スバルが世界初公開した3列シートSUV「アセント」。
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「スバル・アセント」に「インフィニティQX50」、マイナーチェンジを受けた「マツダ6(アテンザ)」と、注目車種がめじろ押し。ロサンゼルスモーターショー(LAショー)の会場より、現地ですっかりメジャープレーヤーとなった日本メーカーの展示の内容を、海外メディアの反応とともにお届けしよう。
映画『スター・ウォーズ』とコラボレーションした日産の展示エリア。
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北米への導入が発表されたコンパクトSUV「日産キックス」。
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全長約4.3mというコンパクトなサイズが特徴の「キックス」。このジャンルは、小型クーペに代わる新しい“セクレタリーカー”として期待されている。
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新型「インフィニティQX50」。従来モデルとは異なり、エンジン横置きのFFプラットフォームを採用している。
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“く”の字型のCピラーは、インフィニティの最新モデルに共通するデザインである。
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新型「QX50」に搭載される、可変圧縮比エンジン。
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スバルの新しい3列シートSUV「アセント」。ちなみに、日本への導入は想定していないとのこと。
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「アセント」のインストゥルメントパネルまわり。
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「レクサスRX350hL」のカットモデル。3列シートの「RX」は、日本ではハイブリッドの「RX450hL」のみが販売される。
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トヨタが発表したコンセプトモデル「FT-AC」。
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オフロードイメージを強調するデコレーションが目を引く「FT-AC」だが、“素”のフォルムは、ひょっとしたら次期型「RAV4」のデザインを示唆しているのかもしれない。
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マツダが出展した「マツダ6(日本名:アテンザ)」のマイナーチェンジモデル。
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「トヨタ・カムリ」と並び、北米のミドルクラスセダン市場で高い人気を誇る「ホンダ・アコード」。
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独立したトランクを持ちながら、ハッチバックやクーペを思わせるスタイリングとするのが、今の北米におけるセダンのトレンドのようだ。
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海外で人気を博す日産&インフィニティ
地元のジャーナリストに聞けば、今や米国市場のトレンドは、趣味性の高いスポーツカーを別格とすれば、「ほぼSUV一色だ」と言えるとのこと。LAショーの会場を見れば、アメリカンブランドをはじめ、北米を主戦場とする日本の各自動車メーカーも確かにSUVのラインナップが多いと実感できる。ざっと眺めて気づくのは、ミニバンの乗り換え需要としてリクエストされる「3列シート」、そして「コンパクト」なサイズがキーワードになっているという点だ。
例えば日産。映画『スター・ウォーズ』の最新作(12月15日より日米同時公開)とのコラボコンセプトカーはさておき、北米市場向けとして新たに登場したのが「日産キックス(KICKS)」である。勘の良いマニアなら気づいたと思うが、こちらは南米で販売されている(2017年春からは中国市場でも販売開始)コンパクトSUVであり、決して「三菱パジェロミニ」の日産版である軽自動車の「キックス(KIX)」ではない。念のため。
北米版「キックス」のパワープラントは1.6リッターの直4エンジンにCVTの組み合わせで、最高出力は125ps。Vモーショングリルを採用したフロントフェイスを持つエクステリアは、前後のオーバーハングも短く個人的には悪くないデザインだと感じた。約4.3mのコンパクトなボディーサイズも強みで、北米ではこれまでのコンパクト2ドアクーペ(主にオシャレな職業の女性が好んで乗るというイメージ)に代わる存在として期待されているという。日本でも「デュアリス」なき後、大柄な「エクストレイル」では選びづらいというユーザーにウケそうなサイズ感だ。
