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第469回:サーキット走行の“イロハ”を学ぶ
NISMOドライビングアカデミーに参加して

2018.01.13 エディターから一言
NISMOドライビングアカデミーに挑戦する筆者。車両だけでなく、ヘルメットとグローブも借り物という“サーキット初心者”である。
NISMOドライビングアカデミーに挑戦する筆者。車両だけでなく、ヘルメットとグローブも借り物という“サーキット初心者”である。拡大

2017年末に富士スピードウェイで開催された、NISMOドライビングアカデミーをwebCG記者が受講。現役のSUPER GTドライバーらによる指導を受けて、運転スキルはどれだけ向上した!?

開会のあいさつに立ったNISMOの片桐隆夫社長。「お客さま向けのアカデミーでも、まずはサーキット走行のリスクを説明するところから始めています。皆さん、安全に楽しんでください」と語った。
開会のあいさつに立ったNISMOの片桐隆夫社長。「お客さま向けのアカデミーでも、まずはサーキット走行のリスクを説明するところから始めています。皆さん、安全に楽しんでください」と語った。拡大
アカデミーの概要を説明するミハエル・クルム校長。「サーキット走行なので、普段は使わないABSなどの出番もあると思います。松田選手は日常的に使っているようですが」と、笑いを誘った。
アカデミーの概要を説明するミハエル・クルム校長。「サーキット走行なので、普段は使わないABSなどの出番もあると思います。松田選手は日常的に使っているようですが」と、笑いを誘った。拡大
写真左から千代勝正選手、佐々木大樹選手、星野一樹選手、ミハエル・クルム校長、松田次生選手、藤井誠暢選手。豪華すぎる講師陣である。
写真左から千代勝正選手、佐々木大樹選手、星野一樹選手、ミハエル・クルム校長、松田次生選手、藤井誠暢選手。豪華すぎる講師陣である。拡大
会場に並べられた現行NISMOロードカーのラインナップ。最新モデルである「セレナNISMO」がセンターを占めている。
会場に並べられた現行NISMOロードカーのラインナップ。最新モデルである「セレナNISMO」がセンターを占めている。拡大

サーキット走行を始めたい方に

NISMOドライビングアカデミーとは、NISMOが2017年から始めたドライビング教室で、パンフレットには「これからサーキット走行を始めたい方」向けと記されている。富士スピードウェイのほか、SUGOや岡山国際、鈴鹿などのサーキットを中心に、日本全国で順次開催されており、参加可能な人数は各回おおむね20人~30人ほどである。アカデミーの校長はミハエル・クルム選手、講師はSUPER GTなどでおなじみのNISMOの現役ドライバーが務めており、今回は松田次生選手、藤井誠暢選手、千代勝正選手、星野一樹選手、佐々木大樹選手からレッスンを受けることができた。

ちなみに誰でも受講できるというわけではなく、参加できるのはNISMOロードカー、または「日産GT-R」か現行型「日産フェアレディZ」(「ロードスター」を除く)のナンバー付き車両をサーキットに持ち込めるオーナーに限られる(今回はプレス向けに実施されたため、各媒体の記者がNISMO側が用意してくれたクルマで参加した)。対象車両であっても違法改造を施しているものは参加不可とされている。

プログラムは3段階に分けられており、サーキット走行未経験者を対象に、まずはスポーツドライビングの基礎を学び、自分のクルマの性能をミニコースや広場を使って安全に体感できる「ステージ1」、ステージ1で得たスキルを元にサーキットの走り方を練習し、低速から中~高速での同乗走行や先導走行を行う「ステージ2」、そして講師のアドバイスを受けながら、スポーツドライビングを楽しみつつドライビングテクニック向上を目指す「ステージ3」がある。サーキット走行でのタイム計測も楽しめるステージ3に参加するためには、ステージ1とステージ2を修了する必要がある。

この日はステージ1と2を体験することができたのだが、さらにプレス向けに特別な内容が追加されていた。ステージ1で習得する内容を組み合わせたパイロンコースを、プログラム受講前と受講後に周回してタイム計測を行うことで、自分がどれだけ上手になったかが数字で分かるようになっていたのである。これはNISMOドライビングアカデミーとしても初めての試みだそうで、「皆さんがうまくなってくれたことが数字で分かると、われわれの励みになりますので」ということだった。

まずはステージ1に挑戦

まずは何の指導も受けない状態でパイロンコースでのタイム計測に挑戦。使用するクルマはすべてのプログラムを通じて「ノートe-POWER NISMO」である。計測は2度行われ、筆者のタイムは1度目が1分01秒02、2度目が1分00秒02という結果だった。良かった方のタイムを比較しての順位は、参加21人中18番目。正直ショックだったが、プログラム終了後の計測では、成績上位の人に加えて、最もタイムを短縮した人も表彰されるということなので、ある意味で“圏内につけた”ともいえるだろう。

