ルノー・トゥインゴGT(RR/5MT)
小型スポーツカーの秀作 2017.11.11 試乗記 ごくマジメな実用ハッチバックも、ルノースポールの手にかかればご覧のとおり、小粋な4シータースポーツに早変わりする。「ルノー・トゥインゴGT」は、著しい高性能化でかえって行き場を失いつつあるスポーツカーに対するアンチテーゼであり、小型スポーツカーの秀作だ。箱根で試乗した。自ら操りたい人へ
トゥインゴGTは現代版ホットハッチだ。かつてルノースポールは「ルノー5 ターボ」や「クリオ ルノースポールV6」などに代表されるスポーツモデルで一世を風靡(ふうび)した。あの時代の熱い血潮を再現させるのは今の時代では難しい。排ガスや安全性、経済性などクリアしなければならない課題もある。それでも額面上のパワーで300psだ500psだとすごい数字を実現している高性能車も登場している。手ごわい相手と対峙(たいじ)し、それを屈服させて、征服感を満たすことに面白みを感じるのも事実だが、それを一般路上で実感するのには無理もある。適当なボディーサイズとパワーが与えられたコントロール性のいいクルマこそ、現実的な乗って面白いクルマといえる。
本来面白かるべきその操縦する楽しみを、電子制御でなだめられ、何事もなく乗せられたって面白いかどうかは疑問だ。それでもただ速ければいいという車を求めるヒトには、そちらをおススメする。
トゥインゴGTはもっと繊細な操縦感覚を持っていて、車に乗せられて満足するのではなく、自分で能力を引き出すことに興味を示す人に向く。ルノースポールは泣かせどころをうまく押さえたイイ感覚を持っている。それが高価な買い物ではなく、既成のコンポを流用して比較的安価(224万円)に提供される点も歓迎される。
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5段MTで生き生きと
900ccターボエンジンが生み出す109psで車両重量1010kgを運ぶとなれば、特に目覚ましい動力性能は期待できないが、5段マニュアルは自分でギアを選んで走れるから、ストレスを感じる部分は少ない。5段階のレシオは下4段をクロスさせたもので、同じリズムで500rpm上げ下げして使うだけでも面白い。5段目は燃費を考えてレシオを高くしてあるが、極端なOD(オーバードライブ)レシオではなく4速とそれほど離れていないから、軽い上り坂でも5速が使えるほどの速度域ならばそのまま走れる。そんなとき、ターボ過給は負荷に応じてパワーを補ってくれる。
小さな不満としてはタコメーターの備えがなく、どこまで回していいか判断がつきにくい。いとこ車のスマートにはダッシュボードにニョキッと生えた別体の小さなメーターが追加されている。トゥインゴも後付けでもいいから何とかしてほしいところだが、GTを名乗ることだし、やはり純正仕様として最初から組み入れるべきだろう。
ただエンジン音を聞いても大体の回転数は判断できるから、見ないでも感覚だけで走れるし、そのまま回転を上げていくとリミッターが作動するから、エンジンを壊すようなこともない。とはいえ、それでは初心者感覚にすぎる。やはりシフトダウンの際には回転数を頭に入れておきたい。
RRの操縦性を安全に楽しめる
トゥインゴGTはエンジンや5MTなど動力性能も活発ながら、操縦性や乗り心地などシャシー関連のチューンはもっと楽しめる。リアエンジンに起因する基本的な特性として、まずステア特性が一般的な前輪駆動とは異なる。車両重量は前470kg/後ろ540kgで前後配分は47対53となり、静的な旋回特性(US/OS)のスタティックマージンは、後ろが重いことにより若干オーバーステア(OS)傾向となる。これも駆動輪にパワーを掛けると重いがゆえに駆動力はより効率的に伝えられ、押し出されてアンダーステア(US)状態になるし、操作によってはOSにも持ち込める。そんな姿勢からスロットルオフにするとUS/OSを逆転させたりして楽しむことが可能だ。
USはOS化し、OSはUSに変化する。ステアリング操作だけでなく、こうしてスロットルの踏み加減で旋回特性を変化させて、また両方を絡めて旋回させる妙味はFFでもFRでも、RRでも4WDでも可能ではあるが、公道上で遭遇する程度の速度やコーナーの曲率や限りある道幅では、大げさなことはできないし、危ない状況も演じかねない。それを通常の実用速度の範囲で、安全にして感覚的に楽しめるのがトゥインゴGTの美点だ。
街中でも体感できる小気味よさ
