ジャガーEペースR-DYNAMIC SE P250(4WD/9AT)
SUVみたいなスポーツカー 2018.04.27 試乗記 ジャガーブランドの新型SUV「Eペース」は、ほかのメーカーが手がけるコンパクトSUVと何が違う? 新世代のガソリンターボエンジンを搭載する「R-DYNAMIC SE P250」に試乗して、その乗り味をチェックした。怒涛のバリエーション攻勢
2017年7月にジャガーが放った小型SUV、Eペースがいよいよニッポン上陸を果たした。2018年2月22日から受注開始していたベビー・ジャギュアのデリバリーが始まったのだ。
ここのところ急速に成長しているコンパクトSUVセグメントに投じられたモデルにして、しかも日本にピッタリのサイズ! ということで、ジャガー・ランドローバー・ジャパンも力を入れている。ワイドバリエーションは、ユーザーによるパーソナライゼーション、個性化を念頭においている。例えば、現代の「MINI」のように、あるいは初代「マスタング」のように。
まずは外観の微妙な違いで、「Eペース」と「EペースR-DYNAMIC」の2種類に大別される。「レンジローバー ヴェラール」同様、最初から2本の幹に分かれている。標準ボディーと、スポーティーな仕様(もしくはちょっとワルな仕様)のそれぞれにガソリンとディーゼルがあり、ディーゼルは最高出力180ps、ガソリンにはチューン違いで249psと300ps、2種類の設定がある。これら3種類のエンジン違いは、ディーゼルはそのままD、ガソリンはペトロールのPの後ろに最高出力の値を続けて、「D180」「P250」「P300」と呼ばれる。それぞれに、「S」「SE」「HSE」という装備で差別化を図った、いわゆるグレードがある。D180とP250には装備と価格を抑えた、すっぴん(記号がなにもつかない)の設定もある。
ひとくちにEペースといっても、R-DYNAMICというスポーティーなラインを設定することでチョイスは初めから×2、エンジン違いで×3、コスメティックと装備の違いで×3、P300にはないけど、D180とP250には「すっぴん」があって、しかもR-DYNAMICがあるから+(2×2)、全部で22種類ものワイド展開を可能にした。「けやきざかフォーティーシックス」といっても、「漢字欅」と「ひらがなけやき」が存在する、みたいな商法でしょうか。46人どころではない女の子たちのなかから推しメンを選ばないといけないのだから、ファンの楽しみたるやいかばかり。ファンではないひとから見たらどこが違うの、という微妙な差異である。いったい、長濱ねると平手友梨奈の区別がつくだろうか。もちろん、つくに決まっている。
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ため息の出るぜいたくさ
加えて2018年モデルのみとなる限定グレード「FIRST EDITION」がD180とP250にはある。R-DYNAMICのSEをベースにしたこれはボディー色が赤、黒、白の3色、カタログモデルは10色で、2種類あるブラック以外はルーフを黒く塗りつぶすこともできる。
ということで、試乗したのはEペースR-DYNAMIC SE P250という、車両価格650万円の中間グレード、つまりEペースで最も売れそうなモデルである。天丼も、上だけだと並のほうが売れる。単価を上げたい場合は松竹梅をつくると竹が売れる、というようなお話をまた思い出して書いてしまった……。
テスト車は「シージアムブルー」と呼ばれるボディー色に、「エボニー/エクリプス」というインテリアの組み合わせで、エボニーはダッシュボードが黒であることを表している。シートは「パーフォレイテッドエクリプスウィンザーレザースポーツシート」という55万4000円のオプションである。オシャレさんのクルマなので、オプションをあれやこれやとつけていくと、大変な金額になる。ご注意である。
ちなみに電動18ウェイフロントシート(フロント/リアシートヒーター、メモリー機能付き)というのは別注文になるようで、オプションリストに25万8000円とある。つまり、「パーフォレイテッドエクリプスウィンザーレザースポーツシート」という長い名前の、座面と背面に小さな通気孔がたくさん開けられた、ややウエスト部のサポートの張り出したこれはあくまでイスのタイプを示していることになる。電気で動く機能は含まれていないのである。しつこいようだけれど。そしたらシートだけで、80万円超! ぜいたくなんである。ぜいたくはステキだ。シージアムブルーのボディー色に合わせたブルーの内装とブルーのスティッチに、思わず「いいなぁ」と感嘆する。まるでポール・スミスのようではないか。
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ムードはまるでスポーツカー
でもって運転席に着座して一驚する。まるでスポーツカーである。着座位置こそ高いものの、足を投げ出して、手動でステアリングホイールを手前にググッと引き出すと、台所の足の長いイスに座るポジション、つまりハッチバックとかミニバンとかではない、まぎれもないジャガーのスポーツカー「Fタイプ」のドライビングポジションに近い姿勢をおのずととることになる。ルームミラーに映る後方視界は上下にかなり狭い。リアガラスがクーペっぽく寝ているからである。
ああ、ジャガーはSUVのスポーツカーではなくて、スポーツカーのSUVをつくりたかったのである。って、同じか、ひっくり返しただけで。
ともかく感動しつつ走りだす。乗り心地は大変ファームである。はっきり申し上げて硬い。タイヤは235/55R19の「グッドイヤー・イーグルF1 アシンメトリック3」という非対称パターンの高性能SUV用を履いている。
