トヨタ・タンク カスタムG-T(FF/CVT)
キミの名は? 2017.02.01 試乗記 コンパクトハイトワゴン市場にトヨタ陣営が投入したニューモデル「タンク」。3気筒ターボエンジンを搭載した上級グレード「カスタムG-T」に試乗し、同市場のパイオニアである「スズキ・ソリオ」との違いを確かめた。ダイハツっぽい
「ソリオ ハイブリッド」から乗り換えたら、ドライビングポジションがずいぶん違った。具体的には、人間からするとハンドルが遠い。ダッシュボードからすると、それにひっつくぐらいの近いところにハンドルがいる感じ。いわゆるテレスコピック調整機構はついていない(それはソリオも同じ)。ハンドルポストの下あたりをマジメに探った結果そう判断した。
でもテレスコ、ホントについてないか? ではいま、確認のため、カタログの装備表をみてみよう。ダイハツ……ではなくて、トヨタ。ただ乗るぶんには別にどっちだっていいようなものだし、そしてこれはフザけて書いているわけではない。というのは、乗った感じ、このクルマはすごくダイハツである。ダイハツっぽい。トヨタ感はない。で、悪くいえばドンクサい。よくいえばマジメそう。ダマすのがヘタそう。そこそこ骨太っぽい。
余談だけど、いろいろ借りて乗るなかにはなぜかウインカーレバーの位置がどっち側かを間違えちゃうクルマというのがある。最初のいっぺんだけ間違えてあとはオッケー……ではなくて、なぜか連続で間違えちゃうクルマ。その原因として、「乗った感じがガイシャみたいだから(またはニホンシャみたいだから)つい」というのがどうもありそう。「シボレー・ソニック」は右ウインカー。これなんか、なんべんも間違えた。なお今回のダ……いやトヨタの場合、そういうことは別になかった。名前は……トール? タンク? ほか2つ(ですよね?)を覚えてないというのもあるけど、でもそのどっちかだったことは確かな気がする。調べればすぐわかる。編集部ホッタ君(お寺の小僧さんみたいだからホッタ念と勝手に命名)からの原稿よろしくメールを読めばすぐわかる(でも読まない)。
あと30mmが遠い
もとい。ハンドルが遠い。ということでそのハンドルにリーチを合わせる。シートを前へ。そうするとグーッと前へいって、ペダルがすごく近い。ヒザの関節が深く曲がった状態。どうかすると、ダッシュボードの下側のところにすぐヒザコゾーがコツンと当たる。ゴツン!!→「イテッ!!」ということは別に。で、そのコツンは右のヒザコゾーだったか左のヒザコゾーだったか。そういえば、どっちも当たった。幸いなことに、運転に支障をきたすほどではなかった。乗ってるうちに、最初のビックリはスーッと消えた。でも近いな。あーいや、遠いのか。これを買って、いわゆるストレートアームっぽいポジションで運転することになる人、多いんじゃないだろうか。「使用人が贅沢いうんじゃないよ!!」。マジメなポジションにセットしたとき、そんなことをいわれたような気分にちょっとなった。
テレスコ調整なしならば、あと30mmぐらい、ステアリングホイールの位置を手前側=ドライバー側に。いうのは簡単。ホントにやるとなると、たぶんホモロゲーションのための衝突試験はやり直し。だとすると社内の巨大コンピューターの使用枠を苦労して何時間もおさえてのシミュレーションもまたやらないといけなくて、要はエラいことになる。
CVT。ソリオ ハイブリッドから乗り換えるにあたっては、これもちょっとした罰ゲーム気分。「でもゲーム性がゼロなんで、ただの罰!!」といったのは、博多華丸・大吉の大吉先生。
CVTモノの典型的な乗りにくさは、よく抑えてあるほうか出まくりかでいうと、よく抑えてあるほう……だと思う。どっちかといえば。いまどきの一番重たい軽自動車(例えば「ダイハツ・ウェイク」のターボのヨンクは1060kg)と比べたらそれに毛が生えたぐらいの車重(1100kg)に対して、エンジン排気量は996ccもある。だからということなのか、ものすごく発進に気をつかうとか、なにげない優しい加速要求に対していきなりパオーン!! とか、そういうことは別になかった。あとそう、高速道路の下り坂で勝手に車速がどんどん……ということも。場合によってはエンジンブレーキも利いてくれたし。この感じ、「軽じゃないから」というだけでは説明がつかないっぽい。
それでも気になるCVTの弊害
フツーに運転していると、ターボっぽさはあまりない。でも、速く走らせるとターボっぽく速い。この排気量の自然吸気(NA)エンジンだとしたら説明がつかない感じ。つまりこれはいい話。日常的な使用領域で過給の応答おくれが気にならない。いわゆるNA領域のヒ弱さがない。少なくとも気にならない。そういうパワートレイン。