かつては「スバル360」「ルノー4CV」「日野コンテッサ」などの日本車、そして「フォルクスワーゲン・ビートル」などがあり、RR車の特性を「ポルシェ911」でなくとも手軽に楽しめた時代もあった。あの頃のRR車とトゥインゴGTが大きく違う点は、全長に対するホイールベースが極端に長いこと、そしてタイヤのグリップが向上している点だろうか。
さらに現代のハイテクである横滑り防止策のESCは、このトゥインゴGTの場合、若干効きを遅らせてセットしてある。コーナリングを楽しむ究極は軽くカウンターステアを当ててドリフトさせることだとしたら、その感覚を低い速度で体験できるトゥインゴGTは価値ある車だ。運転する自分がいつでも旋回中心付近にいて、そのまま遅滞なく横Gを感じることができる。タイヤがボディーの四隅にあって、若干重いリアから外側に振り出される感覚もいい。軽いノーズは軽い操舵力によって、自在に自分の進む方向に導くことができるのもイイ。車庫入れ程度の微低速から高速道路100km/hのコーナリングまで、そんなニュートラル感覚を保ち、かつソリッドなボディーとの一体感覚を実現させているから、ヨー/ロール/ピッチ/上下/前後/左右方向の動きに余分なイナーシャを感じさせない。これこそ小型スポーツカーの秀作といえる。
これらの美点は、ことさらスポーティーなドライビングをと構えて運転するときだけでなく、普段の実用走行において街角を曲がるときでも体感できる。スッと気持ちよく回頭する軽い旋回感覚は、特にハンドルを切り始める初期操舵のレスポンスにおいて、遅れのない気持ち良さをもって上質な運転感覚を実現している。
便利で魅力的なスポーツカー
一方、真っすぐ走っているときの直進性などにもRRの特性は影響する。OS特性はわずかな路面の荒れや横風などに対しても敏感で、チョロチョロと進路を乱されがちだ。トゥインゴGTにもそんな症状が皆無ではない。しかし現代のチューンではタイヤの容量も味方し、何より長いホイールベースにより大きく乱されることはないが、ハンドルを持つ手には微少の方向的反力も感じられる。それらは路面感覚ともあいまってスポーツカーにとって、自分の置かれた状況を知るうえでの情報となり、好感をもって受け入れられる特性でもある。
そんなトゥインゴGTながら、エンジンが前にないからフロアの張り出しが少ないし、センターコンソールもそれほど大きくないから、小さな車のわりにはクラッチを踏む左足周辺のスペースは十分だ。けれども左ハンドル車ならもっと広いのかなー……という見方も残る。アシ先はペダルの下に潜らせておいて待機することになる。その際のニーグリップ代わりになる樹脂ボックスの支持剛性は低い。と思ったら、その箱は単にカップホルダーに差し込まれているだけと判明。この辺は自分で加工する楽しみとなるだろう。リアのガラスハッチを開ければ、エンジンルーム上のフロアボードにはコンビニの買い物袋以上のものが置けて、日常生活における実用性もクリアしている。
オープン2シーターはスポーツカーとして確かに魅力的ではあるが、このホットハッチ4シーターもまた便利で魅力的なスポーツカーだ。
(文=笹目二朗/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
ルノー・トゥインゴGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3630×1660×1545mm
ホイールベース:2490mm
車重:1010kg
駆動方式:RR
エンジン:0.9リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:109ps(80kW)/5750rpm
最大トルク:170Nm(17.3kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)185/45R17 78H/(後)205/40R17 80H(ヨコハマ・ブルーアースA)
燃費:--km/リッター
価格:224万円/テスト車=224万円
オプション装備:なし
テスト開始時の走行距離:1674km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:184.6km
使用燃料:14.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.7km/リッター(満タン法)/13.1km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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