BMW R nineTアーバンG/S(MR/6MT)
週末が待ち遠しい 2017.10.07 試乗記 BMWの人気モデル「R nineT」シリーズに、往年の「R80G/S」をほうふつとさせるルックスが特徴の「アーバンG/S」が登場。クラシカルなスタイリングとモダンなメカニズムを融合させたニューモデルの魅力に触れた。“あの名車”を見事に再現
昔の名車をオマージュしたデザインに最新の性能を与えるという、レトロモダンなマシンが増えてきている。今回紹介するBMW R nineTアーバンG/Sもそんな一台。イメージは1980年に登場したR80G/S。単気筒500ccあたりが主流だったビッグオフローダーの世界で800ccフラットツインエンジンを搭載した豪快なマシンだ。当時、僕はこのマシンが発表されたのを見て「オフロードでそんな大きなバイクを走らせるのなんて無理だろう」なんて驚いた覚えがある。それくらいのインパクトがあった。現在でもとても人気が高くプレミアがついている。
アーバンG/Sは、「R nineT」をベースに外装や足まわり、ホイールなどを変更してこのR80G/Sイメージを作り上げた。そのスタイルはクラシカルな雰囲気を漂わせながらも上品。R nineTにはいろいろなバリエーションがあるのだけれど、その中でも非常に人気の高いモデルなのである。
このバイク、とってもオシャレな感じがするのだけれど実は元気のよさも折り紙付き。エンジンを始動すれば歯切れのいい元気なツインの排気音が飛び出してきて一気にテンションが上がる。
空吹かしをしてみるとレスポンス自体は良いのだけれどフライホイールマスがとても大きいからスロットルを開けた瞬間、一瞬のタメがあってからバネがはじけるような感じで吹け上がる。同時に車体が縦置きクランクの半トルクで少しねじられる。走りたくてしかたない馬にまたがっているような感じでワクワクしてくる。
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フラットツインならではの鼓動とハンドリング
加速フィーリングも独特だ。ビッグツインは一回一回の爆発力で蹴飛ばされように加速するイメージがあるかもしれないが、フラットツインの場合はプルプルと細かいビートを感じながら太いトルクで押し出される感じ。普通に走っている限りはとても扱いやすいのだけれど、中速域でのトルクが太いからスロットルを大きく開けた瞬間、猛烈な勢いで加速していく。ストリートでキビキビと走るのが楽しくなる特性だ。
フラットツインのエンジンはハンドリングにも大きく影響する。普通のバイクはエンジンを横置きで搭載するため、クランクシャフトやトランスミッションの生み出すジャイロ効果が車体を安定させようとするのだけれど、フラットツインの様な縦置きのエンジンにはこれがない。だからマシンを曲げようとしてバンクさせる時、とても機敏にマシンが動く。
このエンジンとハンドリングのおかげでストリートを走っていてもバイクに乗せられているのではなく、自分の手足としてコントロールしているのだという感覚になる。
アーバンG/Sは、その名の通り都会で使うことを想定しているのだけれど、ツーリングでのワインディングやちょっとしたオフロードなど、いろいろなシチュエーションにも似合うし、楽しく走ることができるはずだ。週末、出掛けるのが待ち遠しくなるようなマシンである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2175×880×1170mm
ホイールベース:1530mm
シート高:820mm
重量:221kg
エンジン:1169cc 空冷4ストローク 水平対向2気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:110ps(81kW)/7750rpm
最大トルク:116Nm(11.8kgm)/6000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:18.9km/リッター(WMTCモード)
価格:189万9000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。