クルマ選びは“女性優先”の時代!?
レクサスのブランド戦略を考える
2018.04.11
デイリーコラム
東京・日比谷に新たな施設をオープン
2018年3月末に、新たにオープンした複合商業施設「東京ミッドタウン日比谷」。東京メトロ日比谷線の駅とは直結、JR有楽町駅からも徒歩4分という好立地から、新たな地域の顔として注目されている施設だ。その1階フロアに「LEXUS MEETS...(レクサスミーツ)」という名のテナントが入っている。
レクサスの新たなブランド体験施設として誕生したレクサスミーツは、ブティック&ギャラリーの「STEER AND RING」、コンセプトカフェの「THE SPINDLE」、試乗体験プログラムの「TOUCH AND DRIVE」といった、3つのプログラムで構成されている。
レクサスのブランド体験施設といえば、東京・青山などで展開される「INTERSECT BY LEXUS」があるが、あちらがカフェやレストランといった“食”が中心であるのに対して、レクサスミーツでは試乗も可能で、よりレクサス車との接点が高められているのが最大のポイントといえる。
![]() |
自由度の高い試乗体験が可能
レクサスミーツは広いスペースを備えているが、“インスタ映え”するおしゃれなメニューが並ぶカフェと、三越伊勢丹との協業で実現したさまざまなグッズをそろえたブティックがその面積のほとんどを占める。クルマの展示エリアは限られており、内覧会の時にはブティックの商品の一部(?)のように「LC」と「NX」の2台が展示されていた。
一方、試乗には新しいスタイルを取り入れている。レクサスミーツではレクサスのフルラインナップとなる全11車種の試乗が可能で、予約はスマートフォンやタブレット端末などからでも簡単に行える仕組み。試乗可能な時間は1時間程度と、長めに設定されている。
ユニークなのは、スタッフが同乗することなく、試乗希望者のみでドライブを楽しめるところだ。さらに恋人や友人、家族などの同乗も可能だという。通常のディーラーでの試乗とは異なり、より気軽にレクサス車に乗ってみてほしいという願いから生まれた、自由度の高い試乗体験ができるのだ。
このほかにも大画面を使って自分好みのレクサス車を仮想的に作り上げるコンフィギュレーターなども用意されるが、レクサスミーツではクルマの販売は行わず、購入希望者には最寄りのディーラーを紹介するという。また、今後は特別な試乗体験やトークイベントなども実施していく予定があるそうだ。
このようにレクサスミーツは、レクサス車と(潜在的な)顧客との接点を高めるための施設なのだが、実際に訪れて感じたのは、思いのほかクルマの印象が薄いということだった。
![]() |
クルマのアピールが弱すぎる!?
入り口には大きく「LEXUS」の看板が掛けられているものの、車両の展示は奥まったところにされているので、一見、自動車ブランドの施設というふうには見えない。そういう意味では、敷居の低さというか、気軽に入りやすい雰囲気をうまく演出している。
さらに、インスタ映えする感じのカフェやセレクトショップを中心に施設が構成される点には、ターゲットとして女性を強く意識していることを感じる。女性の意見が自動車選びに大きく影響するといわれる昨今、クルマに関心の薄い女性にもレクサスブランドをアピールしたいという思いがあるのだろう。
ただし、ここまでクルマを日陰にした展示内容だと、果たして来場者に試乗してみたいという気持ちを持ってもらえるのだろうかという心配が頭をもたげてくる。
東京都内ではメルセデス・ベンツ(六本木のMercedes me)とBMW(お台場のBMW GROUP Tokyo Bay)がそれぞれブランド体験施設を展開しているが、どちらもクルマを前面に打ち出す正攻法のスタイルだ。対するレクサスはクルマが一歩引く形を選択した。
![]() |
都心部での販売力の弱さが目立つ
レクサスはブランド自体が若いこともあり、徐々にラインナップが充実し、クルマがどんどん進化しているにもかかわらず、クルマ好き以外への認知度はまだまだ薄いのが現状だ。例えばトヨタのお膝元である愛知と東京とでは、レクサスの販売台数には大きな開きがある。もちろん、トヨタの事業にかかわる人(レクサスを知っている人)の多い、愛知県のほうが圧倒的に売れているそうだ。
