第429回:「ジャガーEペース」が華々しくデビュー
ロンドンで開催されたワールドプレミアイベントに参加して
2017.08.07
エディターから一言
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英ジャガー・ランドローバーは去る7月、新型コンパクトSUV「ジャガーEペース」のワールドプレミアイベントをロンドンで開催した。会場には大勢のセレブが駆けつけたほか、女性ボーカリストによるライブが催されるなど華々しいものとなった。その模様をリポートする。
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スポーティーなエクステリア
名称そのものが「Fペース」の弟分であることを示唆する、ブランニューモデルのEペース。かねて噂されていたジャガーの新SUVが、かつては英国モーターショーも開催されたロンドン東部のコンベンションセンター、エクセルロンドンで、去る7月13日に華々しく発表された。
ジャガー自らが“コンパクトパフォーマンスSUV”とキャラクターを紹介するこのモデルは、直近では前年度比で80%以上の増と報告される世界販売台数に貢献をした初のSUVであるFペースに続き、このブランドのさらなる飛躍に寄与することを期待されるもの。ちなみにジャガーでは、2018年の生産開始が発表されている電気自動車「Iペース」を含めたこれら3タイプのSUVを、“ペースファミリー”と称している。
世界から訪れた多くのゲストを前に発表会の舞台上に用意されたEペースは、薄いベールをかぶせられた状態でも“スポーツカーメーカー”の作品にふさわしい流麗さが印象的。同時に、直立した逆台形調楕円(だえん)のグリルや絞り込みの強いキャビン後端、強い傾斜が与えられたリアウィンドウなどが、ジャガーブランドとしてのDNAを強くほうふつとさせるプロポーションの持ち主だ。
実際、いよいよアンベールをされてみれば、そんな事前の印象は見事に的中。SUVらしく逞(たくま)しいロワーボディーの造形に対して、躍動感に富んだアッパーボディー部分の仕上がりは、まさに「4ドアクーペのそれ」と表現しても過言ではないもの。一見してジャガーの家族であることが明白な、そこに織り込まれた“スポーツカーらしさ”は、兄貴分であるFペースに勝るとも劣らない。
Fペースよりコンパクト
装着タイヤの違いによって、空気抵抗係数:Cd値が0.325~0.36と発表されたそのボディーは、全長が4395mmでホイールベースが2681mmという大きさ。同じ欧州データで表されるFペースのそれは4746mmと2874mmなので、この部分では確かに「コンパクト」という表現が的を射ている。
一方、微妙なのは幅方向で、“wingmirrors folded”すなわちドアミラー折り畳み状態での値は1984mm。ただし、これは文字通り「折りたたんだミラー端からミラー端まで」の値で、ミラーそのものを計測から外す日本の審査値とは異なる数字ということになる。
「現時点ではまだ認証前のため、日本仕様の全幅は“不明”」というのが、インポーターであるジャガー・ランドローバー・ジャパンによるこの稿執筆時点での公式見解。ちなみに、日本での全幅は1935mmと表現されるFペースの”wingmirrors folded”の値は、2070mmというデータ。いずれにしても、日本での使い勝手を考えれば、日本式表記で何とか1.8m台半ば程度までに収まっていることを期待したい。
全高は1649mmで、こちらはFペースに対してわずかな差。しかし、ルーフスポイラーにまで長く水平近くに伸びたルーフラインが「より後ろ下がり」に見えるのは、サイドウィンドウのグラフィック上端が、急傾斜のリアウィンドウへと向かって強くドロップしていることによる視覚的効果が大きそうだ。
後方へと引かれたヘッドライトの造形や、光の水平ラインが途中で下方へと折れ曲がったテールライトなども含め、デザインダイレクターであるイアン・カラム氏が語る「スポーツカーからのインスピレーション」が、具体的にはやはり自身の作である「Fタイプ」を指していることは明らか。
同時に、昨今ポルシェを強く意識するこのブランドだが、Eペースもまたその例外ではないことも強く印象に残るルックスだ。
Fタイプへのオマージュがそこかしこに
そんなEペースのデザインが、Fタイプに対するオマージュに満ちていることは、そのインテリアの仕上がりを目にすればさらに明確だ。
これまでこのブランドの作品が好んで用いてきた、イグニッションオンとともにせり上がるロータリー式ではなく、あえてよりシンプルなレバー式とされたシフトセレクター。名門ライカ製のカメラレンズにインスピレーションを受けたと説明される、大きなダイヤル式の3連空調スイッチ。さらには、サイドのパッセンジャーゾーンとの間を視覚的にも明確に区切るダッシュボード上部からセンターコンソールにかけてのグリップハンドル状パーティションなどは、いずれもFタイプから譲り受けたモチーフ。
