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ランドローバー・レンジローバー ヴェラールR-DYNAMIC SE(P380)(4WD/8AT)

レンジきってのビジュアル系 2017.10.28 試乗記 下野 康史 伸びやかで流麗なボディーラインが美しい、レンジローバーブランドの新型SUV「ヴェラール」。レンジファミリーに新たに加わった、“第4のモデル”の実力とは!? 600kmあまりの試乗を通じてテストした。

都心は高級SUVだらけ?

東京・恵比寿のwebCG編集部でヴェラールをピックアップして、旧山手通りに入る。代官山にも近い開けた2車線を走ってゆくと、前から白い「アウディQ7」が来た。ほどなくシルバーの「レクサスLX」も来た。アレッ、webCGでプレミアムメガSUVの比較テストでもやっていたのかなと思った。玉川通りまでの約1kmの間に、さらに「ポルシェ・カイエン」とすれ違い、メルセデスの「Gクラス」を追い抜いた。

都心部における高級SUV密度は、いまこんな感じである。メルセデスGクラスなどは、バブルの昔、「BMW 3シリーズ」が「六本木のカローラ」と呼ばれたのと同じような、東京のシティーセンターを象徴するクルマになっている。

だから、レンジローバーを名字にするSUVをこんなに次から次へと出しちゃって大丈夫なのか!? なんて心配は余計なお世話のようである。このときも、ヴェラールを見て、西郷山公園脇の歩道でフリーズしているカップルがいた。「もう走ってるよ!」と、ふたりの顔に書いてあった。

今回とり上げたのは、ヴェラールのイメージリーダーともいえる「R-ダイナミック」。ノーマルよりダイナミックなバンパーやボンネットダクトなど、ヴェラールのカッコよさを強調したシリーズで、試乗車は3リッターV6を搭載する「SE」(1129万円)。908万円から始まるガソリンヴェラールのレギュラーモデルのなかで、「HSE」に次ぐ上級モデルである。

2017年7月に、日本市場に導入された「レンジローバー ヴェラール」。「レンジローバー スポーツ」と「レンジローバー イヴォーク」の間に位置付けられるニューモデルだ。
2017年7月に、日本市場に導入された「レンジローバー ヴェラール」。「レンジローバー スポーツ」と「レンジローバー イヴォーク」の間に位置付けられるニューモデルだ。拡大
テスト車はスポーティーな装いの「R-DYNAMIC」。バンパーが専用デザインとなるほか、ボディー各所に赤褐色の“バーニッシュドカッパー”のアクセントが加えられる。
テスト車はスポーティーな装いの「R-DYNAMIC」。バンパーが専用デザインとなるほか、ボディー各所に赤褐色の“バーニッシュドカッパー”のアクセントが加えられる。拡大
テスト車のボディーカラーは落ち着いたアースカラーの「カイコウラストーン」。このほかブラック系やシルバー系を主体に、全12色が設定される。
テスト車のボディーカラーは落ち着いたアースカラーの「カイコウラストーン」。このほかブラック系やシルバー系を主体に、全12色が設定される。拡大
ランドローバー レンジローバー ヴェラール の中古車

豪華クルーザーのようなたたずまい

「レンジローバー スポーツ」と「イヴォーク」の間を埋めるヴェラールは、レンジローバーファミリーきってのビジュアル系だ。

ボディーのタテヨコはレンジローバー スポーツに近いが、大型SUVとしては異例に低い全高(1665mm)は、イヴォークの5ドアより3cm高いだけである。後傾したルーフラインと、強くヒップアップするテールのおかげで、少し上を向いたように見えるプロポーションは、傾斜の強いブリッジ(艦橋)を持つ豪華クルーザーを連想させる。

ボディーを間近で見て感心するのは、徹底したフラッシュサーフェイス(面一処理)と、チリ(パネルギャップ)の狭さである。悪路でねじられるオフロード四駆は、むやみにチリが狭くできなかった。初代「レンジローバー」などは、タバコが挟めそうなくらいパネルの隙間が広かった。ヴェラールはマッチ棒だって入りゃしない。

