ルノー・メガーヌGT(FF/7AT)
こいつは面白い! 2017.11.23 試乗記 ルノーのCセグメントハッチバック「メガーヌ」がフルモデルチェンジ。その第1弾として、標準モデルとともに日本に導入されたのが、ハイパフォーマンスモデルの「GT」だ。箱根のワインディングロードで、ルノー・スポールが手がけたこだわりのハンドリングを満喫した。的確なルノーの日本戦略
おぉ~、今回もルノー・スポール、キレッ…キレだぜッ!
あきれるほどに切れ味鋭い「4コントロール」の操舵フィールに、思わずロラン・ウルゴンさんの顔を思い出した。ウルゴンさんとは、先代「メガーヌR.S.」でニュルをアタックした開発ドライバーであり、ルノー・スポールの“顔”。“世界一のハンドリングヲタク”の笑顔が自然と浮かんでくるほど、このメガーヌGTはマニアックなハンドリングの持ち主だったのである。
ルノーのCセグメントを担うメガーヌが、4代目へと世代交代を果たした。
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」とタメを張るハッチバック。普通であればベースモデルを最初に導入して、それからハイパフォーマンスモデルを徐々に展開していくのがメーカーのセオリーだろう。
しかしルノー・ジャポンはそれをしない。彼らは日本というマーケットを、実によくわかっているのである。つまり、この国で自分たちが、トヨタやフォルクスワーゲン、メルセデスといった巨大な先達(せんだつ)たちと、今同じことをやっても意味はない。大切なのは日本人の心に突き刺さるモデルで勝負することなんだ、と。
ちょっと話が脱線するけれど、この戦略は聞けば当たり前のようでいて、実際にやるとなるとかなり難しいことだと筆者は思う。本国サイドにしてみれば、メガーヌは自信作であり基幹モデル。普通なら「わが国でこれだけ人気なんだから、ジャポンでも売れないわけがない!」と、これを大量にインポーターに売りつけようとするはずである。しかし軽自動車とハイブリッドカーとミニバンが席巻する日本のマーケットでは、いくら欧州の猛者であってもつけ入る隙はない。
カルロス・ゴーンCEOの日本への理解や、日産とのアライアンスがそれを可能とさせたのか? ともかく彼らは、日本市場は「ルノー・スポール」に的を絞った。そしてそのかいあって、常に世界で5指、いいときはナンバースリーに入る売り上げを達成している。日本は“特別なモデルしか売れない国”だと理解しているのである。
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ルノー・スポールの本領発揮
だってそうだろう。イタリアにしろフランスにしろドイツにしろ、かの地で庶民の生活を支えるベーシックで安価なモデルが、輸入されて価格を上げたとしたら、受け入れられるわけがない。いくらフランスパンがおいしくたって、高ければ日本人は米を食べる。もしくは自分でフランスパンを作ってしまうのだから。
それをわかっていなかった最たる例が、日本から撤退したフォードだろう。もっと「フォーカスRS」や「マスタング」のパンプアップモデルあたりを導入していれば、彼らも日本で生き残れたのではないだろうか。
……話を元に戻そう。
そんなわけでメガーヌGTは、恐ろしく個性の強い一台だ。搭載されるエンジンは1.6リッター直噴ターボで、その最高出力は205ps、最大トルクは280Nmと、驚くほどの数値ではない。ただ、ここに組み合わされるトランスミッションはとうとう7段変速のEDC(エフィシエント・デュアル・クラッチ)となったことから、そのパワー&トルクを自在かつ瞬時に引き出せるようになった。
骨格はCMF(コモン・モジュール・ファミリー)と呼ばれる最新プラットフォームで、“ファミリー”という名称が示す通り、日産とルノーでこれは共用されるという。
そしてこの「GT」とワゴンタイプボディーである「スポーツツアラーGT」のシャシーは、ルノー・スポールが直々にチューニング。足まわりには専用のスプリング&ダンパーとスタビライザーがおごられ、ブレーキディスクの直径はフロント320mm、リア290mmと、この下にラインナップされる「GTライン」より30mm拡大されている。
しかし、その操縦性で一番“濃ゆく”その存在を主張するのは、なんといっても4コントロールと呼ばれる後輪操舵システムである。ルノー自身は前輪の舵角や操舵スピード(と車速)から後輪の操舵角を決定していることからこれを「4輪操舵システム」と呼んでいるが、要するにポルシェで言うところの「リア・アクスルステア」である。ちなみにその制御は、後輪車軸にタイロッドを取り付け、電子制御式アクチュエーターでコントロールするやり方となる。
そしてこの切れ味が、冒頭の通りに“キレッキレ”だった。
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確信犯のハンドリング
