ポルシェ・マカンGTS(4WD/7AT)/ポルシェ718ケイマンGTS(MR/7AT)/ポルシェ911カレラGTS(RR/7AT)
ユーザーもうれしい戦略モデル 2018.07.14 試乗記 強化されたパワーと、充実した装備を誇るポルシェ伝統の高性能グレード「GTS」。高額ながらもポルシェ各車のラインナップで人気なのは、実はお買い得だから? 成り立ちの異なる3モデルで、その走りを試した。北米で大人気のGTSで軽井沢へ
テニスの試合を見るために、ポルシェで軽井沢に行ってきた。なんて言うと優雅な小旅行みたいに聞こえるが、もちろん仕事に決まっている。「ポルシェ軽井沢フューチャーズ」というテニス大会を観戦することが目的だ。武者修行中の若手選手が参加するトーナメントである。ポルシェの名が冠になっているのは、2016年からメインスポンサーになったから。若手スポーツ選手を支援するポルシェの取り組みの一環なのだ。
せっかくなので、東京ー軽井沢間はポルシェで往復した。13台の選択肢の中からwebCGが最初にピックアップしたのは「718ケイマンGTS」。新しく広報車に加わったモデルなのだ。加えて「911カレラGTS」「マカンGTS」も選ぶ。成り立ちの異なる3台だが、すべて「GTS」でそろえてみた。スポーティーであるとともに、豪華な装備を持つグレードである。
いわゆる素のモデルのハイパフォーマンス版として「S」というグレードが設けられており、それをベースとしてさらにパワーを増強して専用のデザインや装備をプラスしたのが「GTS」。718ケイマンでは、素が300psで720万2000円、Sが350psで909万2000円、GTSが365psで1053万2000円という並びになっている(PDKモデル)。
パワーのアップ分以上に価格が上乗せされているが、実はお買い得モデルらしい。オプションを追加するよりも、つるしのGTSを買ったほうが安くなるという。実際、北米では「ボクスター」も含めた718シリーズの販売数の約半分がGTSグレードなのだ。
PASMは標準装備でお買い得?
撮影機材があるのでマカンは往復で使い、行きはケイマン、帰りは911が同行する。まずはマカンに乗った。今やポルシェの屋台骨を支える人気のコンパクトSUVである。ベースグレードならば699万円という価格で買えるが、GTSは981万円。エンジンは2リッター4気筒から3リッター6気筒になり、パワーは252psから360psにまでアップしているからこのぐらいの差は仕方がない。さらに上には440psで1194万円の「ターボパフォーマンス」もあるから、GTSはマカンのラインナップでは真ん中あたりのグレードだ。
「SUVのピュアスポーツカー」と称するだけあって、高速道路での安定した走りっぷりは見事だ。前を行くケイマンについていくのも余裕である。コーナーでもボディーがブレずに路面をしっかりととらえているように感じられるのは、「マカンS」よりも15mm低められたスポーツシャシーの恩恵かもしれない。試乗車はエアサスペンション仕様だったので、さらに10mm低い。2t近い車重でもブレーキの利きがいいのは当然で、ポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)が装着されていた。オプション料金は、145万9000円である。
ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム(PASM)は、GTSでは標準装備だ。このあたりがお買い得といわれるゆえんなのだろうか。ダンパーの減衰力を自動で無段階に調節するPASMには、「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」という3段階のモードがある。ただ、日常的な使用ではコンフォートの一択だろう。スポーツやスポーツプラスを選択するとあからさまに乗り心地が悪化する。コンフォートでもクルマの動きが不安定になるわけではないので、快適性を重視したほうがいい。
普段は快適に使えて装備も充実しているが時にサーキットでスポーツ走行も楽しめる、というのがGTSというグレードだ。マカンはSUVだから、サーキットに持ち込むことはあまり想定できない。スポーツカー作りで得られたノウハウを惜しみなくつぎ込むという豪勢な仕立ての実用車である。そのことを実感するためにも、GTSというグレードは存在価値があるのだろう。
過剰な演出が楽しい
ケイマンに乗り換えると、ああ、これがポルシェだなと感じる。室内が広くてエンジン音が前から聞こえてくるマカンは、ちょっとポルシェ感が薄いのだ。実用性の高いマカンはポルシェのユーザー拡大に貢献したが、走りに特化したケイマンや911がブランドの名声を高めている。乗り込むのも一苦労で室内には余分なスペースがないが、むしろ気分が盛り上がってきた。
車高はSモデルよりも10mm低められ、PASMに加えてポルシェトルクベクトリング(PTV)も標準装備。コーナリング中に左右のトルク配分を変えて回頭性を高める機構だ。最近では珍しくない装備だが、スポーツ性能を高めるオプションがはじめからそろえられているところがGTSのメリットなのだろう。
マカンではコンフォートモードを選んで快適なドライブを心がけたが、ケイマンでは最初から乗り心地は諦める。センターコンソールに備えられたボタンで走行モードを切り替えたマカンとは違い、スポーツクロノパッケージを標準装備するケイマンGTSはステアリングホイールの回転式スイッチを使用する。エンジンとギアボックスのレスポンスも変化するわけだ。パドルシフトを使わなくてもすばやくシフトを行い、ブレーキング時には絶妙なブリッピングを入れてくれるから気持ちよく山道を走れる。
鬼押出しに向かう上り坂では、もう少しパワーが欲しいと思ってしまう場面にも遭遇した。そういう時は、すかさずスポーツレスポンススイッチを押せばいい。回転式スイッチの真ん中にあるボタンだ。押すとすぐさまスポーツレスポンスモードに入り、エンジンとギアボックスが最もスポーティーな設定に変わる。このモードが有効なのは20秒間で、メーターにカウントダウンが表示される。レーシングカーのオーバーテイクボタンのようでやや過剰な演出ではあるが、楽しかったのは事実だ。
1964年のレーシングカーから続く称号
