第60回:輸入中古車LOVE(前編)
2017.09.26 カーマニア人間国宝への道輸入中古車が好きだ!
いまのところ大勝利! を満喫しているエリート特急こと激安中古「BMW 320d」の購入顛末(てんまつ)記ですが、その締めとして、これから2回にわたり、輸入中古車評論家・伊達軍曹との対談をお送りします。
伊達軍曹は、MJ参謀長(私)率いるお笑い自動車記事編集軍団・MJ戦略参謀本部のナンバー2。6年前に独立し、中古車情報メディアを主戦場に、中古車のライフスタイル的考察にまで踏み込んだ寄稿を続けている。ルックスが不肖ワタクシと似ているため、兄弟に間違えられることも少なくない。
清水草一(以下 清):軍曹。輸入中古車評論家はどう?
伊達軍曹(以下 伊):ええ……。独立当初は、これを足掛かりに超絶高名な新車評論家になってCOTYメンバーに成り上がり、海外試乗会に呼ばれまくって、湾岸の高層マンションでバスローブを着てブランデーグラスをクルクル回す生活を目指していたのですが……。
清:ブワーッハッハハハハハハハ!
伊:最近はどうでもよくなりました! このまま好物である輸入中古車について好き勝手なこと書いていられるのが一番ですね。
清:COTYメンバーになっても、そんな生活できないしね~。
伊:で、できませんか!? まあとにかく、最近は新車にぜんぜん興味を持てないのですよ。性能は過剰だし、なぜかみんな顔がコワくて(笑)カワイくないし、わたしに言わせりゃまったく粋じゃない。なによりも、新車は値段が高すぎます!
清:カーマニアの予算は限られてるもんね。
ターゲットは200万円台
伊:もちろん、無理して予算をオーバーしてでも買っていいクルマはあります。たとえば暴騰してしまった空冷ポルシェ。
清:フェラーリもそうだけど、下取りが下がらないよね。
伊:そうなんですよ。たとえば「ポルシェ911(タイプ964)」のティプトロを支払総額680万円で買うと仮定すると、頭金200万円の120回払いで、月々の支払額は金利込みで約5万円です。日ごろの走行距離を抑えておけば、仮に2年後に生活が超絶困窮したとしても(笑)400万円くらいで売れるはずですから、おそらく残債は残りません。
清:ちょっと長く所有すれば、ほとんどタダでポルシェに乗れた――みたいな感覚になるよね。中古のフェラーリや空冷ポルシェを買うのって、都内駅近の中古マンションを買う感覚に近い。値段が上がることはそうないけど、大抵ちょっとしか下がらない。でもフツーのクルマって、食料品みたいなもんだよね? 食べても食べなくても、どんどん価値がなくなっていく。
伊:いずれゼロ円になりますね。
清:いずれゼロ円になるものに、そんなにお金をかけるのってゼイタクすぎて、心情的に受け入れられないんだ。だから俺は、足グルマの予算は300万円以下って決めている。
伊:私は支払総額で100万円から200万円くらいの中古車が体に合ってます。それくらいですと、下取り車を含めると追加支出は100万円以下ですから、大きなオモチャ的に楽しめます。
清:心地良い予算帯って微妙だよね。俺もずいぶん激安車を買ったけど、100万円以下だと、あまりにもすぐ他のクルマに目移りしてしまう。でも200万円台だと、「それなりのモノを買ったんだから、大事に乗ろう」と思えてちょうどいいんだ。
“伊達心眼流”で一発鑑定
伊:今回はその法則にのっとって、BMW 320dの中古車を買ったわけですね?
清:そう。実は買う前、軍曹にも相談したんだよね。「あのお店はどうかな」って。答えは「あまりおすすめしません」だった。
伊:さいですね。
清:軍曹は“伊達心眼流”なる流派をもって、中古車販売店の良しあしを見抜いているわけだけど、その心眼に照らして、あのお店は不可だったってことね?
伊:さいです。以前から「ダメだな」と思っていました。
清:それはなぜ!?
伊:まあ、ダメなお店に共通するマイナスオーラがあると申しましょうか。
清:それは、実際に行ってみて?
伊:いえ、足を運んだことはありません。私は基本的には読者様にオススメできるお店のみを取材していますから。
清:実際に行かなくてもわかるんだね。
伊:行かずともだいたいわかりますし、一度でもそのお店まで足を運んでみれば、ほぼ完璧にわかります。まずは中古車情報サイトの中身から匂い立ってくるものがあり、さらに自社ホームページと店構えの写真を見れば、8割か9割ぐらいの精度でわかります。で、最後はお店で働く方々の顔を実際に見てみれば、99%はわかると言っていいでしょう。
清:で、あのお店、軍曹の採点は何点だったの?
伊:うーん……。10点満点で3点。いや3.5点でしょうか。
清:そんなに低いの!!(笑)
(語り=清水草一、伊達軍曹/まとめ=清水草一/写真=清水草一、伊達軍曹、池之平昌信/編集=大沢 遼)
(後編につづく)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。