アウディ、ふたつのEVから最新スポーツモデルまで【フランクフルトショー2011】
2011.09.15 自動車ニュース【フランクフルトショー2011】アウディ、ふたつのEVから最新スポーツモデルまで
突如現れた宇宙船のような建物……。そんな印象で見る者を驚かせるアウディスタンドは、その中身もユニークだった。
■独り立ち
これまでアウディは、フォルクスワーゲングループの一員としてホール3(1階)のスペースを共有していたが、今回からホール3の目の前にパビリオンを仮設して“独り立ち”した。
2階建てのホールには、ステージ、展示スペース、ショップ、ミーティングルーム、レストランのほか、「A1 e-tron」「A3 e-tron」といったEVや、「R8 GTスパイダー」「TT RS ロードスター」などのハイパフォーマンスモデルに同乗試乗できるコースなども用意されており、仮設とは信じがたいクオリティと内容で来場者を迎えてくれる。好調なアウディ、この辺にも飛ぶ鳥を落とすいまの勢いが感じられる。
さて、コンセプトカーとして登場したのは、いずれも近未来のEV社会を想定したシティコミューターだ。「アウディ・アーバンコンセプト」は、全長×全幅×全高=3219×1678×1189mmという非常にコンパクトなEV。ボディとホイールハウスが分離されたスタイルが特徴で、クローズドボディとロードスターのふたつが用意されており、前者はキャノピーをスライドさせ、また後者はドアを跳ね上げてキャビンにアクセスする。キャビンには2人分のシートが設けられるが、ふたつのシートを前後に30cmオフセットして設置、スリムなキャビンを快適に使う工夫が凝らされている。
軽量化を図るために、ボディはカーボン素材でつくられた。おかげで車両重量はわずか480kg! 一方、キャビンではメーターまわりにアルミが多用されて、レーシングカーのような雰囲気にまとめ上げられている。アーバンコンセプトのデザインは、1930年代の「アウトウニオン」のレーシングカーを現代によみがえらせたものだというから、このインテリアも辻褄(つじつま)があう。
さらに後輪駆動を採用するのもレーシングカーばりだが、ガソリンエンジンの代わりに電気モーターを搭載して、21インチタイヤを20psのふたつのモーターで直接駆動するのがEVらしいところ。7.1kWhのリチウムイオンバッテリーはシートの背後に配置される。航続距離が73km、0-100km/h加速は16.9秒の実力。なお最高速度は100km/hに制限されている。
充電に要する時間は、400Vの三相電源なら約20分、230Vの家庭用コンセントなら約1時間。非接触式の充電に対応し、プラグをつなぐことなく手軽に充電できるのも魅力のひとつだ。
■本命はEV? それとも内燃機関?
もうひとつのEVが「アウディA2コンセプト」。「A2」といえば、オールアルミ製ボディを採用したプレミアムコンパクトカーとして知られるアウディの名車。日本では馴染みが薄いが、あのエポックメイキングなモデル名が復活したのだ。
全長×全幅×全高=3804×1693×1494mmのボディは、アウディのエントリーモデル「A1」よりもさらにコンパクト。サイズに限ればA1とA2との上下関係が逆転してしまうことになる。アウディ アーバンコンセプトと違って、ボディは5ドアハッチバックスタイルで、また、キャビンには4人分のシートが確保されるなど、あくまで現在のクルマの延長線上にあるが、新しい試みも随所に盛り込まれている。
たとえば、機械的な結合のない操作系、つまり“バイワイヤ”技術を採用したのもそのひとつ。アクセルペダルはいうまでもなく、ステアリングやブレーキにもバイワイヤを用いている。ボディにはアウディの「ウルトラライト」構造を採用。アルミやカーボンなど、さまざまな素材により、軽量化と高剛性ボディを両立させる。車両重量は1150kg。
デザインにも新しさが光る。ボディサイドを前後に貫くLEDの帯(“ダイナミックライト”と呼ばれる)が方向指示器やブレーキランプの役割を表情豊かに担う。広大なグラスルーフは電気的に光の透過量が調節できる機能を備えている。
パワートレインには最高出力116psのモーターを採用し、前輪を駆動。31kWhのリチウムイオンバッテリーはサンドイッチ構造のフロアに格納する。航続距離は200km、0-100km/h加速は9.3秒をマークする。最高速は150km/hだ。バッテリーの格納方法を除けば、そのまま内燃機関が搭載できることを考えると、A2の本命はEVではなく、内燃機関と予想される。いずれにしても再デビューが楽しみなモデルである。
■Sモデルも一挙登場!
