第28回:ボルボXC40と恐るべきジーリーの野望
ボルボオシャレ革命! ウラにはあの国の特大マネーが!?
2017.10.31
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
拡大 |
まさにボルボのオシャレ革命! ボルボが新しい小型SUV「XC40」のお披露目の場に選んだのはファッションウイーク開催中のミラノだった。しかも車内のいたるところに、日本車もビックリな気配りが……。小沢コージはこのスモールボルボのかつてない路線を「新オシャレ実用プレミアム」と名付けたのだった!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ありそうでなかった「新オシャレ実用プレミアム」
びっくり、まさかこういう路線で来るとは! それは来年春か夏にも日本上陸がウワサされるボルボの新コンパクトSUV、新型XC40。
ご存じボルボはいま大イメチェン中の真っ最中で、去年上陸したイメージリーダー、ラージSUVの「XC90」は小沢に言わせれば「北欧のレンジローバー」。北欧らしいエレガントさにかつてないノーブルな雰囲気を加え、実際、デザイナーは往年のロールス・ロイスのスタイルを意識しているとプレゼンでも明言。
その次男たる「XC60」は先日日本に上陸し、さらにカジュアルさを加えてきましたが、果たして来年出るはずの末っ子のXC40はそれ以上のレベルで親しみやすさを強調。
以前チーフデザイナー(当時)のトーマス・インゲンラート氏は、ドイツ車を意識しながら「こんなつまらないプレミアムになりたくありません」と言い放ち、90/60/40のボルボ新シリーズのイメチェンをクツになぞらえ、90を黒革靴とするなら60は茶色のバックスキン靴、40はスニーカーと解説。それがついに現物となったのが9月の終わりに発表された新型XC40なわけです。
それもわざわざファッションウイーク中のイタリアのミラノでお披露目し、ビル垂れ幕で「スウェーデンで作って、ミラノでリビールド」とアピール。明らかに世の中のオシャレピーポー、中でもドイツ車に飽きた層を狙ってるのは明白で、実際XC40には意外なるテイストが隠されておりました。
それは今までありそうでなかった「新オシャレ実用プレミアム」。今まで「小さいけどプレミアム」だったり「カジュアルさ」にこだわるところはありましたが、新型XCでは王道の北欧プレミアム風味にかつてないコンビニエントテイストを組み合わせてあるんです。
格納式コンビニフックにビックリ
それを一番感じたのは、助手席グローブボックスで見つけた「コンビニフック」。むろんアチラじゃ「コンビニ……」などと言わずに「バッグをかけられる」としか言ってませんでしたけど、それをさらに「格納できる」のがなんとも秀逸。
この手のフックは日本の実用コンパクトやミニバンではおなじみですが、しまえるものってなかなかありません。その昔、オシャレ自動車評論家のご自宅で、ゴミ箱を隠していたのを見つけたような驚きです。
加えてセンターコンソールにはフルサイズのティッシュボックスは入るわ、取り外し式のゴミ箱はあるわ、運転席下にも巧妙な引き出しが。なんだよオマエは「ワゴンR」か? と言いたくなるほどのお便利ぶり。
ついでにハンドル下には差し込み式のカードホルダーが2枚分付いてるし、スマホのワイヤレスチャージシステムも装備可能。こんな気配りしてくる欧州プレミアムなんて……。オシャレマジメな日本人、買っちゃいそうになるじゃないか!! という(笑)。
イタ車やアメ車じゃまずここまでかゆい所に手は届かないだろうなぁと。
さらに驚きが、この10月に東京・青山にオープンした「ボルボスタジオ青山」。実は在庫を持たないショールームで、カフェ&シャンパンバーも併設しています。そしてこれはすでにミラノでもオープンしているそうで、まさかここまで全面的にオシャレ展開をやってくるとは。
3本柱のリニューアルを毎年支えるなんて!
考えてみると驚きなのが、去年のXC90に始まり、今年のXC60、来年のXC40とボルボが新大黒柱3本を1年ごとにリニューアルしている事実です。それも旧型プラットフォーム据え置きならわかるけど、90&60のSPAプラットフォームは完全新作でXC40のCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)も完全新作。
中でもSPAに関しては1兆3000億円かけて一新しており、CMAも生産設備まで入れるとそれなりに掛かっているはず。このわずか短期間の改革にトヨタの年間利益に匹敵する2兆円レベルの投資をするだなんて、かつてのフォード傘下時代じゃ考えられません。ついでにオシャレなボルボスタジオ戦略にも相当なお金がかかってるはずです。
これは間違いなく2010年に親会社になった中国ジーリーホールディングスのなせるわざであり驚くほどの投資でありマネーの力。
実際、BMWだってメルセデスだって「7/5/3シリーズ」に「S/E/Cクラス」を毎年イチから新しくするなんてありえないでしょ? これはわが日本でもできない芸当で、そもそも日本の自動車メーカーが海外ブランドを買収して完璧テコ入れなんてことも聞いたことありません。裏にはおそらく中国のすごさと同時に焦りがあるわけです。
中国にはイチからプレミアムブランドを作る時間はそうそうありません。一部はそういうチャレンジもしているでしょうが、時間がかかります。だったらボルボを買って任せて再生した方がよく、加えてウラには中国巨大マーケットという巨大保険があります。実際もしも新ブランドが世界で売れなくても中国で売れれば成立しちゃうわけです。
だって中国で売れているドイツプレミアムの台数知ってますか? 筆頭のアウディがほぼ60万台の59万1600台で、2位のBMWがMINIと合わせて51万台6355台で、メルセデスが47万2844台。これを同時期の日本とざっくり比べるとBMWがMINIと合わせて6万7000台でメルセデスが6万5000台でアウディが2万9000台。ぶっちゃけ9倍から20倍も売れてるわけですよ。もはやそのマーケットパワーはハンパない!
そう考えると、ボルボに投資なんてことワケないわけです。実際、ジーリーはコンパクト系のCMAプラットフォームを使って新高級ラインを作ると明言。これは今度小沢が見てくる予定です。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第54回:18年目の大改良! 奇跡の不老不死ミニバン「デリカD:5」のナゾ 2026.1.11 三菱のオールラウンドミニバン「デリカD:5」が2025年末にまたも大幅改良を敢行。しかもモデルライフが10年をとっくに過ぎた2024年に過去最高の台数が販売されたというのだから、いったい現場で何が起きているのか。小沢コージが開発者を直撃!
-
第53回:失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編) 2025.12.20 小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。
-
第52回:ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編) 2025.12.19 「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。
-
第51回:290万円の高額グレードが約4割で受注1万台! バカ売れ「デリカミニ」の衝撃 2025.11.28 わずか2年でのフルモデルチェンジが話題の新型「三菱デリカミニ」は、最上級グレードで300万円に迫る価格でも話題だ。ただし、その高額グレードを中心に売れまくっているというから不思議だ。小沢コージがその真相を探った。
-
第50回:赤字必至(!?)の“日本専用ガイシャ” 「BYDラッコ」の日本担当エンジニアを直撃 2025.11.18 かねて予告されていたBYDの日本向け軽電気自動車が、「BYDラッコ」として発表された。日本の自動車販売の中心であるスーパーハイトワゴンとはいえ、見込める販売台数は限られたもの。一体どうやって商売にするのだろうか。小沢コージが関係者を直撃!
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。














