フラッシュサーフェイスを象徴するのが、ドアハンドルだ。リモコンキーで開錠すると、平らな面からポップアウトする。発進すると自動的に引っ込む。ハンドル全体が水平に出入りするのは、やはり最近、都心で増えてきた「テスラ・モデルS」と同じ形式だ。

上から2番目のR-ダイナミックSEは、20インチホイールを履く。R-ダイナミックシリーズにはトップのHSEまで4グレードあるが、ホイールは標準モデルの18インチから1インチずつ大きくなってゆく。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4820×1930×1665mm。全長と全幅は“兄貴分”である「レンジローバー スポーツ」に近く、全高は“弟分”である「レンジローバー イヴォーク」に近い。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4820×1930×1665mm。全長と全幅は“兄貴分”である「レンジローバー スポーツ」に近く、全高は“弟分”である「レンジローバー イヴォーク」に近い。拡大
フロントフェンダーの後ろに備わる「R-DYNAMIC」のバッジ。そのさらに後ろのボディーパネルの隙間から、チリの狭さを確認できる。
フロントフェンダーの後ろに備わる「R-DYNAMIC」のバッジ。そのさらに後ろのボディーパネルの隙間から、チリの狭さを確認できる。拡大
ドアロックを解除するとポップアップする「デプロイアブルドアハンドル」を採用する。ロックするか、車両を発進させると格納される。
ドアロックを解除するとポップアップする「デプロイアブルドアハンドル」を採用する。ロックするか、車両を発進させると格納される。拡大
「R-DYNAMIC」は20インチホイールを標準装備する。テスト車のタイヤ銘柄は「ピレリ・スコーピオン ヴェルデ オールシーズン」だった。
「R-DYNAMIC」は20インチホイールを標準装備する。テスト車のタイヤ銘柄は「ピレリ・スコーピオン ヴェルデ オールシーズン」だった。拡大

ドライブフィールはかなりスポーティー

エンジンは380psのガソリン3リッターV6にスーパーチャージャー付き。レンジローバー スポーツや「ディスカバリー」、ジャガーでは「Fペース」や「Fタイプ」「XF」などに使われているパワーユニットである。

最近では新型ディスカバリーで経験したエンジンだが、印象はかなり違う。ヴェラールは車重が400kg近く軽いから、まず力がある。0-100km/h=5.7秒をうたう加速性能は、数あるランドローバー車のなかでも3本の指に入る。

アイドリングストップ機構は付いているが、回っていると、けっこう勇ましい存在感を伝えてくる。いちばん特徴的なのは、ZF製8段ATのチューニングで、60km/hあたりまでのタウンスピード域では、エコモードやコンフォートモードでも低めのギアをキープしてなかなかシフトアップしない。スクランブル加速に備えた設定なのだろうが、少々やりすぎで、パドルでギアを上げたくなることがしばしばあった。

ガソリンモデルにはもれなく電子制御エアサスペンションが備わる。その足まわりもかなりスポーティーな仕上げだ。乗り心地は悪くないが、フワリとした柔らかさとは無縁で、2060kgのボディーをギュッとつかむようにコントロールしている。乗り心地にしろ操縦感覚にしろ、高級SUVよりもまずスポーツSUVであることを印象づけるクルマである。

「P380」と呼ばれる3リッターV6スーパーチャージドエンジンは、380psと450Nmを発生する。このほか2リッターガソリンターボの「P300」(300ps)と「P250」(250ps)、2リッターディーゼルターボの「D180」(180ps)がラインナップされる。
「P380」と呼ばれる3リッターV6スーパーチャージドエンジンは、380psと450Nmを発生する。このほか2リッターガソリンターボの「P300」(300ps)と「P250」(250ps)、2リッターディーゼルターボの「D180」(180ps)がラインナップされる。拡大
「レンジローバー ヴェラール」には、車線逸脱警告機能や緊急自動ブレーキ、車両を上から見下ろしたような映像を映し出せる360度カメラといった安全装備が全車に標準で備わる。
「レンジローバー ヴェラール」には、車線逸脱警告機能や緊急自動ブレーキ、車両を上から見下ろしたような映像を映し出せる360度カメラといった安全装備が全車に標準で備わる。拡大
トランスミッションは、全車とも8段ATを採用する。ダイヤル式のシフトセレクターは、エンジンを始動するとせり上がる。
トランスミッションは、全車とも8段ATを採用する。ダイヤル式のシフトセレクターは、エンジンを始動するとせり上がる。拡大

イヴォークオーナーは心中穏やかではない!?