最高出力249psを5500rpmで、最大トルク365Nmを1300-4500rpmで発生する2リッター直4のツインスクロールターボチャージャー付きは活発で、特に温まっていないと、ステアリングを通して鼓動が伝わってくる。走り始めると、なんだかドキドキしてくる。
だけれど、9段のZFのオートマチックトランミッションと組み合わされることで、ふと気がつくと一般道でも1000-1500rpm程度の低回転で静かに回っている。最初の期待と違って、意外とおとなしい。フラットなところだとターボラグはほとんどない反面、坂道の登りでガバチョと踏み込むと一瞬、加速をためらうようなそぶりを見せるのは車重が1910kgと、やや重いためかもしれない。
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ランドローバーの面影も
P250の場合、4WDシステムは通常、前90:後ろ10程度のオンデマンド型ながら、フツーに走らせている限り、エンジン横置きの前輪駆動ベースであることを意識させない。Eペースは着座位置こそ高いものの、まるでスポーツカーを運転しているかのような、FタイプをそのままSUVにしたかのようなSUVである、という印象を得た。
兄貴分の「Fペース」によく似てもいる。ただし、V6スーパーチャージドのFペースより、エンジンが地味めで、そこが足まわりの硬さとチグハグなような気が個人的にはしてしまう(あくまで個人の感想です)。Eペースはベースが「レンジローバー イヴォーク」、リアサスペンション形式の絡みでいえば「ランドローバー・ディスカバリー スポーツ」と同様である。イヴォークは4輪ストラットで、ホイールベースは2660mm。ディスカバリー スポーツはフロントはストラット、リアはマルチリンクでEペースと同じだけれど、ホイールベースは3列シートを想定して2740mmある。Eペースはイヴォークに近い2680mmである。
ジャガーの強みはこのように4×4専用メーカーのランドローバーと組んでいることで、その気になればベースになるSUVのプラットフォームをいつでも手に入れることができる。
これこそ強みだけれど、同じイギリスの高級ブランドということで同じような商品をつくってしまいかねない危うさと同居することにもなる。それゆえ、ジャガーはことさらスポーティヴネスを強調することにしたのだと推測する。
ジャガーは北アメリカ大陸の南部と南アメリカ大陸に住むヒョウである。しかしながら、野生的であることと、イギリス流の男っぽさというのはちょっと違うのではないか。Fペースもそうだけれど、筆者の見解としてはもう少し洗練がほしい。そうじゃないと、なかなか家で飼うのはむずかしい。
その野生のネコをかっちゃうところにダンディーのダンディーたるゆえんがある? おっしゃる通り。「マイ・フェア・レディ」の花売り娘のイライザだと思えば、とてもカワイイ。
こよいはここらでよかろうかい。鎌倉の海沿いの一般道を走っただけなので、許してたもんせ。チェスト!
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ジャガーEペースR-DYNAMIC SE P250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1900×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:249ps(183kW)/5500rpm
最大トルク:365Nm(37.2kgm)/1300-4500rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105W/(後)235/55R19 105W(グッドイヤー・イーグルF1 アシンメトリック3)
燃費:11.2km/リッター(JC08モード)
価格:650万円/テスト車=884万3000円
オプション装備:メタリックペイント(8万8000円)/コンフィギュアルインテリアムードランプ(5万6000円)/ハンズフリーテールゲート(1万9000円)/パーフォレイテッドエクリプスウィンザーレザースポーツシート(55万4000円)/電動18ウェイフロントシート<フロントシートヒーター メモリー機能付き+リアシートヒーター>(25万8000円)/ストレージパーティションネット(2万4000円)/レッドブレーキキャリパー(6万1000円)/19インチ スタイル5049アロイホイール<5スポーク、サテンダークグレーフィニッシュ>(8万8000円)/セキュアトラッカー(9万9000円)/追加パワーソケット(3万3000円)/マトリックスフルLED(14万円)/アクティビティーキー(6万5000円)/パノラミックルーフ(19万円)/デジタルTV(11万9000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万6000円)/フロアマット(2万円)/プライバシーガラス(6万7000円)/イオン空気清浄テクノロジー(2万1000円)/スマートフォンパック(3万8000円)/フルTFTインタラクティブドライバーディスプレイ(11万2000円)/コールドクライメイトパック(9万5000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2547km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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