アウディSQ5(4WD/8AT)
完全無欠のスポーツSUV 2017.12.11 試乗記 「アウディQ5」の高性能バージョンである「SQ5」が登場。最高出力354ps、0-100km/h加速5.4秒をマークする、最新スポーツSUVの実力とは? スポーツサスペンションを装着したエキサイティングな一台に試乗した。気持ちのよいエンジン
3リッターV型6気筒直噴ターボエンジンに火を入れるために、スターターボタンを押す。すると、「フォン!」と「ボン!」の中間ぐらいの、いかにもヌケのよさそうな快音とともにエンジンが始動した。
音じたいは古典的なクルマ好きのハートをわしづかみにするエキサイティングなもので、気分が高揚する。同時に、静かな湖畔の森の陰でこの音が響いたら、カッコウたちが羽をバタバタさせて飛び立ってしまうのではないか、と心配にもなる。
でも、アクセルを踏み込んで加速すると、頭の中からカッコウの姿は消えてなくなる。健康的な乾いた排気音が盛り上がるのとシンクロして、気持ちよく加速するからだ。
「アウディA4/A5」をベースにしたSUVであるQ5がフルモデルチェンジを受け、2017年秋に日本に導入されている。ベーシックなQ5は2リッターの直列4気筒直噴ターボエンジン(252ps)を積むが、今回試乗したスポーティー仕様のSQ5は前述したように、3リッターのV6直噴ターボ(354ps)。
フルモデルチェンジ前のSQ5は排気量とエンジン型式こそ3リッターV6で共通だが、過給器がスーパーチャージャーだった。
ターボ化によって最大トルクは“スーチャー”時代の470Nmから500Nmへと微増したが、354psの最高出力は変化ない。ただしエンジンの燃焼効率の改善が図られ、JC08モード燃費は従来型の10.8km/リッターから11.9km/リッターへと改善を見ている。また、エンジン本体も14kg軽くなった。
「アウディS4/S5」も搭載するこのエンジンは、とにかく気持ちがいい。発進の瞬間から目の詰まったむっちりとしたトルクを発生して、力強く車体を押し出す。回転が上がるとともに、タコメーターの針が軽くなったかのように上昇スピードが速くなり、エンジンが吹け上がる。そしてアクセルを踏むドライバーの期待をほんの少しだけ上まわる、絶妙の加減でトルクが盛り上がる。
アクセルペダルのオン・オフに対する反応も実に繊細かつクイックだから、アクセルを踏んで加減速しているだけなのに、楽器の演奏がうまくいった時のような達成感と快感がある。
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足まわりも快適
このエンジンにはうならされっぱなしだ。エンジン回転の上昇とともに、次第にクリアになっていく排気音も耳に心地良い。
優秀な外野手は、バットでボールを打った瞬間の「カキーン」という音で打球の伸び方や着地点が想像できるというけれど、このクルマも似ている。運転席で感じる音が、スピードや加速感を把握する手がかりになっている。
ただ力がある、十分な加速を提供する、という実用の道具から一歩踏み込んで、心地よさや楽しませ方など、エンターテインメント性にまで考慮して、音や手触りなどに細心のチューニングを施しているのだろう。
細心のチューニングが施されているのは足まわりも同様で、これほどの大パワー、大トルクを受け止める役割を担うのに、突っ張っていたり、ゴワゴワした感じがない。
タウンスピードで舗装の悪い路面を走るような、ドイツ製高性能車があまり得意としないようなシチュエーションでも路面からのショックは上手に抑えられている。凸凹を突破する瞬間、「さあ、ドスンと来るぞ、来るぞ」と体が身構えていても、実際に感じるのは「ストン」という程度で、いい意味で拍子抜けである。
オプションの255/40R21という太くて薄いサイズのタイヤを、見事に履きこなしている印象だ(ノーマルは255/45R20)。
SQ5に装着されるスポーツサスペンションは、当然のことながらQ5のものより乗り心地が硬く感じる設定のはずだが、そんなことはみじんも感じさせない。むしろ、上下動が少なくて快適に感じるほど。
路面の状況や走行状態によって電子制御で可変にするサスペンションが、しっかり感と快適性を両立するマジックのカギだろう。
絶妙なハンドリング
首都高速の中速コーナーの連続は、ちょっと不思議な体験だった。ステアリングホイールを切れば切っただけ、正確に向きを変える。ステアリングホイールの手応えも、路面や車両の状態を適切に伝えるものなので、自信を持って操舵できる。
先に記したようにエンジンの音もフィーリングもスポーティーだから、走っている限りは出来のいいスポーツカーを運転しているような気分になる。でも、目線の位置は高くて、コンパクトカーを見下ろしている。スポーツカーとかSUVとか、旧来のクルマのカテゴリー分けなんて、意味がないのかもしれないと思わされる。