というわけで、パイロンコースでのタイム短縮を目指して、まずはステージ1を受講する。その中身は「フル加速からのフルブレーキ」「定常円旋回」「Jターン」というもの。

フル加速からのフルブレーキを行う前に、クルム校長からは「急に子どもが飛び出してきた! というくらいの気持ちでブレーキを踏み、ABSが作動していることを確認してみてください」とアドバイスを受ける。本当にサーキット初心者の目線でプログラムが組まれていることを実感する。

いざやってみると、自分ではうまくできたつもりだったのだが、プロドライバーの目はごまかせない。すぐさま星野選手(先生?)がクルマに走りよってきて「フル加速はいいんですけど、ブレーキがちょっと弱いですね。もっとガツンと踏めるはずです。あと、シートポジションが合ってないかも。ブレーキを踏んだ時の勢いで顔が下を向いてしまうと、前が見えなくなってしまうので、もっとシートに体を押し付けられるように」とアドバイスし、ポジションを合わせてくれたのだった。

そしてアドバイスを踏まえて2度目に挑戦する。終わると再び星野選手が「さっきよりも全然いいですね。制動距離も短くなってましたよ。今後は、ペダルを踏み換えるスピードなども意識してみてください」とアドバイスをくれた。

この、実践→アドバイス→実践→アドバイスという流れはプログラムを通して一貫されていた。しっかり見ていてくれることがうれしいし、きちんとしたアドバイスをもらって次に臨めることが楽しい。ちなみに今回はどのメニューも2回ずつの体験だったが、一般参加者向けの時には、もっと多くの回数を行っているそうだ。

「ノートe-POWER NISMO」に乗り込み、順番を待つ。
「ノートe-POWER NISMO」に乗り込み、順番を待つ。拡大
タイム計測に挑戦する筆者。自分ではそこそこのタイムで走れたと思ったのだが、21人中18番目という結果に意気消沈。
タイム計測に挑戦する筆者。自分ではそこそこのタイムで走れたと思ったのだが、21人中18番目という結果に意気消沈。拡大
ステージ1の最初は、停止状態からのフル加速とフルブレーキングに挑戦した。
ステージ1の最初は、停止状態からのフル加速とフルブレーキングに挑戦した。拡大
星野選手からアドバイスを受ける。走るクルマを外から見ただけで、シートポジションが合っていないことを見抜いてしまうとは……。
星野選手からアドバイスを受ける。走るクルマを外から見ただけで、シートポジションが合っていないことを見抜いてしまうとは……。拡大

そして舞台はショートサーキットへ

先ほど学んだことを、次の定常円旋回に生かす。すなわち、旋回を始めるポイントまでなるべく速く走って(フル加速)、素早く減速(フルブレーキング)ということである。そして次は定常円旋回で学んだ「旋回できるスピードを体で覚えること」「タイヤの限界を知り、必要な時はアクセルを抜くこと」「ステアリングだけで曲げようとせず、アクセルで曲げていく感覚をつかむこと」といったことを、最後のJターンで生かす。すべて順序立てて学べるようになっているのである。

こうしてステージ1を通じて、加速、減速、コーナリングという運転に必要な3つの要素を、(程度の差はあるが)ひと通り学べたことになる。

必要な要素を学んだということで、舞台をショートサーキットへと移してステージ2に挑む。ステージ2は低速での同乗走行、先導走行、レーシングスピードでの同乗走行の順に行われる。

低速での同乗走行でコースのポイントなどを教えてもらい、いよいよ約10分間の先導走行へ。以前にカート大会に参加した時も感じたことだが、運転がうまくなるためには、うまい人の後ろを走ることが一番だと思う。今回も千代選手の先導するクルマの後ろを走ることで、自分でも驚くくらいスムーズに走ることができた。コーナーとコーナーのつなげ方とか、ブレーキのポイントとか、いわゆるレコードラインを走ることが、目の前を走るお手本と同じようにすることで、いとも簡単にできてしまうのだった。

ステージ2の最後は、レーシングスピードでの同乗走行である。筆者は佐々木選手の駆る「マーチNISMO」の助手席に乗り込む。走りだすと、これは強烈だ。先ほど自分でも走ったはずのラインを、まるでレベルの違う速度で駆け抜ける。このプログラムに関しては、通常はなるべく参加者の所有するクルマと同じ車種で行うようにしているという。そうすることで「あなたのクルマ、ここまで速く走れるポテンシャルがあるんですよ」とか、「クルマの限界はこのあたりですよ」ということを参加者に感じてもらうためだそうだ。

