ホンダX-ADV(MR/6AT)
何かが引っかかる 2017.09.23 試乗記 スクーターのようなボディーに、オフロードも行けそうなタイヤとホイール。そしてナナハンクラスの大型エンジン。個性的なホンダの“アドベンチャーモデル”「X-ADV」とはどんなオートバイなのか? その走りをリポートする。街で生かせるクロスオーバー
120万円以上もする製品を紹介するにあたり、落としどころが見えないまま口を開くのは無責任な気がする。けれどこのX-ADV、ここに至ってもまだ向き合い方がわからないのです。
全体的なフォルムから察するにスクーターのようですが、ホンダの車種分類では「ロードスポーツ」に属しています。そしてまた突然変異の新種のようにも見えますが、実は同じくスクーター然としながらロードスポーツに属する「インテグラ」(生産終了)ありきでもあるのです。
なぜそう言えるかというと、水冷4ストロークOHC 4バルブ直列2気筒の745㏄エンジンと、ホンダの独自技術であるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせたパワーユニットが共通しているから。駆動方式でチェーンドライブを採用している点も同じです。
ただし、ルックスはまったく別物。車名にあるADVはアドベンチャーを意味しているそうです。二輪用語におけるアドベンチャーは、ラリーレイドにエントリーするような長距離移動を念頭に置いたオフロードモデルのこと。ホンダの資料に記載されたアドベンチャーモデルの特徴を、要約して引用します。
「未舗装路走行を得意とするアドベンチャーモデルは、シート高が高くアップライトなライディングポジションで渋滞時の見通しも良く、路面の凹凸を吸収しやすい長いストロークのサスペンションは荒れた舗装でも快適に走行できる、市街地にもマッチした特徴も併せ持つ」
つまりX-ADVという名前には、アドベンチャーモデルの全方向的にたけた走行特性を譲り受けた、クロス・アドベンチャーという意味が込められているのだと解釈して間違いないでしょう。メーカーに確認していませんが。
走りに対する本気度が高い
そんなわけで、あちこちクロスしています。極太アルミテーパーハンドルと飛び石から手首を守るナックルガードは完全にオフロード寄りの装備。かと思えば、高速道路での防風効果が期待できる5段階調整機能を持つウインドスクリーンを装備。
ハンドルまわりから視点を手前に寄せると、丸いダイヤルが目に入ります。これがイグニッションやハンドロックのメインスイッチ。キーはスマート式なので車体に差し込みません。さらに後方へ視点を移すと、シート下には21リッターの容量を確保したラゲッジスペースが。フルフェイスヘルメットが1個収まる設計は、まさしくスクーターとのクロスですね。きっと便利です。
「スクーターという文言を使ってほしくないなあ」と怒られそうなのが足まわり。フロントサスペンションはインナーチューブ径41mmの倒立フォークを採用。しかも任意で乗り心地が変えられる減衰力調整機能付き。リアは新設計のスイングアームを用いたプロリンクサスペンション。こちらもプリロード調整が可能。前17インチで後ろ15インチのホイールが履くタイヤはブロックパターン。以上のセッティングからは、走りに対する本気度の高さがひしひしと伝わってきます。
ライディングポジションにしても、アドベンチャーモデルっぽい姿勢の良さというか視点の高さへの意識が感じられます。要するにクロスなのです。
「空冷ポルシェみたいなエンジン音」と評したのは、webCGの関編集部員。今となっては牧歌的表現と言ってもいいでしょう。ただしひとつ注意しなければならないのは、コンパクトというか凝縮感が高いスタイリングに惑わされてガツンとスロットルを開けると、強力な出足にヒヤッとする点です。なんせナナハンですから、自分自身の感覚もクロスさせておかなければなりません。
さて、DCT。もはや最新技術ではないので「何これ?」と驚くようなことはありません。しかしDモードやSモードでは、アップダウンが連続する山のワインディングなどで低いギアを選択する領域を拡大させたセッティングが施されています。要はスポーティー。シフトフィールも自然で滑らか。そういう熟成が図られています。多少気になるのは、各モードの切り替えスイッチが多いことでしょうか。
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要は使い方次第
そんなこんなでつらつら説明してきましたが、ここまで書いてもまだX-ADVとの付き合い方が見えてきません。くれぐれも否定ではないことをご理解ください。あくまで自分の懐の狭さが原因です。とはいえ、例えば1週間くらいX-ADVと共に暮らせば、手持ちのオンボロよりはるかに使用頻度が高くなるのは間違いないでしょう。気楽に走りだせる上に走行性能は高い。そこから導き出されるのは、新しい生活というクロス。いろんな交流が生まれる予感があります。だからたぶん、使い方次第なんですよね。ニューな接点を提示する製品というのは。
でも、何かが引っかかる。なんだかんだナナハンで120万円オーバーというモデルにはそれ相応の圧があるわけで、おいそれと手が出せないクラスです。しかし、引っかかっているのはお金の問題じゃないんです。
もしX-ADVが電動だったら?
迷いながらも書いちゃいました。それを本稿の着地点にしていいのかは自分でも疑問です。けれど、どうせクロスさせるならそれくらい大きなエックスを見せてほしい。今日という現時点では。え~と、すべてたわ言です。ホンダはX-ADVに関してクロスという言葉は使っていないし、何よりモノとしておとしめる箇所はどこにもありません。そうであればオレは……という、ただの願望です。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2230×910×1345mm
ホイールベース:1580mm
シート高:790mm
重量:238kg
エンジン:745cc水冷4ストローク直列2気筒OHC 4バルブ
最高出力:54ps(40kW)/6250rpm
最大トルク:68Nm(6.9kgm)/4750rpm
トランスミッション:6段AT
燃費:40.0km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/27.0km/リッター(WMTCモード)
価格:120万9600円
※価格は外装色「デジタルシルバーメタリック」のもの。

田村 十七男
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