技術の進歩とは素晴らしいもので、少なくとも公道を走るレベルであれば、背が高かろうが低かろうが大差のない操縦性を味わえるのだ。参考までに、試乗車には車速とステアリングホイールの切れ角に応じてステアリングギアボックスのギア比が変わるダイナミックステアリングがオプションで装備されていたから、その効果もあるのだろう。
4つのモードから選べるAudiドライブセレクトを操作して「Auto」モードから「Dynamic」モードに変えてみると、ステアリングホイールの手応えが少し重くなり、アクセルを踏み込んだ時のキックダウンでギアを落とすレスポンスが鋭くなる。
一方、そこから「Comfort」にシフトすると、ぐっとやさしい印象になるから、この手の仕組みとしてはかなり変化の幅が大きい設定になっていると感じた。
全方位的に隙なし
しかし、乗れば乗るほど、つくづく不思議なクルマだ。オプションのダイヤモンドステッチをあしらったファインナッパレザーのシートは実にエレガントで、泥んこは絶対に似合わない。見かけはSUV、座れば高級車、走ればスポーツカー。
「ある人は足が太い動物だと言い、またある人は鼻が長い動物だと言い、さらにもうひとりは尻尾の短い動物だと言った」という、象にまつわる笑い話を思い出す。でも、高度に洗練された、全方位的に隙のないモデルであることは間違いない。
隙がないということだと、自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能も最新のものが備わる。ただしこちらに関しては、現代のプレミアムカーの水準を満たしていることを確認した後は、カットしてしまった。
なぜなら、アクセルペダルを踏むことやステアリングホイールを切るという行為が、あまりに楽しすぎたから。クルマ好きの知り合いが、やはりエンスーなイタリア人から「運転みたいに楽しいことを機械やコンピューターに任せるなんてバカだろう。食事やセックスを機械にやらせるか?」と言われたというエピソードを思い出した。
クルマ好きと自動運転について、というメンドくさいテーマに突入してしまうぐらい、アウディSQ5には感銘を受けた。
試乗車を受け取った時には、車両本体価格で887万円、オプション込みだと992万円という価格にびっくりしたけれど、性能だけでなくタッチやニュアンスといった部分まで愛(め)でるようにつくられていることがわかった後では、値札にも納得だ。ま、払えるわけではありませんが。
予算が1000万円であれ100万円であれ、クルマ選びの楽しさは変わらないと思う。とはいえ、アウディSQ5に「レンジローバー ヴェラール」に「マセラティ・レヴァンテ」、それにアルファのSUVも間もなくデビューと、この価格帯のSUV選びができる方は、目が回ってうれしい悲鳴をあげてしまうと推測する。
(文=サトータケシ/写真=阿部昌也/編集=大久保史子)
テスト車のデータ
アウディSQ5
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1900×1635mm
ホイールベース:2825mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:354ps(260kW)/5400-6400rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm
タイヤ:(前)255/40R21 102Y/(後)255/40R21 102Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.9km/リッター(JC08モード)
価格:887万円/テスト車=992万円
オプション装備:ボディーカラー<デイトナグレーPE>(9万円)/アシスタンスパッケージ<リアサイドエアバッグ+バーチャルコックピット>(14万円)/ダイナミックステアリング(16万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンスドサウンドシステム(18万円)/ファインナッパレザー<ダイヤモンドステッチ>(14万円)/カラードブレーキキャリパー レッド(6万円)/プライバシーガラス(8万円)/5アームポリゴン 8.5J×21 255/45R21<Audi sport>(20万円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1919km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:378.2km
使用燃料:42.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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