ジャガーEペースR-DYNAMIC HSE P250(4WD/9AT)
カタチだけがSUV 2018.06.06 試乗記 “ベイビージャガー”を名乗る、ジャガーのコンパクトSUV「Eペース」に試乗。ボディーの内外に同門のピュアスポーツカー「Fタイプ」の面影を強く感じさせるブランニューモデルは、どんなクルマに仕上がっているのだろうか。ジャガーのSUVには強みがある
「Fペース」に続くジャガーSUV第2弾が、Eペースである。ポジション的にはFペースの弟分で、日本仕様は4WDのみだが、ランドローバーの「レンジローバー イヴォーク」「ディスカバリー スポーツ」と同じFFプラットフォーム(車台)を採用する。
ポルシェにおける「カイエン」「マカン」の成功に続けとばかり、ロールス・ロイスまでSUVに手を染める時代になった。そんななか、ジャガーSUVの強みは、SUVひとすじ70年のランドローバーがバックについている、ということだろう。
ボディー全長はFペースより33cm、ホイールベースでは10cm短い。Fペースのガソリンエンジンは3リッターV6スーパーチャージャーだが、Eペースはジャガー・ランドローバーの新しい2リッター4気筒ターボ。クリーンディーゼルは、Fペースと同じ2リッター4気筒ターボを搭載する。
今回試乗したのは、ガソリンの「R-DYNAMIC HSE P250」。ガソリンモデルには、249psと300psの2モデルが用意されるが、これは控えめなほうの最上級モデルで、価格は697万円。試乗車はさらに加えて総額300万円を超えるオプションを備えていた。
コックピットはFタイプにそっくり
イギリスのメディアでは「ベイビージャガー」なんていう形容も使われているが、Eペースは決して小さくない。4410mmの全長は「マツダCX-5」より14cm短いが、1900mmの全幅が効いている。大きなホイールハウスには、20インチホイール+245/45の「ピレリPゼロ」というハイカロリーなフットギアがぎっしり収まる。フロントグリルや上屋の側面観に「Fタイプ クーペ」の面影がある5ドアボディーは、筋骨隆々という感じだ。
コックピットは、スポーツカーのFタイプそっくりである。ドライバーを囲むようなセンターパネルの造形や、スティック型ATセレクターや、10時と2時の位置に親指が載せられるステアリングホイールはFタイプと同じ。Fタイプと共通性を持たせるなら、車格的にも車名的にもFペースのほうが辻褄(つじつま)が合うはずだが、走りだすと、コックピットの雰囲気との辻褄は合っていた。SUVとは、ご存じ“スポーツ・ユーティリティー・ヴィークル”の頭文字だが、このクルマのSはスポーツというよりも、ずばり“スポーツカー”のSである。
Eペースは、17インチホイールを履く400万円台の最廉価グレードからスポーツサスペンションを標準装備する。試乗車は20インチということもあり、乗り心地はズシンと重く、硬い。パワーステアリングもかなり重い。だが、鈍さはなく、ステアリングの反応はクイックでスポーティーだ。ポルシェ・マカンの3リッターモデルあたりよりもはるかに硬派なスポーツカー的だ。
速いけど燃費性能はいまひとつ
249psの2リッター4気筒ターボは、ジャガー・ランドローバーの新世代モジュラーエンジン、“インジニウム”ユニットである。
モノコックの80%がアルミ製といわれるFペースに対して、Eペースはスチールモノコックのため、ボディーは小さくても車重はそれほど変わらない。試乗車のR-DYNAMIC HSEは1910kg(車検証記載値)ある。
チカラはいかがなものかと思われたが、十分以上である。乗っていると、2リッター4気筒のコンパクトさを感じさせない。底力があり、回しても気持ちよく伸びる。ZF製9段ATも含めて、パワートレインは先日乗ったディスカバリー スポーツと同じである。あのクルマも十分、快速だったが、こちらは車重がさらに60kg軽い。速いはずだ。同じエンジンに複数のチューン違いをそろえるのはジャガー流だが、ガソリンEペースで300ps版を選ぶ“必要性”は薄いと思う。
100km/h時のエンジン回転数は、9速トップでわずか1500rpm。パドルを引くと、1800、2200、2500と、数百rpmずつ上昇する。まさにクロスレシオだ。高速域ではハイギアリングで燃料消費を抑えているはずだが、約400kmの燃費は7.2km/リッター(満タン法)にとどまる。このエンジンで燃費のよさに驚いたことはまだない。車重と快速ぶりを考えれば、仕方ないか。
“手動運転”が楽しい!
