ルノー・メガーヌ インテンス(FF/7AT)
ザ・フツー 2021.10.04 試乗記 マイナーチェンジで新世代の1.3リッターターボエンジンが採用された「ルノー・メガーヌ」に試乗。同ユニットを積む弟分の「ルーテシア」や従来型の1.6リッターモデルとの違いについてリポートする。スポーツモデルだけじゃない
メガーヌといえば、対句のように続くのが「ルノースポール(R.S.)」だが、R.S.じゃないメガーヌが刷新された。
いちばん大きなニュースは、エンジンが新たに1.3リッターになったことである。これまでは1.6リッターの「GT」が日本仕様のフツーメガーヌだった。いや、GTもルノースポールがプロデュースした最高出力205PSのスポーツモデルだから、フツーとはいえなかった。
お尻が洋館のバルコニーみたいだったメガーヌII時代(2004年~)に始まるR.S.は、これまでに日本で約4200台が売れたという。多いときでR.S.以外のメガーヌの2倍を数えることもあったというから、R.S.がメガーヌの代名詞であったことは間違いない。
それはそれとして、今後はフツーのメガーヌもよろしくと登場したのが1.3リッターのインテンスである。2017年秋の現行4代目メガーヌ導入以来、標準グレードの上級装備モデルを意味する「インテンス」がメガーヌのラインナップに加わるのは初めてである。
今回試乗したのはハッチバック(310万円)。20万円高でステーションワゴンの「スポーツツアラー」も用意される。
なかなかの俊足だが……
1.3リッターの直噴4気筒ターボはすでにルーテシアに搭載されているパワーユニットのチューンナップ版である。ルノー/日産/三菱アライアンスとダイムラーが共同開発したもので、現行「メルセデス・ベンツAクラス」にも使われている。
ルーテシアより120kg増えた車重(1320kg)に対処して、最高出力は131PSから159PSへ、最大トルクは240N・mから270N・mへと向上している。湿式のデュアルクラッチ変速機はゲトラグ製の7段型だ。
走りだすと、なかなかの俊足ハッチである。けっこうターボ感のあるエンジンで、低い回転域から厚みのあるトルクを生み、ルーテシアよりひとまわり大きい5ドアハッチバックボディーを軽快に加速させる。70kg重いスポーツツアラーまで考えた出力特性だから、ハッチバックなら余裕しゃくしゃくという感じだ。
タイヤサイズは225/40R18と十分スポーティーだが、フツーのメガーヌだから、足まわりはこれまでのGTほど硬くない。猫足というほどしなやかではないものの、平滑な路面では軽快な乗り心地をみせる。
ただし、フトコロはそう深くなくて、荒れた舗装路だと、けっこう揺すられる。ボディーの剛性感も含めて、プラットフォーム(車台)の新しいルーテシアのほうが乗り心地の品質感は高いと感じた。
「安全」も変わった
7段DCTは高速道路での100km/h巡航を1800rpmまで落としてくれる。100km/hキープでシフトダウンしてゆくと、4速の3800rpmに上がったあたりでやっとそれらしいエンジンのうなりが届く。変速も滑らかでスピーディーだ。シフトパドルが欲しいと思った。
オクテだった運転支援装備は、日産プロパイロットとほぼ同等のものがインストールされた。ACC(アダプティブクルーズコントロール)はストップ&ゴー機能付きの、いわゆる全車速型だ。
個人的に「付いててよかった!」と思った経験がある「リアクロストラフィックアラート」も備わる。ぎっしり埋まったサービスエリアの駐車場などからバックで出るときに、こちらに向かってくる見えないクルマの存在を教えてくれる機能だ。
液晶メーターパネルの正面には常にメガーヌの後ろ姿が表示されていて、走行中、そこに小さな数字が出る。前走車との車間秒数だ。以前からあった「セーフティーディスタンスワーニング」である。
とるべき車間距離は、速度によって変わる。その点、車間秒数は絶対的で、自動運転に使われる車間のデータは、距離ではなく時間である。しかし、だからといって0.9秒とか1.7秒とか2.4秒とかいった数字をそこに出してもらっても、活用のしようがない。というか、車間はなにより前を見てればわかるという話なのだが、バージョンアップした運転支援システムを搭載しても、オリジナルの安全デバイスを据え置いているところに、ルノーの意地を感じる。
ルーテシアとは一長一短
リモコンキーをポケットに入れて、後ろからクルマに近づくと、リアランプが点き、ドアロックが解除され、室内灯やアンビエントライトがオンになってドライバーを迎える。運転席に座ってドアを閉めれば、低音のウエルカムジングルがグオーンと響く。そこまでの“おもてなし”はGTと同じである。
R.S.にも興味津々だけど、ふだんは奥さんも運転するし、小さな子どもも乗せるから、とてもあんな超ドライバーズカーには手が出せない、なんていう人にGTはうってつけだった。
メガーヌGTを1泊の遠出に使わせてもらったことがあるが、エンジンも足まわりもスポーティーでありながら、乗り心地などの快適性も十分高い。名前通り、グランドツーリングがしたくなるスポーツハッチで、地味ながら、隠れたルノーの名車だと思った。
それに代わって登場した1.3リッターのインテンスは、R.S.偏重の日本市場に久々に投入されるフツーのメガーヌである。走る性能のコスパでは、設計の新しいルーテシアが一枚上手だと感じたが、メガーヌにはより広いリアシートと荷室が付いてくる。あと、後席ドアのレバーが、外側にちゃんと水平に付いているのは、やっぱり使いやすいと思った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ルノー・メガーヌ インテンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1815×1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:159PS(117kW)/5500rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W/(後)225/40R18 92W(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
燃費:17.5km/リッター(WLTCモード)
価格:310万円/テスト車=331万2700円
オプション装備:カーナビETC2.0セット(15万円)/フロアマット(3万0800円)/エマージェンシーキット(3万1900円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1584km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:371.8km
使用燃料:23.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.8km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。


















































