ジャガーEペースR-Dynamic S P300 AWD(4WD/9AT)/EペースS D240 AWD(4WD/9AT)
ヒットの予感 2018.02.21 試乗記 ジャガーの新型コンパクトSUV「Eペース」がいよいよ公道に降り立った。“身の丈サイズ”のボディーに力強い2リッターエンジンを搭載し、スポーティーなフットワークを備えた「Fペース」の弟分の仕上がりは上々。ヒットの予感に満ちている。“黎明期”だから面白い
ひと昔前であれば想像すらできなかったランボルギーニやベントレー、アルファ・ロメオといったブランドからもすでにローンチが行われ、あまつさえ「ウチは純粋なスポーツカーブランドだからそんなモノはやらない!」と言っていたはずのフェラーリですら、もしかして宗旨替え(!?)な便りが聞こえてくるほどのブームとなっているSUV。
なるほど、セダンやクーペ、あるいはステーションワゴンといった既存の枠にとらわれないため、エクステリアやパッケージングデザインの自由度が高く、これからの時代を踏まえれば駆動用バッテリーのためのスペース確保といった点でも明らかに有利。加えて、そんなさまざまな付加価値ゆえに「より高い値付けが可能になる……」とくれば、営利企業である世界の自動車メーカーが放っておくはずもないのは当然だ。
「昔のクルマは個性豊かで良かったな……」と、半世紀ほども前の日本車を指して語られることは少なくないが、それはまだ、エンジンやサスペンションに決定的に優れた形式が見いだされておらず、ボディーさえも自分たちで理想と思えるサイズを探り出さなければならなかった、“マイカー”そのものの黎明(れいめい)期にあったからでもあるはず。
各ブランドが手を変え品を変え、皆で切磋琢磨(せっさたくま)を行いながら競争を繰り広げる“黎明期”の今だからこそ、昨今次々と生み出されるSUVは面白いのである。
FFレイアウトベースの4WD
そんなSUV黎明期の真っただ中にあるとも考えられる今、まずは2015年にローンチされた「Fペース」が早くもヒット作という誉れを獲得しているのが、ジャガーのSUVだ。
ここに紹介するのは、昨年ロンドンで発表会が行われたEペース。さらに、実はこれに先駆けて2016年末に開催されたロサンゼルスモーターショーではピュアEVである「Iペース」のコンセプトモデルも出展されていて、すでにその市販型が「2018年後半に発売予定」と発表されている。
すなわちこれら3台が、現時点で明らかになっているジャガーSUVシリーズということになるわけだ。
“パフォーマンスSUV”と紹介された兄貴分のFペースに対して、“コンパクトパフォーマンスSUV”というフレーズが用いられたのがEペース。
Fペースに比べれば幅が35mm狭いとはいえ、1.9m超の全幅は日本の感覚からすれば決して「コンパクト」とは言えないもの。一方、30cm以上も短くなった約4.4mの全長は、確かに“身の丈サイズ”と感じられる。そもそも、縦列駐車が主体のマーケットでは、クルマの大小は主に長さ方向で語られるのが常なのだ。
そんなEペースの生い立ちが現行ジャガー車ラインナップの中にあって異色なのは、実はこのモデルの骨格がパワーユニットを横置きとしたFFレイアウトベースで成り立っている点にもある。実際、日本には導入されないが、欧州向けに用意されている2WD仕様の場合、その駆動輪は前輪とされている。
ちなみに、ボディー骨格にアルミ素材が多用されることで知られるジャガー車だが、Eペースの場合はスチール製。サイズが明確に小ぶりであるのに車両重量が大きく変わらないのは、ここに主な要因があるわけだ。
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上質さが際立つ走り
“ツール・ド・コルス”で知られるようにワインディングロードには事欠かず、一方で数kmに及ぶ直線路も存在する上に、圧倒的に交通量が少ない……と、テストドライブを行うためには何拍子もの条件がそろった地中海に浮かぶコルシカ島を舞台に開催された国際試乗会でテストドライブしたのは、「P300」と呼ばれる最高出力300psのガソリンエンジンと、「D240」と呼ばれる240psを発するディーゼルエンジンを、共に9段ステップATと組み合わせた4WD仕様。
ちなみに、心臓部はいずれも2リッターのターボ付き直噴4気筒ユニットで、現状、「6気筒以上を用意しないジャガー車」も、このモデルのみということになる。
まずはP300の「R-Dynamic S」グレードでスタートをすると、すぐに驚かされたのは「これはジャガー車随一ではないか」と思える静粛性の高さだった。
今回設定されたルートには一部にオフロード体験セッションが含まれ、そのために試乗車のタイヤは、サマー向けの標準アイテム(ピレリPゼロ)から、オプション設定されるオールシーズンタイプ(ピレリ・スコーピオンゼロ)へと履き替えられていた。
このことによる有利さもあったのかもしれないが、特にロードノイズの小ささは特筆の水準。エンジン透過音もよく抑えられ、サスペンションのストローク感も大きなこのモデルの走りの質感は、走り始めて早々にして「かなり上質」であることを印象付けられた。