アウディスタンドにはこれらEVのコンセプトカーに加えて、最新モデルも目白押しだ。なかでも注目したいのが、「S8」「S7」「S6」というラグジュアリーなスポーツモデル。以前このクラスには5.2リッターV10エンジンが搭載されていたが、スポーツモデルでもダウンサイジングを進めるアウディは、エンジンを新開発の4リッターV8ツインターボに変更。最高出力はS6とS7が420ps、S8が520psを誇るが、通常走行時などあまりパワーを必要としない状況下で、8気筒のうち4気筒を休止させる“シリンダー・オンデマンド”を採用することで、従来比で20%以上の低燃費化を図った。
このほかにも、A8ハイブリッドやマイナーチェンジしたA5シリーズなど、見どころは盛りだくさん。それだけにフロアに展示車両を詰め込みすぎた感じもあるが、アウディワールドにどっぷりと浸りたい人には格好の空間といえそうだ。
(文と写真=生方聡)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
関連キーワード:
アウディ,
フランクフルトモーターショー2011,
イベント,
電気自動車(EV), 自動車ニュース
-
NEW
キャデラック・リリック
2021.4.22画像・写真GMが新型電気自動車「キャデラック・リリック」を発表。SUVタイプのEVで、フロントグリルのイルミネーションや33インチの大型LEDディスプレイなど、内外装の意匠・装備も話題となっている。キャデラック初の量産EVの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
ホンダ・ヴェゼル
2021.4.22画像・写真ホンダのクロスオーバーSUV「ヴェゼル」がフルモデルチェンジ。2014年の発売から累計で45万台を売り上げたというベストセラーモデルは、一体どんな進化を遂げているのか。よりクーペらしさを増した外装と、飛躍的に上質感が増した内装を写真で詳しく紹介する。 -
NEW
第703回:絵画も音楽も自動車も 進化の原動力は“見せびらかし”だ!
2021.4.22マッキナ あらモーダ!クルマや芸術はこれまでどのように進化してきたのだろうか。少なくとも欧州においてその原動力は見せびらかすためであった、大矢アキオはそう考えている。自動車を所有しない時代、すなわち高度に共有化が進んだ社会でも、この力は働くのだろうか。 -
NEW
マツダMX-30 EVモデル ハイエストセット(後編)
2021.4.22谷口信輝の新車試乗新型クロスオーバー「マツダMX-30 EVモデル」に谷口信輝が試乗。ワインディングロードを走らせてみると、マツダのクルマづくりにも関わる、ある懸念が浮かんでくるという。それは一体どのようなことなのか? -
アウディA3/S3
2021.4.21画像・写真アウディ ジャパンは2021年4月21日、「アウディA3シリーズ」をフルモデルチェンジし、東京・渋谷において実車を初披露した。会場に展示された導入記念の特別仕様車「A3ファーストエディション」と、「A3セダン」「S3スポーツバック」の姿を写真で紹介する。 -
ホンダCRF250ラリー<s>(6MT)【レビュー】
2021.4.21試乗記ラリーマシンをほうふつとさせる、ホンダの250cc級アドベンチャーモデル「CRF250ラリー」がフルモデルチェンジ。車体もエンジンも新しくなった新型は、普段使いでも「ホンダの本気」を感じられる一台に仕上がっていた。