業だが、「ユーノス・ロードスター」のハンドリングを創った元マツダエンジニアの立花啓毅さんにプレスルームで会ったら「いやあ、足まわり、いいねえ」と感激されていた。

ボディーサイズは、旧型に比べて全長が95mm、全幅が15mm、全高が40mmそれぞれ拡大された。
ボディーサイズは、旧型に比べて全長が95mm、全幅が15mm、全高が40mmそれぞれ拡大された。
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内外装の配色は仕様(標準タイプ/スタイル/スポーツ)により異なる。写真は、「スタイル」に標準のメトロクロス/レザーコンビネーションインテリア。
内外装の配色は仕様(標準タイプ/スタイル/スポーツ)により異なる。写真は、「スタイル」に標準のメトロクロス/レザーコンビネーションインテリア。
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BMW120i(FR/8AT)【試乗記】の画像 拡大
BMW 1シリーズ の中古車

“あのエンジン”を縦置きに

新型1シリーズのハイライトはエンジンの刷新である。「120i」も「116i」も、BMWがPSAグループと共同開発した1.6リッター4気筒ターボになった。MINIやプジョーやシトロエンですでにおなじみの直噴ユニットである。呼称は「ツインパワー・ターボエンジン」というスゴイことになっているが、BMWジャパンの関係者によると、機械的な構成は既存のものとまったく同じ。違うのは縦置きにして、ZF製の8段ATと組み合わせたことである。

BMWの“車是”ともいえる50対50の前後重量配分は、今度の1シリーズでも当然守られ、120iは前720:後700kgのほぼイーブン。ちなみに横置きFFの「MINIクーパーS」は63:37である。1シリーズのハンドリングがすっきり爽やかなのもむべなるかなだ。

120iのパワーは170ps。チップチューンの違いで136psに抑えられる116iとの差は大きいが、MINIのクーパーS(184ps)ほどハイチューンではない。実際、馬鹿力は感じないが、プレミアムコンパクトを標榜(ひょうぼう)する1シリーズには合っている。思い起こすと、旧型1シリーズの4気筒エンジンは、どれも特段印象に残るようなものではなかった。高回転まで気持ちよく伸びる直噴1.6リッターターボは、1シリーズを若返らせたと思う。

「M3」風のカッコいいセレクターが付く8段ATは「文句なし」である。例によって、BMWのシーケンシャルシフトは、ダウンがセレクターを「前へ押す」アップが「手前に引く」という、一般とは逆の方向なので、個人的にはパドルシフトがほしいと思ったが、このクルマにしか乗らないオーナーやBMW党には関係ない。

新型1シリーズには、エンジンオートスタート/ストップ機構やブレーキエネルギー回生システムなどが標準装備される。
新型1シリーズには、エンジンオートスタート/ストップ機構やブレーキエネルギー回生システムなどが標準装備される。
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10・15モード燃費は、「116i」が17.6km/リッター、「120i」は17.2km/リッター。
10・15モード燃費は、「116i」が17.6km/リッター、「120i」は17.2km/リッター。
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【テスト車のオプション装備】
iDriveナビゲーションパッケージ=25万円/ダコタレザーシート=24万円/スルーローディングシステム=3万7000円/電動ガラスサンルーフ=14万円/パーキングサポートパッケージ=10万円/ファインライン ストリーム ウッドインテリア トリム/マット オキサイド シルバー ハイライト=6万円/メタリックペイント=7万5000円
【テスト車のオプション装備】
iDriveナビゲーションパッケージ=25万円/ダコタレザーシート=24万円/スルーローディングシステム=3万7000円/電動ガラスサンルーフ=14万円/パーキングサポートパッケージ=10万円/ファインライン ストリーム ウッドインテリア トリム/マット オキサイド シルバー ハイライト=6万円/メタリックペイント=7万5000円 拡大

ダブルの改善

Cセグメント唯一の縦置きエンジンなのだから、特別広い室内を望むのは酷なのだが、それにしても旧型のキャビンは狭かった。

その点、新型は改善をみた。5ドアボディーは95mm長く、15mm広く、40mm高くなった。おかげで前席のヘッドルームからは窮屈感がほぼ消えたし、後席の足もとは明らかに広くなった。サスペンションがよく動くようになったのはサーキットでも感じたが、公道に出てみると乗り心地のよさでそれが再確認された。1シリーズというと「堅くて狭い」という印象が強かったから、今回はその両方が改良されたといえる。

新エンジンで燃費も向上し、新型は全車エコカー減税ゲットである。上手なアイドリングストップも標準装備。センターパネルのスイッチで「ECO PRO」モードを選ぶと、エンジンや変速機やエアコンの制御が省燃費指向になり、今の運転なら航続距離がこれだけ伸びるというキロ数を“ボーナスポイント”として教えてくれる。

1シリーズのライバルは? と聞いたら、「このクラス唯一のFRなので、ライバルはいません」とBMWジャパンの人が答えたが、クルマ好きならたしかにそう考えるべきだろう。MINIと同じエンジンといったって、わざわざ横のものを縦にして、プロペラシャフトで後輪を回す。これほど“こだわり”の強いコンパクトカーもない。そう考えると、200psの「ゴルフGTI」(368万円)に真っ向勝負する120iの価格(367万円)も割高とはいえないかもしれない。

(文=下野康史/写真=郡大二郎)

先代同様、センターコンソールはドライバー側に傾けられている(写真は「スタイル」)。
先代同様、センターコンソールはドライバー側に傾けられている(写真は「スタイル」)。
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新型ではホイールベースの延長(+30mm)などにより、室内空間が拡大した。
新型ではホイールベースの延長(+30mm)などにより、室内空間が拡大した。
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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