すなわち“Eペース”なる名称が与えられつつも、むしろFペース以上にFタイプとの関連性が強調されているのが、この新しいSUVなのだ。
そんなスポーティーテイストあふれるEペースには、専用造形のバンパーやボルスター部の深いシート、ブラッシングされたステンレス製ペダルや鮮やかな色彩を用いたコントラストステッチなどを採用し、それをさらに強調する“Rダイナミックデザイン”なるオプションパッケージも用意される。
Fペースよりもコンパクトであると同時に、「よりスポーティーであること」も全身でアピールするというのが、Eペースの重要な狙いどころであるわけだ。
2リッター直4のみでFF仕様も
かくも見た目上でFタイプとの関連性を強調するEペースだが、一方でFペースとの対比も含めて、そこに採用されたさまざまなハードウエアは大きく異なっている。
最も象徴的なのは、Eペースに搭載されるエンジンは“インジニウム”を称する最新の2リッター4気筒ユニットに限定され、しかも9段ATもしくは6段MTとの組み合わされるそれが、横置きで搭載されていること。すなわちEペースは、現在のジャガーラインナップの中にあっては唯一となるFFレイアウトベースのモデル。実際、最もベーシックなディーゼルグレードの2WD仕様では、その駆動輪は前輪となる。
ボディー骨格はスチールやアルミニウム、さらには複合材などが適材適所で用いられ、軽量さと同時に強靱(きょうじん)であることが特徴。ルーフやテールゲート、フロントフードなど「高い場所」に位置する素材をスチールからアルミへと置き換えることで重心の低下に配慮しているのは、“スポーツカーメーカー”としての意地が垣間見える。
インテグラルリンク式のリアサスペンションなど、「Eペースのために特別に開発された」と紹介されるシャシーコンポーネンツには、やはりアルミ材を多用。例えば、フロントサスペンションのナックルは中空キャストアルミ製で、4つのドライブモードが選択可能な電子制御式可変減衰力ダンパーを主役とした“アダプティブダイナミクス”は、オプション設定とされている。
シリーズ最強の300psの最高出力を発するガソリンエンジン搭載モデルと、同じく240psを発するディーゼルエンジン搭載モデルに標準採用される“アクティブドライブライン”がうたわれる4WDシステムは、湿式多板クラッチを活用した電子制御式。定常走行時には前2輪駆動となって燃費の向上を図る一方で、走行状況によって瞬時に後輪にトルクを伝達。「低ミュー路上ではパワーオーバーステア状態を維持することが可能」とするなど、構造上では前輪駆動ベースでありつつも、後輪駆動ライクな挙動が意図されているのもジャガーの作品らしい一面だ。
さらに、ブレーキベースのベクタリングシステムや、滑りやすい路面上でも容易なドライビングを実現させる低速クルーズコントロールシステム“ASPC”など、ジャガー車でありつつもそれなりに高いオフロード性能の確保が意図されているのは、このブランドがランドローバー社と“一心同体”の関係にあることを想起させられる部分。例えば、「水深500mmまでは走行可能」と渡河性能までがうたわれるのは、ライバルブランドでは考えられないことだ。
驚きのパフォーマンスを披露!?
そんなEペースに設定されたエンジンは、現時点ではガソリン2種とディーゼル3種の計5種類。前述のようにすべてが2リッターの4気筒で、いずれもオールアルミ製のユニットにはターボチャージャーがアドオンされる。
最高のパフォーマンスを発揮する300psのガソリンモデルでは、0-100km/h加速を6.4秒でクリア。その最高速は243km/hと発表されるから、なるほど「SUVのスポーツカー」を名乗るにも資質十分という印象。多機能を誇るマルチメディアシステムやステレオカメラを用いた歩行者検知機能付きの緊急ブレーキシステムなど、最新モデルにふさわしい充実した装備類も、当然のように用意される。
実は今回の発表会では、150台を超えるプロトタイプが4大陸25カ月で実施した過酷なプログラムの“最後のテスト”として、270度の回転を行いながらジャンプを行う“バレルロール”の披露が予定されていたという。
が、「昨今のセキュリティー面での事情等も鑑み」という理由から会場での実演は見送られ、事前に収録された成功シーンのビデオ上映のみに変更されたのは、はるばる日本から訪れた身にとってはちょっと残念ではあった。
とはいえ、集まったゲストを騒然とさせたそのシーンを筆頭に、会場でも放映されたさまざまな走りの姿に、Eペースの持つ高いダイナミクス性能への期待は高まるばかり。「2017年冬に開始」とされる発売が、いよいよ楽しみになるジャガー期待の最新作である。
(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー/編集=竹下元太郎)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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