ボルボXC40 T5 AWD R-DESIGN(4WD/8AT)/XC40 D4 AWDモメンタム(4WD/8AT)
ボルボらしさが詰まってる 2017.12.28 試乗記 まったく新しいプラットフォームをベースに開発された、ボルボの新世代SUV「XC40」。カジュアルでアクティブな雰囲気をまといつつも、端々に“今時のボルボらしさ”を感じさせるニューモデルの出来栄えを、バルセロナの地で試した。キーワードは“スニーカー”
2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤーを「ボルボXC60」が受賞した。ボルボとしては初めて、輸入車としても2度目の頂点は、選考委員のひとりである僕も驚きの結果だった。
しかし冷静になって考えるにつれ、XC60は価格こそ高いものの、北欧生まれであることを実感するシンプルで温かみのあるデザイン、新世代プラットフォームによる乗り心地とハンドリングのバランス、ボルボが以前から熱心に取り組んできた安全性など、あらゆる要素が高次元でまとまっており、受賞は妥当だと思えるようになってきた。
となると、ここで紹介するXC40はさらなる評価を獲得するのではないか。スペインからの独立問題で揺れるカタルーニャの中心都市、バルセロナにて催された国際試乗会で実車に触れ、そう思った。
気になるデザインは、「XC90」からこちらの流れを受け継ぎながら、車格にふさわしいカジュアルな雰囲気をも身につけていた。ボルボでは3系統のラインナップを靴にたとえており、「90」シリーズは革靴、「60」シリーズはスエードのシューズ、そして「40」シリーズは高級ブランドのスニーカーをイメージしている。たしかにXC40は「ボルボのスニーカー」という雰囲気がする。
サイドウィンドウ後端のキックアップはさらにダイナミックだし、サイドシルの抉(えぐ)りも明確。このサイドシルで用いた台形のモチーフを前後のフェンダーやアンダーグリル、リアパネルなど各部にちりばめていることも、アクティブな雰囲気につながっている。
“コンパクト”だけど、ちょっと大柄
さらにルーフを塗り分けたツートンカラー、クラシックな雰囲気を醸し出すプレーンなリアパネルなど、新世代ボルボの文法の上に立ちながら、エクステリアは遊び心あふれるデザインにまとめてあった。「R-DESIGN」のアクセントカラーが、シルバーからピアノブラックになったことも特徴だ。
ちなみに、ボディーサイズは全長4425mm、全幅1863mm、全高1652mmで、同じセグメントのライバルである「アウディQ3」や「BMW X1」と比べると、幅と高さで上回る。このクラスのSUVでは大柄な部類に入るようだ。
インテリアはそれに比べると、XC90で確立した造形をほぼ継承している。プレゼンテーションではカーペットにオレンジを用いた、かつての「C30」を思わせるコーディネートも紹介されたが、試乗車はブラック基調が多かった。
縦長のセンターディスプレイや扱いやすいステアリングスイッチなど、新世代ボルボのインテリアは高い評価を受けているので、大きく変える必要はないと僕も考える。そのうえで、ステアリングはリムを太くし、センターパネルはドライバー側に傾けさせ、電気式となったセレクターレバーはサイズも小柄なものとするなど、キャラクターに合わせたデザインも盛り込んでいる。四角いノブを右にひねるスタータースイッチ、ジョグダイヤルを思わせるドライブモード切り替えのスイッチがシンプルなプッシュボタンになったのも、車格に合わせた結果だという。
センターコンソール奥のスペースは、スマートフォンの非接触充電が可能になった。同乗者の「iPhone」が最新の「X」だったので置いたところ、すぐに充電が始まった。優しさを感じる空間でありながら最新トレンドを巧みに取り込む、いまのボルボの方向性が理解できた。
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ユーティリティーも申し分なし
XC60では90シリーズと共通だったシートは専用品になったが、優しい着座感はボルボそのもの。後席は座面が短めだが、身長170cmの僕が前後に座るとひざの前には約15cmの空間が残り、頭上も余裕があった。
ボルボというとワゴンのユーティリティーが自慢。このXC40の荷室も、容量は460リッターと広大というわけではないけれど、フロアを2つ折りにして立て掛けるとコンビニフックが出現するなど、よく考えられている。さらに目を引くのは大きなドアポケット。いろいろな物を入れたいという現在の若者の要望に応えたそうだ。
今回乗ったのは2リッター直列4気筒ガソリンターボの「T5」とディーゼルターボの「D4」だ。いずれも8段ATを組み合わせたAWD(全輪駆動)で、グレードは前者が20インチのホイール/タイヤを履く「R-DSIGN」、後者は19インチを履く「モメンタム」というカジュアルグレードだった。
車両重量は1684~1733kg。日本仕様の「XC60 T5 AWD」は1830kgである。ディーゼルのほうが力に余裕はあるものの、ガソリンエンジンでも加速は十分だ。
高めのインパネに対して低めに座るシートのためもあり、バルセロナの市街地では幅が気になることもあった。でも高速道路に乗り、郊外の一般道を駆け抜けていくというルートの中で、印象はどんどん好転していった。XC40は、XC90やXC60が用いる「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」とは異なる、新開発の小型車用プラットフォーム「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」を初採用している。これの出来がXC60に劣らぬほど素晴らしかったのだ。
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今時の“ボルボらしさ”を存分に味わえる
小型ということで乗り味が安っぽくなっているのではないかという先入観は杞憂(きゆう)に終わった。乗り心地はボルボらしく穏やかでしっとりしており、長距離をリラックスして走ることができる。とりわけ19インチを履くモメンタムが、ロードノイズの遮断を含めて心地よかった。
そのうえで、XC60より150mm以上短いホイールベースのおかげで、身のこなしは軽快。とりわけノーズの軽いガソリン車はその印象が強く、ボルボとしてはかなり爽やかな走行感だった。なおかつ、その足まわりは適度なロールとしっとりした接地感をもたらしてくれるので、サイズを超えた深みも伝わってくる。
ボルボ自慢の安全装備も、ステアリングアシストを含めたアダプティブクルーズコントロール、交差点で出合い頭の衝突などを防ぐ衝突被害軽減ブレーキなど、上級車種に匹敵する内容を備えている。
日本ではまずT5のR-DESIGNが2018年5~6月に発売予定。D4の導入は検討中で、ほかにガソリンの3気筒ターボや電気自動車、マイルドハイブリッドの導入計画もあるという。気になる価格は300万円台スタートという予想が有力だ。XC60はやや高価で手が届かないという人にとって、新世代ボルボのデザインと走りを味わう絶好の一台ではないかと思った。
(文=森口将之/写真=ボルボ、森口将之/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ボルボXC40 T5 AWD R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1863×1652mm
ホイールベース:2702mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:247ps(182kW)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)245/45R20/(後)245/45R20
燃費:8.3-9.1リッター/100km(約11.0-12.0km/リッター、WLTCモード)
価格:--万円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ボルボXC40 D4 AWDモメンタム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1863×1652mm
ホイールベース:2702mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/50R19/(後)235/50R19
燃費:6.4-7.1リッター/100km(約14.1-15.6km/リッター、WLTCモード)
価格:--万円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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