911には駆動方式がRRか4WDか、「カブリオレ」や「タルガ」といったボディータイプの組み合わせで5種類のGTSモデルがある。試乗したのはRRでクローズドボディーのカレラGTSだ。「カレラ」や「カレラS」の上級グレードだが、911というのはもっと上にとんでもないハイパワーモデルが控えている。ただ、「GT3」「GT2」といったモデルは本籍地がサーキットだ。あくまで公道走行がメインという中での高性能車がGTSである。
カレラGTSのエンジンパワーは450ps。2016年のマイナーチェンジで導入された3リッターターボで、カレラSより30ps増しのチューンになっている。0-100km/h加速は3.7秒、最高速度は310km/hというすさまじい速さだ。それでも低速での振る舞いに気むずかしさはなく、PDKが不機嫌なしぐさを見せることはない。もちろんスポーツレスポンススイッチが装備されていて、ボタンを押すといきなり回転数が激しく上昇して猛烈な加速を開始する。豪雨の中を走っていても、強大なパワーをしっかりと路面に伝えていた。
各所にGTSのバッジが光るだけでなく、フロントスポイラーやリアコンビネーションランプ、ツインテールランプなどが専用デザインとなっている。そもそもRRなのに4WD用のワイドボディーが与えられているのだ。見た目でもハッキリと違いがわかるから、ユーザーは少しお金を足してもGTSを手に入れたくなるのだろう。
ポルシェがGTSという称号を使ったのは、1964年の「904カレラGTS」が初めてである。公道も走れるレーシングカーという位置づけであり、第2回日本グランプリは「プリンス・スカイラインGT」とバトルを演じたことでも知られるモデルだ。次に使われたのは、「ポルシェ924」。FRスポーツカーのハイチューン版だった。そして初代「カイエン」で本格的に復活し、走りの性能を高めて装備も充実させたグレードという新たなイメージを築き上げた。
ポルシェにとっては売れ筋の高額商品というありがたいモデルで、よく練られた巧みなマーケティングが結実したということなのだろう。それが同時にユーザーにとってはハイパフォーマンスと特別な見た目を手に入れられるというメリットとなる。文句のつけようのない見事な戦略ではないか。実際、試乗した3台は、どれも魅力的な仕上がりだったのである。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=渡辺 忍)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ポルシェ・マカンGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4692×1926×1609mm
ホイールベース:2807mm
車重:1895kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:360ps(265kW)/6000rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1650-4000rpm
タイヤ:(前)265/45R20 104Y/(後)295/40R20 106Y(ミシュラン・ラティチュード スポーツ3)
燃費:9.2-8.9リッター/100km(約10.9-11.2km/リッター、NEDC複合モード)
価格:981万円/テスト車=1321万2000円
オプション装備:ボディーカラー<カーマインレッド>(43万円)/GTSレザーパッケージ ブラック(29万6000円)/フロアマット(2万2000円)/エアサスペンション<PASM>(26万8000円)/ポルシェ・トルクベクタリング・プラス<PTV Plus>(27万1000円)/アルミルック燃料タンクキャップ(2万4000円)/シートヒーター<フロント>(7万6000円)/シルバー・メーターパネル(8万9000円)/LEDヘッドライト<PDLS+>(12万5000円)/カレラレッド・シートベルト(8万円)/ポルシェセラミックコンポジットブレーキ<PCCB>(145万9000円)/スポーツクロノパッケージ(19万9000円)/スポーツクロノストップウオッチダイヤル シルバー(6万3000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1万0975km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:481.2km
使用燃料:53.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/8.7km/リッター(車載燃費計計測値)
ポルシェ718ケイマンGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1800×1286mm
ホイールベース:2475mm
車重:1430kg
駆動方式:MR
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:365ps(269kW)/6500rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 92Y/(後)265/35ZR20 99Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4S)
燃費:8.2リッター/100km(約12.2km/リッター、NEDC複合モード)
価格:1053万2000円/テスト車=1250万9000円
オプション装備:ボディーカラー<ラバオレンジ>(42万6000円)/GTSアルカンターラパッケージ&GTSインテリアパッケージ カーマインレッド(31万9000円)/電動ミラー(5万5000円)/オートエアコン(13万9000円)/PASMスポーツシャシー(4万4000円)/GTSインテリアパッケージ(53万8000円)/シートヒーター(7万6000円)/LEDヘッドライト(35万9000円)/フロントウィンドウ グレーティント(2万1000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1482km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:306.9km
使用燃料:32.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.6km/リッター(満タン法)/9.0km/リッター(車載燃費計計測値)
