タフガイたちの輝きは不変!
ラリードライバーが語るラダーフレームへの信頼
2018.05.28
デイリーコラム
ラダーフレームはタフなクロカンの証し
今はSUVと総称されたりもするが、とりわけ「ジープ・ラングラー」や「ランドローバー・ディフェンダー」、メルセデスの「ゲレンデヴァーゲン」、日本では「トヨタ・ランドクルーザー」「日産サファリ」「スズキ・ジムニー」などに代表される、クロスカントリー4WD。1981年に日本人として初めてパリ-ダカールラリーに「ランドクルーザー60」で参戦した私は、20日で1万kmを完走。以来13回の参戦で55カ国200万kmを走破したが、これらクロスカントリー4WDを「地球を最もエンジョイできるクルマ」と称している。
これらのタフガイに共通するのが、骨格だ。いわゆる「ラダーフレーム」というのがそれで、その名の通り、コの字型の鋼材をはしご型に組み上げたものだ。ルーツ的には自動車誕生以前の、馬車の時代にまでさかのぼる歴史がある。読者の皆さんの中にも、キャブだけや仮のシートだけを備えた仮ナンバーで走るトラックシャシーを見たことがある方もいることだろう。ちなみに、ラダーフレームにサスペンションを架装した状態をシャシーと呼ぶ。
セダンがサスペンション取り付け部を一体化し、路面からの入力をボディー全体で拡散吸収する一体型のモノコックボディーへと進化した今日では、いわゆるセダン派生型のSUVもモノコックボディーをまとって今に至っている。この進化は、今日のインフラの整備により、大パワーを4WDシステムで受け止め、多少の雪や、キャンプ場や別荘へのアクセスにおいて出くわす林道程度なら、全く問題なく使命用途を満たしてくれるのは事実だ。
万が一のときに一番頼れるクルマ
より本格的なSUVの世界ですら、私の本来好きな「速く正確に」という移動を体現するならモノコックで十分であるが、地球にはより過酷な環境の中で生活し、生き延びなければならない世界がある。
世界一過酷なパリダカのサポートカーや、“完走第一”のプライベーターに選ばれるのは、ランドクルーザーやランドローバーだった。実際、サハラ砂漠で電機トラブルによって止まった際、現地のランクルとバッテリー交換して窮地を脱した経験がある。リーフスプリングなら一部が折れても他と“抱き合わせ”にして走れたりもする。ラダーフレームも同じで、床に大穴が空いた状態でもフレームがしっかりと機能していたおかげで、リタイアから脱出した事もあった。応用や修理のしやすさもフレームの魅力だ。これは特殊な、一部の例だが、地球上にはまだまだ「ゆっくり確実に」の移動が基本な世界が広く存在している。
タフな世界で生き抜くクロカン4WDのルーツにはジープを筆頭に軍用車がある。今や高級車の「メルセデス・ベンツGクラス」も、本来はオーストリアのシュタイア・プフのシャシーにエンジンを架装したもので、プジョー仕様なども存在した。そのルーツは、新型がデビューした今も不変だ。
では、こうしたラダーフレームのSUVは、日本ではオーバークオリティーなのか? その通りである。しかし、だからといって必要ないかどうかは考え次第。世界的にも災害の多い日本でも、万が一のときに一番頼れるのはクロカン4WDなのだ。安心も高くはつきますが、よろしく、愉しく!
(文=根本 純/編集=堀田剛資)
![]() |
![]() |
![]() |

根本 純
-
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考えるNEW 2025.10.20 “ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る!
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
NEW
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(前編)
2025.10.19思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル」に試乗。小さなボディーにハイパワーエンジンを押し込み、オープンエアドライブも可能というクルマ好きのツボを押さえたぜいたくなモデルだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。