第401回:“ランボ復活”の再現なるか?
アウディ スポーツのヴィンケルマンCEOが戦略を語る
2017.04.08
エディターから一言
拡大 |
アウディのハイパフォーマンスブランドとして今絶賛売り出し中のアウディ スポーツ。そのCEOを務めるステファン・ヴィンケルマン氏が来日した。彼が昨年(2016年)までランボルギーニのCEOとして手腕を振るい、大きな成果を残したことは記憶に新しいが、今回はアウディ スポーツの代表として初来日。メディア向けにグループインタビューが実施された。ヴィンケルマン氏が語るアウディ スポーツの戦略についてお伝えしよう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ランボルギーニ復活に続いて課せられた“大仕事”
――11年以上もの長きにわたり在籍したランボルギーニを離れ、昨年アウディ スポーツのCEOとなったわけですが、当時はどのような心境でしたか?
ステファン・ヴィンケルマン氏(以下、ヴィンケルマン):友人でもある同僚たちと心から愛するランボルギーニを離れることは、とても寂しいことでした。長い時間を共にした、信頼できるチームとお別れしなくてはならなかったのですから。ただ、人生には時にそういった変化は必要だし、新しいチャレンジをするのも悪くないことだと考えるようにしました。実際にアウディ スポーツに移ってみると、非常に素晴らしいメンバーがそろい、その誰もが情熱を持って仕事をしていることがすぐにわかりました。本当にいいクルマを作っていることがすぐに理解できました。
――就任後、クワトロ社は名称をアウディ スポーツ社と改めました。新たなスタートを切った新会社アウディ スポーツと、そのCEOに課せられた使命をどのように考えていますか?
ヴィンケルマン:今回の社名変更は絶対に必要なことでした。というのも、クワトロはあくまでオプション、つまり選択されるものであり、必ずしもすべてのモデルのUSP(Unique Selling Proposition)だったとはいえないからです。それに対してアウディ スポーツは、アウディのスポーティーなものすべてを含んだ象徴的な存在とし、ロゴもインパクトのある赤としました。これによりアウディ スポーツが扱う商品とブランドがしっかりとマッチするようになりました。
今、われわれに課せられていることは、できるだけ早くアウディ スポーツの認知度を高めること。クワトロ時代は、商品を宣伝するだけでブランドのプロモーションはあまりやっていませんでした。本来ブランドとは、ラインナップすべての価値を示す存在です。ですから、その認知度を高め、ブランドを盛り上げることは非常に大切です。もちろん新モデルや商品の開発は行っていきますが、まずはアウディ スポーツ自体を盛り上げることが大切だと考えています。
グローバル市場で伸長するためのSUVシフト
――アウディ スポーツの新戦略として、「特別感」「SUVへのシフト」「ハイパフォーマンススポーツ」の3点を掲げていますが、これはどのような意味なのでしょうか?
ヴィンケルマン:今、スポーツカーのセグメントは、2つに分かれています。ひとつはエクストリームなスーパースポーツカー、つまり時々しか乗らないが、すごくスポーティーでハンドリングも良い、いわゆる趣味のクルマです。もうひとつがアウディ スポーツも属するハイパフォーマンスカーです。これはパフォーマンスが優れ、デザインもカッコ良いだけでなく、日常的に使用することもできる。そんなバランスの良いクルマを指します。ハイパフォーマンススポーツであることこそ、アウディ スポーツ成功のカギといえるでしょう。
とはいえ、アウディ スポーツが台数を伸ばすために、アウディの全車種にRSモデルを設定するわけではありません。それよりも特別感を演出するためには、どのセグメントにRSモデルを投入すべきかしっかり選択をしなくてはなりません。重要なことは、需要の大きいセグメントだけではなく、全世界に満遍なくニーズのあるセグメントにも参入することであり、その選択がSUVへのシフトなのです。今、欧州ではアウディ スポーツはすごく人気があり、販売も好調ですが、欧州以外ではまだまだです。したがって、今までとはアプローチの方法を変えたいと考えています。
――アウディ スポーツがライバル視するブランドはどこでしょうか。またライバルに対するアウディ スポーツの強みとは?
ヴィンケルマン:ご存じの通り、ドイツのプレミアムブランドは、アウディ以外に2つ存在しており、それらが競合相手となります。しかし、われわれが比較するのは、私たち自身であり、よそ見はしません。なぜなら、私たちにはこういう方向に進みたいという明確な戦略があるからです。
そして競合に対する強みですが、それはお客さま次第ともいえます。ただ、私が実際に乗った経験や、作る立場からいえるのは、アウディ スポーツが最もパフォーマンス、デザイン、そして使い勝手まで完璧なバランスが取れているということです。そこが最大の強みといえるでしょう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本のユーザーはエクストリームなクルマがお好き
――日本市場や日本の顧客をどのように見ていらっしゃいますか?