ポルシェ911カレラGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4528×1852×1284mm
ホイールベース:2450mm
車重:1470kg
駆動方式:RR
エンジン:3リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:450ps(331kW)/6500rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/2150-5000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 91Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:8.3リッター/100km(約12.0km/リッター、NEDC複合モード)
価格:1788万円/テスト車=2010万7000円
オプション装備:ボディーカラー<ナイトブルーメタリック>(21万4000円)/ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム<PDCC>(58万4000円)/リアアクスルステアリング(40万9000円)/パワーステアリング(4万8000円)/シートヒーター<フロント左右>(8万6000円)/フロアマット(3万3000円)/アルミペダル(6万3000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(25万8000円)/PDLS付きLEDヘッドライト<ブラック>(45万5000円)/ドアミラー下部ペイント仕上げ(7万7000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1万2063km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:189.0km
使用燃料:17.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/10.7km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ(MR/CVT)【試乗記】 2026.7.8 フロントマスクが変わったのはすぐにお気づきのことと思うが、実は最新の「スズキ・エブリイワゴン」は中身のレベルアップが著しい。内装デザインが刷新されたほか、アダプティブクルーズコントロールなどの軽バンらしからぬ装備も標準化されている。ワゴンの最上級グレードを試す。
-
ポルシェ911 GT3 S/C(RR/6MT)【海外試乗記】 2026.7.7 スポーツカーの水準器「ポルシェ911」に、新たなバリエーションの「GT3 S/C」が登場。サーキット直系の走りとオープンエアの爽快感は、私たちにどんな体験をもたらしてくれるのか? ポルシェのおひざ元である、ドイツのワインディングロードで確かめた。
-
日産リーフB5 X(FWD)【試乗記】 2026.7.6 先に登場した「B7」の容量78kWhに対して、少し控えめな容量55kWhの駆動用バッテリーを搭載する「日産リーフB5」。日常使いをシミュレートしながら、現実的な一充電走行距離や走り、使い勝手を、購入を真剣に検討するカスタマー目線でチェックした。
-
スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2026.7.4 スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。
-
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】 2026.7.3 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。
-
NEW
ホンダ・フィット
2026.7.9画像・写真本田技研工業は2026年7月9日、マイナーチェンジした「フィット」を発表した。2020年2月のデビューから6年。グレード体系の見直しや内外装のブラッシュアップなど多岐にわたる変更が行われた最新モデルを写真で詳しく紹介する。 -
NEW
第291回: あの衝撃的なラストシーンは2CVで撮影されていた!? 『ヌーヴェルヴァーグ』
2026.7.9読んでますカー、観てますカー1959年のパリで、ゴダールが『勝手にしやがれ』の撮影を開始。脚本もなく演出はその場で指示するという型破りのスタイルに、俳優もスタッフも困惑し現場は混乱を極める。はたして映画は無事に完成するのか……。 -
NEW
第969回:裏地に『大脱走』! ピッティ・イマージネ・ウオモと自動車模様
2026.7.9マッキナ あらモーダ!イタリアで開催された世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を、現地在住の大矢アキオが取材。自動車にまつわるアパレルの最新トレンドを探り、新興ブランドのひたむきさと、老舗の刻んできた年輪に触れた。 -
NEW
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.7.9小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。 -
NEW
スバルが北米生産の3列シートSUV「アセント」の導入を検討 日本のスバリストに受け入れられるのか?
2026.7.9デイリーコラムスバルが米国で生産するSUV「アセント」の日本導入を検討中だ。「エクシーガ クロスオーバー7」以来となる3列シートSUVの復活にスバルファンは歓迎ムードだが、サイズや左ハンドル仕様といった懸念材料も。スバリスト玉川ニコはこう考える。 -
NEW
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(後編)
2026.7.9あの多田哲哉の自動車放談基本性能が大幅にアップした、改良型「レクサスRZ」。ワインディングロードで最上級モデル「RZ550e“Fスポーツ”」のステアリングを握った多田哲哉さんが、同モデルに生かされているテクノロジーについて語る。
























