一方、同じ日産が擁する高級ブランド、インフィニティから登場したのが高級SUVのQX50。こちらは、かつて日本にも「スカイラインクロスーバー」として導入されていたモデルの後継車。フロントフェイスはもちろんのこと、リアのルーフスポイラーまでデザイン要素として取り入れたZ形のCピラーも、先行する「QX30」や「QX60」に準じている。ユニークなのが可変圧縮比エンジンの採用で、こちらは量産車初の技術。圧縮比を8から14の間で可変させ、効率的なパワーや燃費を実現したという。
北米でのインフィニティ人気は日本でわれわれが考えている以上で、レクサス、アキュラ、インフィニティの日本のラグジュアリーブランド御三家のなかでも、「今最もデザインがいい」とは前述の地元ジャーナリスト氏の弁。たまたま別のイベントで同席した韓国人の自動車メディア担当者も、「インフィニティは韓国市場でもクールなイメージで人気」なのだとか。日本で本格展開されないのがつくづく残念である。
北米市場のSUVに見る新しい潮流
その日産と同じく、いまや日本市場よりも北米が主戦場といえそうなスバルは、「トライベッカ」の後継となる北米専用3列シートの大型SUV、アセントを“ワールドプレミア”させた。スバルにとって北米は、販売比率の7割近くを占めるという重要なマーケットだけに、気合の入れ方もハンパではない。全長×全幅×全高=4998×1930×1819mm、ホイールベース2800mmという立派な体格と、一連のスバルラインナップと共通するモダンなデザインは、「アウディQ7」や「ボルボXC90」といった3列シートを持つプレミアムSUVと比べてもなんら見劣りしない。エンジンには2.4リッターの水平対向4気筒ツインスクロールターボを搭載し、最高出力は260psというスペック。もちろん、スバル自慢のシンメトリカルAWDやアイサイトも搭載。ヒットの予感しかしないモデルだ。
3列シートでいえば、トヨタのプレミアムブランド、レクサスも、3列シートモデル「RX L」を今回のLAショーで発表した。こちらは前述の北米専用車となる日産/インフィニティやスバルの発表モデルとは異なり、日本市場にも導入されるモデルだ。ボディーを110mm延長し、電動格納式の3列目シートを追加。2列目にはベンチシートとキャプテンシートの2バリエーションを採用している。ガソリンエンジンの「RX350L」とハイブリッドの「RX450hL」の2グレードを、ともに4WDでラインナップした。
さらにトヨタでは、コンパクトSUVのコンセプトモデル「FT-AC」を発表している。この車名は、「トヨタフューチャーアドベンチャーコンセプト」の頭文字をとったもので、オフロード志向をより強めたモデルであることを表現している。いかにも悪路走破性が高そうなロードクリアランスと、20インチのオフロード用タイヤ、オーバーフェンダー、前後に組み込まれたけん引フックなどによってタフなイメージを表現しているが、これは次世代コンパクトSUV=次期「RAV4」のデザインプレビューとみるのが妥当だろう。「FT-AC」からオフロード用の化粧をとったスッピンを想像すると……いかがだろう? 「C-HR」が絶好調の日本市場に再びRAV4が導入されるかどうかは微妙だが、続報に期待したいモデルだ。
セダンのトレンドはクーペライクなスタイリング
このほかにも、セダンもまだまだ終わっていないことを主張するかのように、マツダは内装の質感を大幅に向上させ、エクステリアを洗練させた(メッシュグリルを採用し、顔つきを新型「CX-5」に寄せた)、マツダ6(アテンザ)のマイナーチェンジモデルを、ホンダは「アコード」のフルモデルチェンジ版を発表した。
アコードは、一見ファストバックのエクステリアデザインに見えるが、これまでどおり独立したトランクスペースを持っている。どうやら、この“セダンのハッチバック風デザイン”が今ドキの北米でのトレンドとなっているもようで、日本でも販売を開始した同門の「ホンダ・シビックセダン」はもちろんのこと、ライバルと目される「シボレー・マリブ」やひとクラス上の「トヨタ・アバロン」も同様なデザイン手法を取り入れている。先日日本でも販売が開始された、アコードのガチのライバルである「トヨタ・カムリ」もそれに近いフォルムと言えなくもない。
かくして、かつてはミニバン一辺倒だったブームははるか過去のものとなり、SUVはコンパクトモデルと3列シートが、セダンはクーペライクなデザインがトレンドと、種の保存よろしく独自の進化を遂げる世界有数の北米マーケット。日本にいるだけでは見ることもできないクルマも数多く、外に出れば道行くクルマを眺めるだけでも、マニアは相当に楽しい時間を過ごせるのである。
(文=櫻井健一/写真=webCG/堀田剛資)
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