ステージ2の最初は、ゆっくりとした同乗走行でコースの解説を受ける。
ステージ2の最初は、ゆっくりとした同乗走行でコースの解説を受ける。拡大
千代選手から解説を受ける筆者。レコードラインは最も速く走れるラインであると同時に、最も安全に走れるラインでもあるそうだ。
千代選手から解説を受ける筆者。レコードラインは最も速く走れるラインであると同時に、最も安全に走れるラインでもあるそうだ。拡大
「GT-R NISMO」の先導でショートコースをドライブ。写真右手、「ダークメタルグレー」の「ノートe-POWER NISMO」が、筆者の駆るマシンである。
「GT-R NISMO」の先導でショートコースをドライブ。写真右手、「ダークメタルグレー」の「ノートe-POWER NISMO」が、筆者の駆るマシンである。拡大
ステージ2の仕上げはレーシングスピードでの同乗走行体験。佐々木選手のドライブする「マーチNISMO」は、筆者には信じられないようなスピードで周回を重ねた。
ステージ2の仕上げはレーシングスピードでの同乗走行体験。佐々木選手のドライブする「マーチNISMO」は、筆者には信じられないようなスピードで周回を重ねた。拡大

2度目のタイム計測の結果は……

最後は舞台を再びパイロンコースへと移し、タイム計測に挑戦する。会場では実況中継が行われており、「○○マガジンの××さん、朝の挑戦よりも2.5秒もタイムを短縮しました」という具合に会場を盛り上げている。

後ろに引っ張っても仕方がないので先に書かせていただくと、筆者は2度挑戦して2度ともミスコースだった(涙)。言い訳も書かせていただくと、朝にやった時よりもうまく走れるのが楽しく、1度目は定常円旋回に集中しすぎて、次にどこへ向かったらいいのか分からなくなってミスコース、2度目はJターンをうまくできたことがうれしく、次の定常円を右から回るのか左から回るのか忘れてしまい、「ええい、ままよ」と2分の1の確率にかけたら逆だったのだ。というわけで、“記録なし”という不名誉な結果に終わってしまった。熱心に教えてくれた講師の皆さん、本当にすいませんでした。

しかし、後日配布された資料で全参加者の記録を見ると、21人中17人が午後の計測でタイムを短縮していた。記録なしが筆者のほか1人、午前と午後で同タイムが1人で、遅くなったのは1人(それもわずか100分の18秒)だったのだ。筆者のような愚か者を責めるのはいつでもできるので、まずはNISMOドライビングアカデミーのプログラムの素晴らしさをたたえるのが先ではないだろうか。実際、これほどの結果が出たことにはスタッフも驚きだったようで、「今後のアカデミー運営の励みになります」と話してくれた。

ちなみに、通常の参加費用はステージ1とステージ2がそれぞれ1万5000円、1と2を同時に受講すると2万5000円、ステージ3は3万円である。参加可能な人数が20人~30人で、サーキットを使用して行われることや超豪華な講師陣の顔ぶれを考えると、出血大サービスのイベントなのである。その点についてスタッフに聞いてみると、「スポーツモデルを買っても、走らせるところがないという声をよく聞いていたんです。だったら、NISMOの側が用意してあげようという感じで立ち上げた企画です。(スポーツ走行をしても)安全なサーキットで、思い切り楽しんでもらえたら、こんなにうれしいことはありません」だそうである。

各種表彰を終えると、最後にクルム校長が総評を語ってくれた。「朝はムキになって攻めすぎている人が多かったけど、みんなクルマの限界を知ることでタイムが良くなった。いいドライバーになったと思います」。言われてみれば、今回のプログラムを通じて学んだことは、“ブレーキの限界”や“タイヤの限界”“ステアリングだけで曲げる限界”といった“限界”を感じ取る内容ばかりだ。ショートサーキットでの同乗走行でも、“クルマ全体の限界”を感じられるようになっていた。“まずは己を知る”、これこそがサーキット走行への第一歩ということではないだろうか。

さらにクルム校長が続けた。「あと、よくあることなので、道を間違えるのは気にしないでほしい」。校長、お気遣いありがとうございます……。

(文=webCG 藤沢 勝/写真=向後一宏)

ステージ1、2を終えて、本日の総仕上げである2度目のタイム計測へ。
ステージ1、2を終えて、本日の総仕上げである2度目のタイム計測へ。拡大
定常円旋回に挑む筆者。朝にトライしたときよりも格段にうまく回れたことが楽しく、集中しすぎたため、このあとの進路を間違えてしまった(言い訳)。
定常円旋回に挑む筆者。朝にトライしたときよりも格段にうまく回れたことが楽しく、集中しすぎたため、このあとの進路を間違えてしまった(言い訳)。拡大
すべてのプログラムを終え、ミハエル・クルム校長から総評をいただく。サーキット走行のキモとは、“限界を知ること”なのだ。
すべてのプログラムを終え、ミハエル・クルム校長から総評をいただく。サーキット走行のキモとは、“限界を知ること”なのだ。拡大
タイム計測は“記録なし”に終わった筆者だが、ステージ1と2を受講したため修了証が与えられた。これを持っていれば、本コースでのタイム計測などができるステージ3に挑むことができるのだ。(著者撮影)
タイム計測は“記録なし”に終わった筆者だが、ステージ1と2を受講したため修了証が与えられた。これを持っていれば、本コースでのタイム計測などができるステージ3に挑むことができるのだ。(著者撮影)拡大
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