ロボットがプロライダーに真っ向勝負を挑む
ヤマハが目指す自動運転の形とは?
2017.11.01
デイリーコラム
拡大 |
第45回東京モーターショー特設ページ「オススメの一台」のコーナーで、「ヤマハMOTOBOT(モトボット)」を推挙したモータージャーナリストの河村康彦氏。ところが、「あの文字数では全然書き尽くせていません」ということで、詳報を寄せてくれた。MOTOBOTを開発する、ヤマハの目的とは?
拡大 |
ライバルはバレンティーノ・ロッシ
レベル3だレベル4だ、と、四輪自動車界(?)では“自動運転”に関する話題が引きも切らず。
が、そんな昨今の過当とも思える競争からは一歩身を引いて……というよりも、それらとは全く関係なく、何ともユニーク方法で“二輪車の自動運転”を目指してきたのが、2015年の東京モーターショーで初公開されたヤマハのMOTOBOTだ。
「モーターサイクル技術とロボティクス技術を融合し、未知の領域を開拓する自律ライディングロボット」と、ヤマハが説明するこのロボットが目指すのは、二輪のトップライダーであるバレンティーノ・ロッシ選手と同型のバイクで、彼がライディングするよりも速いサーキット・ラップタイムを記録すること。そして、このプロジェクトの最大の特徴は、基本的にマシン(バイク)には一切手を付けず、ロボットの制御のみでそれを達成しようとしている点にある。
高精度なGPSと3次元地図データを用いて理想的な走行ラインをフォローするように、ヒト型ロボットに組み込まれたアクセルとブレーキ、クラッチ、シフト、そしてステアリングの操作を行う各アクチュエーターをコントロールする、というのが基本的な仕組み。ちなみに“体重移動”は行わず、ステアリング操作によってバランスをキープするというのもちょっと驚きだ。
将来的には四輪もドライブ!?
ところで、そもそもどうしてヤマハはこんな突拍子もないと思えることに手を染めた(?)のか。
現在開催中の東京モーターショーのヤマハブースに出向いて説明員氏に尋ねてみると、返ってきたのは予想だにしなかった回答だった。
いわく、そこには純粋な技術開発という目的以外にも、「こうした取り組みを行うことで、この先の優秀な人材確保などにもつなげたいという意味もある」という。将来的には、四輪車をドライブすることも「全く考えていないわけではない」というが、現時点ではむしろプロモーションの意味合いが強いのだ。前述したように“体重移動”を伴わないため、必ずしも必須ではないのにあえて”ヒト型”にこだわっているのも、そうした理由からだろう。
今回のモーターショーに出展されたMOTOBOTは、2015年に披露された「バージョン1」に続く、「バージョン2」と呼ばれるもの。
「初代以来続けてきた改良内容からすれば、実際には“バージョン100”といってもいいかもしれない」と説明員氏が語る新型では、軽量化とともに「ステアリング剛性アップの目的でカーボン素材を取り入れた」ほか、「より深いバンク角を獲得するために、バージョン1で用いていた低速時のための補助輪を廃止して、格納式スタンドに変更した」といったポイントを特徴とする。正確なステアリング操作を行うためには高いステアリング剛性が必要というのは、バージョン1で得られた知見だという。
鈴鹿サーキットのラップタイムがシミュレート可能……といわれる高速サーキット型のテストコースを静岡県袋井市に持つヤマハだが、「日常業務で忙しく、なかなか走行時間が確保できない」といった理由から、MOTOBOT開発のホームグラウンドに選ばれたのは米国カリフォルニア州にある、サンダーヒル・レースウェイ。
ロッシ選手が85秒で1周するこのコースを、最新のMOTOBOTは115秒で走り抜いたという。現状ではまだ「勝負になっていない」のは確かながら、開発陣は「ようやくロッシの背中が見えてきた」と語る。
すでに最高速は200km/hを超え、そんな速度からの“大転倒”も経験しているというMOTOBOT。それでも、今後も“ロッシ超え”を目指して開発を進めていくという。
(文=河村康彦/写真=webCG/編集=藤沢 勝)
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する 2026.10.16 年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。
-
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する 2026.10.15 光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。
-
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る? 2026.10.14 これまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く 2026.10.9 パナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。