また、都心部では輸入車のディーラーやサービス網が充実しているため、“国産のほうが安心”という、レクサスにとってアドバンテージとなるべき要素が生かせない。そのため、販売台数でメルセデスやBMWに水をあけられている状況だ。最近ではレクサスも都心のショッピングモールなどでクルマの展示や試乗イベントなどを行うようになったが、それほど即効性のある施策ではないだろう。
さらに、舶来品信仰とでも呼ぶべき日本文化が、クルマでもまだまだ廃れていない。これもまたライバルとなるメルセデス・ベンツやBMWの人気を支えている。
ライバルのゆるぎない地位を前に、まずは知名度向上という点で今回の取り組みはアリかもしれないが、奥ゆかしいやり方がかえって裏目とならないかとおせっかいを焼きたくなってしまう。もちろん、まだレクサスのアプローチは始まったばかり。今後、さまざまな試行錯誤があるだろう。真のラグジュアリーブランドへの成長を目指すレクサス。これまで訴求できていなかった消費者の心を捉えることはできるのだろうか。
(文と写真=大音安弘/編集=藤沢 勝)
![]() |

大音 安弘
-
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選NEW 2025.10.9 24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。
-
ハンドメイドでコツコツと 「Gクラス」はかくしてつくられる 2025.10.8 「メルセデス・ベンツGクラス」の生産を手がけるマグナ・シュタイヤーの工場を見学。Gクラスといえば、いまだに生産工程の多くが手作業なことで知られるが、それはなぜだろうか。“孤高のオフローダー”には、なにか人の手でしかなしえない特殊な技術が使われているのだろうか。
-
いでよ新型「三菱パジェロ」! 期待高まる5代目の実像に迫る 2025.10.6 NHKなどの一部報道によれば、三菱自動車は2026年12月に新型「パジェロ」を出すという。うわさがうわさでなくなりつつある今、どんなクルマになると予想できるか? 三菱、そしてパジェロに詳しい工藤貴宏が熱く語る。
-
「eビターラ」の発表会で技術統括を直撃! スズキが考えるSDVの機能と未来 2025.10.3 スズキ初の量産電気自動車で、SDVの第1号でもある「eビターラ」がいよいよ登場。彼らは、アフォーダブルで「ちょうどいい」ことを是とする「SDVライト」で、どんな機能を実現しようとしているのか? 発表会の会場で、加藤勝弘技術統括に話を聞いた。
-
フォルクスワーゲンが電気自動車の命名ルールを変更 「ID. 2all」が「ID.ポロ」となる理由 2025.10.2 フォルクスワーゲンが電気自動車(BEV)のニューモデル「ID. 2all」を日本に導入し、その際の車名を「ID.ポロ」に改めると正式にアナウンスした。BEVの車名変更に至った背景と、今後日本に導入されるであろうモデルを予想する。
-
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
NEW
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? -
NEW
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.10.9試乗記24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。 -
NEW
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ
2025.10.9マッキナ あらモーダ!確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。 -
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】
2025.10.8試乗記量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。 -
走りも見た目も大きく進化した最新の「ルーテシア」を試す
2025.10.8走りも楽しむならルノーのフルハイブリッドE-TECH<AD>ルノーの人気ハッチバック「ルーテシア」の最新モデルが日本に上陸。もちろん内外装の大胆な変化にも注目だが、評判のハイブリッドパワートレインにも改良の手が入り、走りの質感と燃費の両面で進化を遂げているのだ。箱根の山道でも楽しめる。それがルノーのハイブリッドである。