第22回:車検だヨ! 全員集合(前編)
2018.02.07 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
今日も元気にハイオクガソリンを鯨飲(げいいん)する「ダッジ・バイパー」が、わが家にきて最初の車検に挑戦! 昨年あらかたのトラブルを解消した(はずの)わが相棒だが、無事に車検をパスすることはできるのか? できるわけないよな!
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ガソリンは燃やすためにある
読者諸兄姉の皆さま、こんにちは。webCGほったです。年が明けたと思っていたら、いつの間にやら1月が過ぎ去っちまった事実に愕然(がくぜん)としている今日この頃。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
記者とバイパーは相変わらず。池袋まで岩合光昭氏の写真展を見に行ったり、東八道路沿いのラーメン屋にラーメンを食いに行ったり、実家にちょいと顔を出したりと、オドメーターに遠慮することなく週末ごとに東奔西走している。
もとよりわが機動部隊は、こやつのほかはバイクが1台と自転車が1台(オーナーの都合によりほぼ不動)という陣容。冬ともなれば、いかに不便で燃費極悪といえど、バイパーも“普段のアシ”として駆り出さねばならないのだ。そんなわけで、ここ最近は実燃費が順調に下降。給油ごとに平均燃費を計ってみると、街乗り主体で使用した際に3.14km/リッターと、久々に「すわ2キロ台突入か」という数値を記録してしまった。
もっとも、この燃費悪化は、下道をだらだら走る機会が増えたことだけが原因ではなさそう。少なくとも、昨年夏にタイヤを競技用に履き替えたことも影響しているはずだ。交換して間もなく長期入院となったため、当時は変化に気づかなかったが。
そして、もうひとつ記者が「燃費に影響しているんじゃないの?」と考えているのが、自身の運転の変化である。結論からいうと、あんまりスキップシフトしなくなったのだ。
漢(おとこ)のV10 OHVに見る文明社会の弊害
以前にも紹介した通り、バイパーの6段MTには、停車状態から加速する際に、2速のゲートをふさいで1速から4速へスキップシフトさせようとする、シフトブロック機能が付いている。理由はもちろん燃費が悪すぎるから。正直、あのアメリカ人がこんなモン付けなきゃと思うほどなんだから、バイパーさんの燃費も大したものだ。
とはいえ、こんなことしていたらスポーツ走行もゼロヨンもできゃしない。当然のことながら、スキップシフトには回避する方法がある。観察したところ、この機能はエンジンの回転数やアクセル開度、車速などに応じてゲートを閉じているようなので、例えば「車が動き出したらすぐに2速に入れてしまう」、逆に「シフトブロックが解除されるまで1速で引っ張る」という方法で、1速から2速へとシフトできるわけだ。
で、記者の運転に話を戻すと、以前はシフトブロック任せに1速→4速とスキップシフトしていたのだが、最近はおよそ半々の割合で、スキップしないで1速→2速とシフトするようになったのだ。なんでかというと、V10エンジンの「グワー!」という回転が、キモチ良く感じられるようになったからである。
昨年リポートさせていただいた通り、記者のバイパーは実は盛大な排気漏れを起こしており、2カ月にわたる入院を経てその症状を直してもらった。そうしたら、エンジンの回転フィールも少なからず変わったのだ。以前の「ズボボー!」という感覚もおっかない迫力があってよかったのだが、どちらの方が回転数が上がっていく様を楽しめるかといえば、断然、今。だからこそ、スタート時に1速、2速と引っぱるようになり、スキップシフトをしなくなり、結果として実燃費が悪化したのだ。
こうして、今やすっかり地球にもお財布にも厳しい男となってしまった記者だが、一度快楽を知ったら後戻りできないのは文明に生きる人の性(さが)。スポーツカーに乗ってんだからこのくらいいいじゃないのと、引かぬ、媚(こ)びぬ、顧みぬの精神で、今日もスキップシフトを拒否しているのである。
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期間限定でメルセデス・ベンツ オーナーに
このように、2018年になってからも元気にハイオクガソリンを鯨飲していたわがバイパーだが、この1月13日、記者の手元から旅立っていった。といっても別に売っぱらってしまったわけではなくて、わが家にきて初の車検を迎えたのである。代わりにわが家の(?)契約駐車場には、“代車”の「メルセデス・ベンツBクラス」が鎮座ましましている。
前回の長期入院でも代車なんて借りなかった記者が、なぜ今回に限って代わりのクルマのお世話になっているのか? その原因は年始早々やってしまった失態にあった。要するに、車検切れの日付を間違えていたのだ。どうしたわけか、フロントウィンドウの“車検シール”を見て、「平成30年1月」を「1月30日」と勘違いしていたみたいである。ギョーカイ関係者としては考えられないようなミスだが、シールをチラ見した際の情報が、誤った形で脳にインプットされていた様子。車検の予約を電話で入れるまで、何の疑いもなく勘違いしたままだった。で、車検切れのまさに前日に問題が発覚。いつもお世話になっているコレクションズさんに、大慌てで入庫することとなった。