低速域ではリアタイヤを逆位相、高速域では同位相に切る4コントロール。通常モードでは60km/hを境にこれが働くところを、「SPORT」モードに以上に入れるとその閾値(しきいち)が80km/hに高められる。これが何を意味するかというと、つまりかなりの速度域まで、逆位相にリアタイヤが切れるということである。
今回の試乗は公道が舞台だったので、SPORTモードや「R.S.モード」でおおっぴらにそれを試すことはできなかったのだが、通常モードでもその制御は驚くほどにクルマを曲げていく。タイトコーナーでステアリングを切っていくと、あるポイントを超えた時点でクルマがグイッ! と内側に巻き込み、予想をはるかに超えてノーズがイン側へ入ってしまう。
これには正直、最初は大きな違和感を持った。
ただ、それと同時に、まるで「ランサー エボリューション」のAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を初めて運転したときのような、攻略するドライビングの面白さをすぐに思い出した。
はっきり言って、4コントロールの制御は、1秒間に100回の演算が行われるという割には不自然だ。ポルシェやランボルギーニのように、「どこでどう効いているのかわからないけれど、とにかく曲がる!」という感じではなく、コーナリングの途中から明らかに回転半径が小さくなるような動きをする。
だが、それ故にドライバーはその制御を肌でも頭でも感じ取ることができる。そしてこれを見越して運転するようになるのである。つまり彼らはこの後輪操舵を、ひとつの売りとしてわかりやすく表現しているのだと思う。
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クルマ好きなら一度は味わう価値がある
かっちりとしたブレーキ、剛性感の高いフロントストラットを頼りに、まずはがっつりと荷重をフロントにかけてターンイン。そこからはアンダーステアを探らずに、ステアリングを狙い通りに切り込んでいく。すると、本来アンダーステアが出るであろう領域からリアステアが介入し、ノーズを切れ込ませていく。この際の、「リアがトーアウトするというより、フロントが入っていく」フィーリングは見事である。
そしてノーズがイン側を向きだしたら、これが切れ込みすぎる前にアクセルオン。クリッピングポイントに向かって、一目散に駆け抜ける。
この一連の動きは、一瞬だがロジカルだ。車両の回転中心と半径が変わることから、このボディーが狭いワインディングを面白いように駆け抜けていく。またブレーキで内輪をつまむトルクベクタリングのように、ブレーキタッチに影響を与えないのも素晴らしい。
よくもまぁ、ルノー・スポールはこんなハンドリングマシンを市販化したものである。その制御はそれこそホンダや日産の焼き直しだが、ここまでビビッドに仕立てたのは彼らの度胸のなせる業だろう。
この4コントロールのおかげで、ルノーは「スプリング剛性を柔らかくすることができ、乗り心地がよくなった!」と自慢したそうだが、それは先代のGTが硬すぎただけ(笑)。また後部座席に人が乗るなら、ワインディングはもちろん街中でもSPORTモードには入れない方がいいだろう。あちこち頭をぶつけ、確実に酔う(と思う)。
それでもこのハンドリングは、クルマ好きなら一度は味わってみる価値がある。メガーヌR.S.を手に入れなくとも、サーキットに行くのでもなければ、このGTで十分にルノー・スポールの刺激を味わうことができるはずである。
というか、GTでこれだけの仕上がりなのだとすると、「R.S.」はいったい、どんなクルマになっちゃっているのだろう(笑)。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ルノー・メガーヌGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1815×1435mm
ホイールベース:2670mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:205ps(151kW)/6000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/2400rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:--km/リッター
価格:334万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2711km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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