「やっぱりCVTはイイなあ!!」とは、しかし思えない。このテのホントにイイもの(そういうものがあるとして)を体験していないからそういうしかないのかもしれないけれど、この先どう頑張ってもせいぜいゼロ。その線を越えてプラスの側に印象メーターの針が振れることはない。そういう感じ。CVTはブレーキペダルの踏み応えにも悪さをする。踏力一定=G一定のブレーキはやりづらい。スタート&ストップ機構の介入というか仕事が運転しにくさにつながっているのも減点要素。まあ、それはスイッチをオフればいいのだけろうけど。
ターボだからか、アシがカタい。これに乗って最初の凸凹通過を体験すると、きっと多くの人がビックリする。ビシッ!! とくる。このへん(スルドいショック系の入力への対処)に関してソリオ ハイブリッドはいかにも日本仕様日本車チックなマイルド調だった。このトヨタはけっこう真逆で、使用人が贅沢を……ではなくて、商用車っぽい。いかにもサスペンションのブッシュあたりがクニャッとなっていそうな感じがない。最初のイッパツにこそビックリしても、むしろ頼れる感じのたくましさ……が、ありそうな。いまの「トヨタ・プロボックス」よりライトバン?
ライバルに負けない乗り心地
そしてすごく面白いことに、このクルマは乗り心地がイイ。ソリオ ハイブリッドととっかえひっかえ乗ったし、ソリオとサヨナラした翌日はソリオで走りにいった(そして乗り心地のよさを確認しつつ驚いた)のと同じイジワルな道でも試してみた。で、これ、そんなに負けてないじゃん!! 車内の楽しい会話がフッと途切れる感じがない感じの快適な乗り心地。ただ単にイイというだけではなくて、ソリオとこれ、乗り心地のよさのタイプがよく似ている。
それとこれ、シートが意外とヨイ。膝の上のモモの裏っかわのところがミョーにボコッと盛り上がってるような感じで第一印象はイマイチだったけど、ソリオと違って臀部(でんぶ)にストレスがこない。ギュッとミが詰まったこの感じ、クッションのウレタンの発泡率を上げまくって軽量化とかコストダウン……とかの方面をおそらくあまりやっていない。だから座ってしばらくかもっとしてもヘニョッとならない。それもコミでいうなら、乗り心地はソリオよりもむしろ快適なぐらい。あるいは、疲れにくい。運転していて気持ちがダラッとならない。なりにくい。
運転のしにくさが改善されれば
ビシッと系の入力はビシッとある。ライトバン的なたくましさ……っぽいなにか。なのにというか、ハンドルをソーッと動かし始めると、それとほぼ同時にロールがグラッ。そこはというかそこも、ソリオとソックリ。そんなところまで徹底マークせんでよろしい。あと真っすぐ関係は、冷えきった状態からスタートしてしばらくすると、まあフツーになる。そうなる前は、例えば高速道路とかを走っていて路面が傾いていると、斜面の低い方へツーッと流れ気味になる。もっていかれる感じ。おそらくバランス上、ダンパーの伸び側の減衰が強すぎる。縮んで、そのあと伸びにくい。ある程度の時間走ってなかのオイルが冷えきり状態を脱すると、それがまあフツーになる。ということではあるまいか。電動パワステの感じは、ソリオ比ちょい落ち。こんなもんといえばこんなもん。よくないといえばよくない。ソリオのだって、特にほめられるようなものでは全然ない。
フツーに常識で考えて、このクルマの商品企画はソリオ徹底マーク。「意識はしなかった」とか、よくゆーよ(笑)。※個人の感想です。諸般の都合により徹底マークしきれなかったところもあるなかで、でも乗り心地のよさの部分はなんとしても。そういうのがもしあったのだとしたら、それはすごくいい。そんなのカンケーなしにいい乗り心地にしようとしてこうなったなら、もちろんそれでも全然いい。ひょっとして、これもダンパー、KYBだったりして(※未確認です)。
ごくごく簡単な話、運転しやすくて快適だったらクルマはそれでいい。取りあえず乗り心地はここまでできたとして、あとはそれに負けないぐらい運転しやすくなってくれ。もっと運転しやすくなってくれても全然オッケー大歓迎。でキミ、そういえば、車名はなんだっけ? タンクですかそうですか。
(文=森 慶太/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・タンク カスタムG-T
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3715×1670×1735mm
ホイールベース:2490mm
車重:1100kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:98ps(72kW)/6000rpm