突然のスケジュール変更にも笑顔(おそらく苦笑い)で対応してくれたコレクションズ本多さんだが、実際に伺ってみると、相模原の工場はクルマでパンパン。わがバイパーを置くスペースを確保するため、記者が代わりのクルマを……すなわち、今回の代車を預かることと相成ったのである。
「申し訳ないんですけど、代車に乗って帰ってください」(本多さん)
代車がなくてゴメンナサイ、という話はまま聞くが、代車があってゴメンナサイというのは今回が初。普段はあまり聞かないような文句に、こちらも恐縮するばかりだ。それに工場にクルマが多いということは、お店が目下ご多忙な証拠。記者の失態は実に間が悪く、非常にメーワクなものだったことだろう。これ以上お仕事の邪魔にならないよう、記者はBクラスのカギを受け取ると、そそくさと相模原を後にしたのだった。
こうして、記者の時ならぬメルセデス・ベンツオーナー(期間限定)としての日々が始まったわけだが、これがまた、なかなかにカルチャーショックな体験だった。
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ちょい古ベンツ、恐るべし
豆大福みたいなナリをしたコンパクトハイトワゴンのBクラスは、世界に冠たる高級車ブランド、メルセデスの中では、ハッキリ言ってどマイナーな存在だ。しかも代車として供されたのは、2006年から2009年まで販売されていたエントリーモデルの「B170」。最低でも9年落ちの、要するに型後れである。Bクラス氏には失礼な話だが、正直なところ記者はなんも期待もしていなかった。
ところがどすこい、これが乗ったら存外にステキだったのだ。これぞゲルマンなボディーの安心感は言わずもがな、しっかり&まったりした乗り心地も好印象。大きな入力があっても痛い系の衝撃はなく、しかもスッと車体の揺れが収まる。コーナリングではすぐにアンダーステアが出て焦るし、切り込んでいくとハンドルの途中に“段付き感”があって「ん?」と思うことがままあるが、それ以外は無問題。ハンドルにはしっかりと重さがあって肩ヒジがラクだし、高速ではダラっと両手を預けているだけでスーっと真っすぐ走ってくれた。遠乗りはさぞ楽なことでしょう。
しかもこれ、オドメーターが8万km超のクルマなんだぜ……。
中古車メディアで働いていた頃の記憶を掘り起こすに、走行距離8万kmといえば、「クルマはアシ」と割り切って乗り継ぐ玄人はともかく、ビギナーなら大抵は敬遠するレベル。かつて実家でこき使われていた「日産ウイングロード」の劣化ぶりを基準とすると、Bクラスはちょっと戸惑うくらいかくしゃくとしていた。
この感じ、「古いクルマとタカをくくっていたら、びっくり」という驚きは、かつてスバルテックツアーでちょい乗りした、先代「インプレッサ」にも感じたものだ。ぶっちゃけ、発売間近の新型に対する“当て馬”として用意されていたっぽい彼なのだが、乗ってびっくり。イベント後の待合室では、知り合いのメディア関係者とともに「今のインプって、こんな良かったっけ?」とヒソヒソ話していた。
腐ってもギョーカイ関係者。乗用車の平均使用年数が13年に迫る昨今では、9年落ちの型後れだって十分現役であることはわかっている。しかし、アタマで知っているのとこうして実体験を得るのとでは、ホントに話が別。普段こうしたクルマに触れる機会が少ないだけに、今回はささやかだけどいい経験になった。ありがとうBクラス。
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今まで車検どうなってたの⁉
このように、記者に新しい気付きをもたらしてくれた“8万km Bクラス”。執筆開始時の計画では、本稿の締めくくりは「別れを惜しみつつお店に返却したのだった」となる予定だったのだが、実はまだわが家にいる。もちろんこれはBクラス氏のせいではなくて、お察しの通り、われらがバイパーが車検から帰ってこないからである。
エンジンの警告灯を含め、昨年散々直した直後の車検である。それこそ1日でカタがつくだろうとタカをくくっていたのだが……。
(1)ヘッドランプのレンズカットができていない
(2)排気音がうるさすぎ
(3)ウインカーをつけたときにポジションランプが消えてくれない
というもろもろの問題が発覚。そして、処々の不具合を告げるSNSのメッセージを最後に、お里の便りも絶え果てた(童謡「赤とんぼ」より)。
いや、まあ。
言いたいことはたくさんあるのだが、取りあえずひとつだけ。
このバイパー、2006年の初度登録ですよね。今まで車検どーなってたの?
……などと聞かれたところでコレクションズさんも困るだけだろう。仕方ないので、ぐっと飲み込む。そして過去オーナー&かつてメンテを請け負ってきたお店に向け、「皆さまのクルマが車検で引っ掛かりますように」という毎秒20Hzの怪電波を送りつつ、今日もBクラスに乗って癒やされることとしよう。
それにしても、あれだけ直したばかりだというのにコレかよ。
こりゃあ、濃厚なドロ泥の香りがプンプンするぜ。
(webCGほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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