ヴィンケルマン:日本はアウディ スポーツにとって、世界で7番目の市場となっています。ただ重要なのは、市場そのものではなく一人ひとりのお客さまです。もちろん新たなディーラーを出店するかなど、ビジネス的な判断においてはマーケットのサイズは重要ですが、それよりも私たちにとって大切なのは、個々のお客さまなのです。
また、私どものお客さまは、アメリカであろうと日本であろうと(クルマに関して)同じような志と情熱を持っており、そういった意味でもマーケットによる違いはありません。したがって、私たちは仕向け地に合わせて仕様を変えるのではなく、本国で作っているオリジナルのものを提供しています。それがまさにお客さまの望むものだからです。
日本市場については、前職であるランボルギーニでの経験から、お客さまはスポーティーな志向が強く、スポーティーなブランドをとても好み、特にトップブランドは熱狂的な人気があるという印象があります。実際、ランボルギーニは日本で好調ですよね。もちろん、ランボルギーニとアウディ スポーツは異なるブランドですが、最大の違いは、日常使いができることでしょう。つまり、乗っていて快適で安全水準も高い。それに加えて、アウディ スポーツはご家族と共に乗っていただくこともできます。今年から来年にかけて新型モデルを多数投入していきますので、認知度を高め、台数も増やしていけるだろうと期待しています。もちろん、今後登場する新型モデルは日本のお客さまにも必ず気に入ってもらえると信じていますよ。
――昨今話題の自動運転ですが、アウディも積極的に取り組まれていますね。アウディ スポーツでは、独自の取り組みを進めているのでしょうか?
ヴィンケルマン:自動運転化を検討する最後のブランドがアウディ スポーツだと考えています。もちろん、それに準じる技術の投入は良いことだと思います。アウディ スポーツは高い安全性を備え、日常使いができる非常にバランスのとれたモデルです。ですから、渋滞時の追従支援機能などは有益だと考えますが、やはり「走りの楽しみ」は絶対に残していかないといけません。少なくとも当面、自動運転とわれわれの間には非常に距離があるでしょう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
大切なのはユーザーをがっかりさせないこと
――世界耐久選手権(WEC)にハイブリッドのレーシングカーを投入し、今後は電気自動車(EV)レースのフォーミュラEに参戦するなど、アウディはモータースポーツにおいて、電動パワートレインに特に積極的なメーカーだと考えています。今後、電動パワートレインをアウディ スポーツに搭載する予定はあるのでしょうか?
ヴィンケルマン:もちろん、これからはスポーティネスと持続可能性を、必ず両立していかなくてはなりません。しかし、それがいつになるかは、各国の規制、そして皆さんの考え方がどう変わるかなどに左右されるでしょう。現段階では、いろいろなアイデアやプランがありますが、果たしてハイブリッドが良いのか、それともEVが良いのか、まだ検討を進めているところです。
ただ、どういう形にしても、「これが私たちの定義する新しいスポーティーさだ」ということを、お客さまにしっかりと説明できることが必要だと考えています。この「新しいスポーティーなクルマ」が、買ってくださったお客さまをがっかりさせることがあってはならないと認識しています。
2016年はグローバルで前年比+18%、日本市場単独ではそれを大きく上回る前年比+48%もの成長を見せたアウディ スポーツ。その出だしはまずまず好調といえるだろう。しかし、新生ランボルギーニの育ての親ともいえるヴィンケルマン氏の手腕が問われるのは、まだまだこれからのことである。今回の滞在では、日本のスタッフとのディスカッションに加え、ショールームのアウディ スポーツ店にも足を運んだという。このフットワークの軽さからも、彼のアウディ スポーツに向けた情熱を垣間見ることができる。彼がアウディ スポーツをどのようなブランドに育て上げるのか、ぜひ注目していきたい。
(文=大音安弘/写真=webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |

大音 安弘
-
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気 2026.1.15 日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。
-
第857回:ドイツの自動車業界は大丈夫? エンジニア多田哲哉が、現地再訪で大いにショックを受けたこと 2026.1.14 かつてトヨタの技術者としてさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さん。現役時代の思い出が詰まったドイツに再び足を運んでみると、そこには予想もしなかった変化が……。自動車先進国の今をリポートする。
-
第856回:「断トツ」の氷上性能が進化 冬の北海道でブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」を試す 2025.12.19 2025年7月に登場したブリヂストンの「ブリザックWZ-1」は、降雪地域で圧倒的な支持を得てきた「VRX3」の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて進化したその実力を確かめるべく、冬の北海道・旭川に飛んだ。
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。













