最大トルク:14.3kgm(140Nm)/2400-4000rpm
タイヤ:(前)175/55R15 77V/(後)175/55R15 77V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:21.8km/リッター(JC08モード)
価格:196万5600円/テスト車=249万8364円
オプション装備:ボディーカラー<ブラックマイカメタリック×マゼンタベリーマイカメタリック塗装>(5万4000円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>&SRSカーテンシールドエアバッグ<前後席>(4万9680円)/パノラミックビュー<ステアリングスイッチ[オーディオ操作]付き>(4万5360円)/イルミネーションパッケージ(1万6200円)/コンフォートパッケージ(2万2680円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビ9インチモデル DCMパッケージ(28万5444円)/ETC2.0ユニット<ビルトイン>ナビ連動タイプ(3万2400円)/フロアマット<デラックスタイプ>(2万7000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1491km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:473.7km
使用燃料:30.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.5km/リッター(満タン法)/15.0km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

森 慶太
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】 2026.10.21 MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
NEW
「ミッションS」だけではない? 2035年に向けたポルシェの新戦略を探る
2026.10.28デイリーコラムポルシェは2026年10月7日、新中期戦略「Sportwagenschmiede'35」を発表した。新型パワーユニット搭載の「ミッションS」をはじめとするニューモデルで、経営状態の立て直しを目指す。その注目すべき内容を詳しく解説する。 -
NEW
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】
2026.10.28試乗記「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。 -
NEW
第134回:アウディデザイン水掛け論 ―これが未来のアウディか? 「ヌヴォラーリ」と他のモデルに見る不整合―
2026.10.28カーデザイン曼荼羅微妙に迷いが見えていたアウディのデザインに、新しい潮流が? これまでとは異なるモチーフが取り入れられた「ヌヴォラーリ」の造形は、次世代のフォーシルバーリングスを指し示すものなのか? カーデザインの識者と、アウディデザインの未来について考えた。 -
NEW
第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
2026.10.27エディターから一言フルモデルチェンジした「メルセデス・ベンツCLA」の中でも本命とされるのが「CLA with EQテクノロジー」。新世代EVをアピールするメーカーのうたい文句は本当なのか、北海道で1000km乗って確かめた。 -
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】
2026.10.27試乗記ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。 -
「乗り物酔いしやすいクルマ」と「酔いにくいクルマ」の違いは?
2026.10.27あの多田哲哉のクルマQ&A乗り物酔いしやすい同乗者がいると、ドライバーは運転に気を使う。では、クルマの側にはその要因はないのだろうか? 「酔いやすいクルマ」を見極めるポイントを、車両開発者の多田哲哉さんに聞いた。
















































