第1回:新型「XC60」はここに注目!
ボルボを代表するモデル 2017.11.29 徹底検証! ボルボXC60 ボルボのミドルサイズSUV「XC60」がフルモデルチェンジ。日本国内でも2017年10月に販売が開始された。世界的に人気を博したモデルの新型には、どんな特徴があるのか。詳しく解説する。今のニーズに応える一台
最近は内外装のかっこよさと、優れた実用性を兼ね備えたSUVの人気が高い。外観を見ると、悪路の走破も考慮した大径のタイヤで存在感が強調されている。ボディーの上側はワゴンと同様の形状で、居住性については前後席ともに快適。荷物も積みやすい。SUVには多彩な魅力があり、クルマ好きからファミリーまで、幅広いユーザーに好まれている。
また近年のクルマは、安全性と環境性能が重視される。交通事故はクルマにとって最大の問題点であり、世界的にユーザーの高年齢化も進んでいる。車両が運転ミスを積極的にカバーできる安全装備が大切になっている。将来の自動運転につながる運転支援技術も、緊急自動ブレーキなどがベースであるため、安全装備の進化が一層促進されてきた。安全性と並んで環境性能も重要な課題だ。排出ガスのクリーン化、二酸化炭素の排出抑制、化石燃料の節約など、その幅は広がっている。
こうした今のトレンドやニーズに的確に応えた注目の新型車が、2017年10月に発売されたボルボのSUV、XC60だ。現行型は2代目で、初代XC60は世界で累計100万台が販売された。ボルボ全体の約30%を占める人気車である。
新型XC60のボディーサイズは全長が4690mm、全幅が1900mm(「T6 AWD R-DESIGN」は1915mm)、全高が1660mmで、SUVでは売れ筋のミドルクラスに位置する。外観は水平基調で、ボンネットが長くスポーティーな雰囲気も併せ持つ。SUVの高い人気を象徴する、上品で存在感の伴う外観に仕上げられている。
ユーティリティー性が光る
XC60は内装の質も高く、上級グレードの「インスクリプション」には、流木をモチーフにした素朴で美しいドリフトウッドパネルなどが採用される。
インストゥルメントパネルの中央には、9インチのタッチスクリーン式センターディスプレイを装着。画面が縦型なので、カーナビの地図をヘッドアップ表示した時には進行方向が広く表示されるなど、視認性に優れている。モバイル機器との接続も簡単で、Apple CarPlayやAndroid Autoを経由してセンターディスプレイから端末にアクセスできるなど、通信機能の充実も図られた。
ミドルサイズのSUVとあって車内も快適だ。前後のシートはともにサイズが大きく、座り心地もそのボリューム感を伴う。頭上と足元の空間も広い。身長170cmの大人4人が乗車した場合、後席に座る同乗者の膝先空間は、握りコブシ2つと少々。Lサイズセダンに匹敵する余裕が確保されている。外観が水平基調だから後席に座った時の視界も優れ、すべての乗員が周囲の風景を満喫できる。
荷室の容量にも余裕があり、後席を使った状態でも荷物をタップリと積める。後席の背もたれは60:40に分割して前方へ倒せて、これによりフラットな空間が広がる。リアバンパーの下方に足を出し入れするとバックドアが電動で開閉できるパワーテールゲートも、全車に標準装着となる。広くて便利に使える荷室もXC60の大きな魅力だ。
エンジンは、先に述べた環境性能と優れた動力性能を両立させるべく、すべて2リッターの直列4気筒となっている。ガソリンは自然な運転感覚を楽しめるターボ付きの「T5」に、高い動力性能を発揮するターボ+スーパーチャージャー「T6」、ハイパワーと優れた環境性能を両立させたターボ+スーパーチャージャーがベースのプラグインハイブリッド「T8」の、計3種類が用意される。これに実用回転域の駆動力が高く、燃料代の節約が期待されるクリーンディーゼルターボ「D4」も加わる。駆動方式はすべてAWD(全輪駆動)で、悪路の走破力、舗装路における安定性もセリングポイントとなっている。
強化された安全性能
装備については、XC60の大きなメリットとなる先進の安全機能が注目される。各種のセンサーによって歩行者、自転車、大型動物、車両を検知して、衝突の危険が迫ると警報を発する。状況が悪化した際には緊急自動ブレーキが作動し、事故を回避するためのステアリングサポートも行う。さらに、右折時に対向車の動きを監視するほか、ドライバーの死角に入る後方の並走車両との衝突を避ける機能も採用した。
自動運転に通じる運転支援機能も進化して、アクセル/ブレーキの自動調節に加えて、ステアリングの操作も支援して先行車に追従する。超音波を使った縦列/並列駐車の支援機能も備わる。
そんなXC60の選択については、価格の割安感を重視するならば、ディーゼルターボの「D4 AWDモメンタム」、ガソリンターボの「T5 AWDモメンタム」を推奨したい。HDDナビ、安全装備のインテリセーフ、8ウェイパワーシートなどを標準装着しながら、両グレードとも価格は599万円に抑えられている。欧州製ミドルサイズSUVの場合、価格が最も安い仕様でも大半が600万円を超えるから、4WDで599万円のモメンタムは割安感が強い。
そしてヘッドアップディスプレイ、ベンチレーション&マッサージ機能を備えたナッパレザーシート、ドリフトウッドパネルなどを装着したインスクリプションは、ディーゼルターボ、ガソリンターボともに679万円だ。インスクリプションは現時点で最も販売比率の高いXC60の人気グレードである。
スポーティーな運転感覚を重視するユーザーには、専用のスポーツサスペンションやスポーツシートを備えたR-DESIGNが適している。価格はディーゼルターボが649万円、ガソリンのターボ+スーパーチャージャーは724万円。これに加えて、プラグインハイブリッドの「T8 Twin Engine AWDインスクリプション」が884万円で設定される。
このようにXC60は、内外装や居住性を上質に仕上げ、先進の安全装備と環境性能を実現させた上で、ニーズに応じて選べる多彩なグレードが割安な価格で用意されている。SUVの、そしてボルボの代表車種といえるだろう。
日本市場で販売されるラインナップは以下の通り。
XC60 D4 AWDモメンタム(4WD/8AT):599万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
XC60 D4 AWD R-DESIGN(4WD/8AT):649万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
XC60 D4 AWDインスクリプション(4WD/8AT):679万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
XC60 T5 AWDモメンタム(4WD/8AT):599万円
・2リッター直4ガソリンターボ
・最高出力254ps、最大トルク350Nm
XC60 T5 AWDインスクリプション(4WD/8AT):679万円
・2リッター直4ガソリンターボ
・最高出力254ps、最大トルク350Nm
XC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/8AT):724万円
・2リッター直4ガソリンターボ スーパーチャージャー付き
・最高出力320ps、最大トルク400Nm
XC60 T8 Twin Engine AWDインスクリプション(4WD/8AT):884万円
・2リッター直4ガソリンターボ スーパーチャージャー付き
・エンジン最高出力318ps、エンジン最大トルク400Nm
・フロントモーター最高出力34ps、フロントモーター最大トルク160Nm
・リアモーター最高出力65ps、リアモーター最大トルク240Nm
(文=渡辺陽一郎/写真=向後一宏、尾形和美/編集=関 顕也)
→徹底検証! ボルボXC60【特集】
→「ボルボXC60」のオフィシャルサイトはこちら
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渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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