自動緊急ブレーキとレーンキープアシストは、Eペース全グレードに付く。HSEの下の「SE」からはアダプティブクルーズコントロールも標準装備される。
だが、ジャガー・ランドローバーの運転支援システムは、概していまひとつである。このクルマも、例えばレーンキープアシストは自動操舵の介入が唐突で、重いステアリングをグイッときる。街なかでは、「ゼンポウケイカイ!」という文字と警告音でブレーキを踏むよう促されることが何度かあったが、それはすべて「わかってるよ!」と言い返したくなるような余計なお世話システムだった。チューニングの詰めが甘いのだ。
そんな弱点もあるが、それも許せた。スポーツカーのFタイプと同じく、このクルマも手動運転が楽しい。硬派のリアルスポーツカーをSUV型で実現したようなキャラクターがEペースの持ち味である。
ビジュアル系のレンジローバー イヴォーク、本家「レンジローバー」をサイズダウンしたようなディスカバリー スポーツ、そしてスポーツカー丸だしのEペース。車台とパワートレインを共用するジャガー・ランドローバーのサブコンパクトSUV三兄弟は、それぞれぶりがおもしろい。
ただ、ジャガーのSUVにここまでの“硬さ”は期待しないという人もいるだろう。悪路踏破性で選ぶなら、ディスカバリー スポーツがある。もっと気楽に普段使いができるEペース。FFモデルにそんな仕様があれば、ぜひ日本にも入れてもらいたい。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ジャガーEペースR-DYNAMIC HSE P250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1900×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:249ps(183kW)/5500rpm
最大トルク:365Nm(37.2kgm)/1300-4500rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103Y/(後)245/45R20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.2km/リッター(JC08モード)
価格:697万円/テスト車=1010万2000円
オプション装備:プレミアムメタリックペイント<ファラロンブラック>(17万5000円)/パーフォレイテッドマーズレッドウィンザーレザースポーツシート(55万4000円)/エボニースエードクロスヘッドライニング(21万9000円)/電動18ウェイフロントシート<フロントシートヒーター&クーラー+リアシートヒーター>(41万5000円)/ルーフレール<グロスブラック>(7万3000円)/Meridianプレミアムサラウンドサウンドシステム(22万7000円)/コンフィギュアルインテリアムードランプ(5万6000円)/ストレージパーティションネット(2万4000円)/レッドブレーキキャリパー(6万1000円)/20インチ スタイル5051アロイホイール<5スプリットスポーク、グロスブラックフィニッシュ>/(4万4000円)/セキュアトラッカー(9万9000円)/デュアルビュースクリーン(12万7000円)/追加パワーソケット(3万3000円)/マトリクスフルLEDヘッドライト(14万円)/アクティビティーキー(6万5000円)/パノラミックルーフ(19万円)/デジタルTV(11万9000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万6000円)/コンフィギュラブルダイナミクス(0円)/ラゲッジスペースレール+リテンションキット(5万5000円)/プレミアムフロアマット(3万9000円)/プライバシーガラス(6万7000円)/イオン空気清浄テクノロジー(2万1000円)/スマートフォンパック(3万8000円)/コールドクライメイトパック(9万5000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:3286km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:401.8km
使用燃料:55.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.2km/リッター(満タン法)/8.1km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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