第409回:「アウディQ2」のデザイナー
若者が求める“クルマ像”を語る
2017.05.08
エディターから一言
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アウディのコンパクトSUV「Q2」の発売に伴い、同車のデザイナーを務めたマティアス・フィンク氏が来日。同車がターゲットとしている、若者が求める“クルマ像”とはどのようなものなのか、自身も30代という若手デザイナーが語った。
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仕事も趣味も1台のクルマでこなしたい
――若いユーザーをターゲットとしてデザインしたといいますが、具体的にはどんなライフスタイル層をイメージしましたか?
マティアス・フィンク氏(以下、フィンク):若い世代のポジティブでエネルギッシュな人たちを想定しました。何か制約されることなく、自由に生きたいという人たちです。そこでQ2は、とても敏しょうでスポーティー、それでいて使いやすくてスタイリッシュなデザインを目指しました。
――若者はクルマに何を求めていると考えましたか?
フィンク:若者は2台目、3台目のクルマを持たず、仕事も趣味もすべて1台のクルマでまかないたいと考えています。上の世代のようにスポーツカーやオープンカー、SUVを目的によって乗り分けるのではなく、すべてを1台で済ませたいのです。だから、街乗りするんだったら駐車スペースのことを考えて全長は短くしたいし、スポーティーできびきび乗りたいから車幅はある程度ワイドにしたい。山にハイキングに行くなら、室内のスペースも確保したい……ということで、とにかく全部をまかなえるようなクルマをデザインしました。
実際、このQ2は「Q3」に比べて全長は短いのですが、それでも地上高はちゃんと確保していますし、室内のスペースも十分です。いってみれば、いろんなクルマのいいとこ取りをしたクルマがQ2であり、そういった意味では若い人にはぴったりの、完璧なクルマだと思います。
イメージは“上流の尖った石”
――フィンクさん自身も、このクルマのターゲットですよね?
フィンク:プロジェクトが始まったときには30歳で、いま35歳。まさにターゲット世代のド真ん中の年齢です。私は釣りが好きで、休日には釣りに行くことが多いので、ある程度大きいラゲッジスペースが必要ですし、ある程度の地上高もほしい。一方、普段は街中で過ごすことが多く、仕事が終わってミュンヘンのアパートに帰ると、駐車スペースを探すのに時間がかかります。街中でも駐(と)めやすい、全長の短いクルマにしたかった。また、クルマは自分自身を表現するものだと思うので、ちゃんとしたスタイルにもこだわりました。
――そのために「ポリゴンデザイン」を採用したということですか?
フィンク:ダイヤモンドみたいに角がたくさんあると、面とエッジのコントラストがすごく強く出るので、若い人にはぴったりだなと思ってこのポリゴンデザインを採用しました。「ポリゴン」という言葉は古代ギリシア語に由来するもので、“ポリ”は多い、“ゴン”がエッジ、角があるという意味です。つまり、幾何学的な模様で、たくさん角があるものを指します。
Q2のデザインは上流の河原にある石です。川はよく人生になぞらえられます。最初があって終わりがある。石は人間にあたるもので、流れている時間が長くなればなるほど石も人間も丸くなりますよね。上流にある石はまだ若いので、個性が強くて尖(とが)っています。そんなイメージでQ2をデザインしました。
便利ですぐに使えることが求められる
――Q2にはエクステリアのアクセントとしてブレード(Cピラーを飾る装飾パネル)が加えられましたが、フィンクさんのお気に入りの色の組み合わせは?
フィンク:個性を強調したければCピラーを明るい色で目立たせるというのがいいでしょう。私自身は、モノトーンの洋服を好んで着るくらいなので、濃い色のブレード、黒のクルマにカーボンやダークグレーの組み合わせが好きです。サイドウィンドウが暗いので、この組み合わせだとルーフが浮いて見えるという効果もあります。
――若者のライフスタイルに合わせるために、クルマ以外からヒントを得るものはありましたか?
フィンク:いまの若者はコンピューターを使わずにスマートフォンですべてを済ませるという世代の人たち。便利ですぐに使えるということをクルマにも求めていると思うので、Q2もそれを意識しました。また、Q2にはクールな機能として、「Audi connect」によってクルマに乗りながらチャットをしたり、Facebookをチェックしたり、eメールを送ったりと、インターネットにリアルタイムでつながっていられるコネクテッド機能が備わっています。他にもいろいろな機能があり、4つのホイールが付いているのでクルマではありますが、これまでのクルマ以上のものを提供しています。
――Q2のデザインが他の「Qファミリー」に及ぼす影響は?
フィンク:若い世代に向けたポリゴンデザイン自体はQ2独自のもので、これを他のQファミリーに採用するつもりはありません。しかし、Q2の中にあるデザイン要素で、これから出てくるQファミリーに採用されるものがいくつかあります。例えば、シングルフレームグリル。Q2では一番下の部分に角がついていますし、フレームはクロームではなくアルミを採用しました。それによってより力強く迫力のある雰囲気を出しています。これがこれからのQファミリーに採用されます。また、Cピラーは、わりと幅があり、ホイールのすぐ上に配置することでどっしりとホイールに座っている感じを与えています。このやり方は、多少形は違ってくると思いますが、Q2よりも大きなモデルにも採用していきます。
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新しいけど、確かにアウディ
――Qファミリー用として登場したQ3や「Q7」のシングルフレームグリルが、このQ2で再び改められた理由は?
フィンク:クルマの開発は必ずしも1本のラインで行くわけではなく、分岐することもあります。変化の過程では2つの違うデザインが存在するのはありえるのです。Q2のシングルフレームグリルは、Q3やQ7とは違うデザインになりましたが、今後のQファミリーはQ2の方向で行く予定です。
――新しいデザインとこれまでのデザインをどのように融合していくのですか?
フィンク:これまでのアウディのデザインはやや控えめな印象がありましたが、今回は新しい、若いお客さま層に訴えたいということから、そのボーダーを越えるのがチャレンジでした。アウディが持っているバリューはすべて入っていますので、ひとめ見てアウディとわかるデザインに仕上がっていると思います。それと同時に、昔のアウディのモデルの特徴も一部取り込んでいます。例えば、初代「TT」のように、キャビンとボディーにソフトコネクションのないCピラーを使ってみたり、Cピラー自体が1980年代の「アウディ・クワトロ」をオマージュするデザインとなっています。
アウディらしいいろいろな要素は入っているのですが、それをフレッシュな新しい形で採り入れています。いままでとは違うデザインには見えますが、100%アウディです。
(文=生方 聡/写真=webCG/編集=堀田剛資)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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