乗ってしまうとカッコは見えないが、コックピットの居住まいもスポーティーである。座面やアイポイントの低さ、というか、高くなさはレンジローバーファミリー随一だろう。高みから周囲をヘイゲイするランドローバー伝統の“コマンドポジション”はここにはない。

中央に上下2面の大きな液晶タッチパネルを配したダッシュボードもフレッシュだ。アナログのスイッチは激減し、エアコンもオーディオも、ドライブモードやテレインレスポンスの切り替えも全部ここでやる。階層を開け閉めする操作がぜんぜん身についていない年寄りには悩ましい新機軸だったが。

全長は4.8mあるから、後席の居住性も高い。ルーフ後ろ下がり系レンジローバーでも、イヴォークのような閉所感はない。イヴォークといえば、あのクルマもひと目で人の心を捉えてしまうレンジローバーだった。ヴェラールが出て以来、心穏やかならざる日を送っているイヴォークオーナーもけっこういるのではないか。

180psの2リッター4気筒ディーゼルターボにはまだ乗っていないが、全車コイルサスペンションのディーゼルは、同グレード比でガソリンより209万円安く、「699万円より」となる。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

テスト車はインテリアのセットオプション「プレミアムテキスタイルインテリアパック」を装備していた。インストゥルメントパネルやドアパネルがラックステックレザーで飾られるほか、ステアリングにサテンクロームのアクセントが添えられる。
テスト車はインテリアのセットオプション「プレミアムテキスタイルインテリアパック」を装備していた。インストゥルメントパネルやドアパネルがラックステックレザーで飾られるほか、ステアリングにサテンクロームのアクセントが添えられる。拡大
ダッシュボードには2枚の液晶スクリーンが備わる。上のスクリーンではナビなどの操作を、下のスクリーンではエアコンや車両の設定などを行う。
ダッシュボードには2枚の液晶スクリーンが備わる。上のスクリーンではナビなどの操作を、下のスクリーンではエアコンや車両の設定などを行う。拡大
シートはオプションの「プレミアムテキスタイルインテリアパック」に含まれる特別仕様。表皮の白い部分はスエード、グレーの部分はウール混の布地でできている。
シートはオプションの「プレミアムテキスタイルインテリアパック」に含まれる特別仕様。表皮の白い部分はスエード、グレーの部分はウール混の布地でできている。拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・レンジローバー ヴェラールR-DYNAMIC SE(P380)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4820×1930×1665mm
ホイールベース:2875mm
車重:2060kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:380ps(280kW)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
タイヤ:(前)255/50R20 109W /(後)255/50R20 109W(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ オールシーズン)
燃費:10.0km/リッター(JC08モード)
価格:1129万円/テスト車=1285万2880円
オプション装備:メタリックペイント<カイコウラストーン>(10万円)/InControlリモート(4万円)/ルーフレール<ブラック>(5万円)/リアシートエンターテインメントシステム 8インチディスプレイ<WhiteFireヘッドフォン2台付き>(36万円)/プレミアムテキスタイルインテリアパック(27万円)/電動18ウェイフロントシート<フロントシートヒーター&クーラー+リアシートヒーター+メモリー機能+マッサージ機能>(70万4000円) ※以下、販売店オプション ラグジュアリーカーペットマットセット(3万8880円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1807km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:637.5km
使用燃料:75.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.5km/リッター(満タン法)/8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

ランドローバー・レンジローバー ヴェラールR-DYNAMIC SE(P380)
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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