1.9t級という重量は、正直なところ「あとちょっと軽くはできなかったのか」と感じさせられるものだが、それでも動力性能に不満を抱く場面は皆無だった。
惜しむらくはトランスミッションの印象が今ひとつなことで、「ここではまだキックダウンはしなくもいけそうなのに」という場面や、逆に「そろそろキックダウンしてほしいのに、まだこのギアで引っ張るのか」という場面がたびたび。パドル操作に対する応答性も今ひとつで、このトランスミッションのリファインが進むことで、動力性能の質感はまだまだ向上する余地があるように思えた。
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ディーゼルモデルに好印象
残念ながら、そんなトランスミッションに対する印象はほぼ同様ながら、一方で街乗りシーンでは「こちらの方が乗りやすいかナ」と思えたのが、D240のSグレードモデルだった。
最高出力では前出P300に見劣りするものの、こちらの武器は100Nmも勝る最大トルク。それが1500rpmという回転数で発せられるのだから、日常シーンでの力感がすこぶる強いのも当然なのだ。
ただし、日本に導入されるディーゼルモデルは「D180」で、こちらの最大トルクは430Nm。それでも、P300の400Nmは上回るのでかなり期待はできそう。ちなみに、各モデルの0-100km/h加速タイムは、P300が6.4秒、D240が7.4秒、D180が9.3秒と発表されている。
ディーゼルならではの音質は耳に届くものの、街乗りシーンではトルクの太さゆえ低回転域が多用されることもあり、静粛性そのものはP300に勝るとも劣らない印象。
こちらのモデルでもサスペンションのストローク感は大きく、やはり基本的な乗り味は上質。と同時に、ジャガーのSUVらしさを演じるべく開発陣がこだわったとおぼしき“後輪での蹴り出し感”は、むしろこちらが上回る印象であったことも加えておきたい。
ダート路面が用意され、「さぁここで、ドリフト姿勢を試してください!」というプログラムまでがあった今回の試乗会だが、そんな体験をするまでもなく、舗装路でのタイトなコーナーからの立ち上がりなどでも、後輪がしっかり路面を蹴って、それをきっかけに積極的なコーナリングフォームが作りだされていくのを感じる場面はたびたびだったのだ。
そんなシーンでも、後輪へのエンジントルクのバイアス感がより強かったのは、やはり低回転域で発せられる絶対的なトルクがこちらの方が大きいことに由来しているように思う。言い方を変えれば、「日常シーンで、走りのテイストがよりスポーティーに感じられたのは、ディーゼルの方」ということにもなる。
かくして、未体験のD180の走りに期待をしつつも、D240の日本導入も熱望したいというのが今の心境。
ピュアスポーツカーである「Fタイプ」と共通のデザイン要素を多数採り入れ、スターティングプライスが451万円からと発表されたEペース。兄貴分Fペース以上の人気者となりそうだ。
(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー/編集=竹下元太郎)
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テスト車のデータ
ジャガーEペースR-Dynamic S P300 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1984×1649mm
ホイールベース:2681mm
車重:1894kg(EU)/1819kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:300ps(221kW)/5500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)245/45R20/(後)245/45R20(ピレリ・スコーピオンゼロ)
燃費:8.0リッター/100km(約12.5km/リッター、欧州複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ジャガーEペースS D240 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1984×1649mm
ホイールベース:2681mm
車重:1926kg(EU)/1851kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/4000rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1500rpm
タイヤ:(前)245/45R20/(後)245/45R20(ピレリ・スコーピオンゼロ)
燃費:6.2リッター/100km(約16.1km/リッター、欧州複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。「D240」は今のところ日本での販売予定はありません。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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