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これからお店に行く人にささぐ
「スズキ・ジムニー」購入のススメ

2018.07.23 デイリーコラム 堀田 剛資
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とどまることを知らないジムニー旋風

「ジムニーは誕生以来48年、決して大ヒットというわけではありませんが、地道に販売を続けてまいりました。これからも1台1台、大切にお客さまに、お届けしてまいります」

発表会の壇上にて、鈴木俊宏社長がそう語ったのが2018年の7月5日。それ以来、新型「ジムニー/ジムニーシエラ」の勢いが止まりません。ウェブでは有名どころの自動車メディアから個人のブログ、SNSまで、いたるところで関連記事が乱立し、ネコ画像よろしくバズりまくっています。記者自身も興味があって最寄りのスズキアリーナ店にうかがったところ、納期はジムニーでおよそ9カ月後、ジムニーシエラに至っては1年以上先とのこと。スズキ史上(ひょっとしたら日本自動車史的にも?)まれに見る非常事態ですが、逆に言えば、それだけ多くのユーザーが契約にいたったことの裏返しでしょう。これはめでたい。実にめでたい。

webCG読者諸兄姉の中にも、この現在進行形の騒動に触れて初めて、もしくはあらためて、ジムニーに興味を持った方もいることでしょう。いや、「次のマイカーにどうかな?」と思っている方や、「もう見積もりもらってきちゃった」という方もおられるやも知れません。

そこで今回は、事前撮影会に開発者インタビュー、そして過日の発表会と、webCGにおけるここまでの取材を全部追っかけてきた記者が、ジムニーを買う上でのちょっとしたポイント、思いついた提案を、Q&A方式で紹介させていただきます。過去には微力ながら専門誌の編集に携わり、中古車本でバイヤーズガイド企画も制作したことのある身。名の知れた専門店の主や、ジムニーばかり乗り継いできた猛者たちには到底かないませんが、それでも多少の知識はある……はず。浅学を絞りに絞り、ささやかでもお役に立てれば幸甚です。

それでは早速。

2018年7月5日に行われた発表会において、演壇の脇に展示された4代目「スズキ・ジムニー」。
2018年7月5日に行われた発表会において、演壇の脇に展示された4代目「スズキ・ジムニー」。拡大
新型「ジムニー/ジムニーシエラ」の歴史と特徴を説明する、スズキの鈴木俊宏社長。ちょっと口調は固かったが、鈴木 修会長の思い出話を交えたそれは、今のところ2018年最良のスピーチだったと思う。
新型「ジムニー/ジムニーシエラ」の歴史と特徴を説明する、スズキの鈴木俊宏社長。ちょっと口調は固かったが、鈴木 修会長の思い出話を交えたそれは、今のところ2018年最良のスピーチだったと思う。拡大
実車確認はご覧のありさま。あまりの人の多さに、なかなかクルマに近づくことができなかった。
実車確認はご覧のありさま。あまりの人の多さに、なかなかクルマに近づくことができなかった。拡大
個人的な印象だが、取材陣がこんなに興奮し、好意的に迎えた新型車は、ホンダの軽スポーツカー「S660」以来ではないかと思う。
個人的な印象だが、取材陣がこんなに興奮し、好意的に迎えた新型車は、ホンダの軽スポーツカー「S660」以来ではないかと思う。拡大
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ジムニーとジムニーシエラは“別物”です

(Q1)いまさらそんなこと言われても、もうハンコ押しちゃったんだけど。

(A1)おめでとうございます。アナタに申し上げることは何もありません。

ラーメン二郎が完全栄養食であることが論をまたないように、新型ジムニーが完全移動体であることはまぎれもない事実。どうぞ新世界のトビラを開いてください。もし万が一、短期間で売却・乗り換えするハメになったとしても、リセールがいい軽自動車の中でも、ジムニーは値落ちが低い銘柄の筆頭(シエラはちょっと分かりませんが……)。お財布への打撃は軽微にとどめることができるでしょう。

(Q2)ジムニーとジムニーシエラ、どっちがいいですか?

(A2)アナタの使い方次第。ただし妥協は禁物です。

ボディーとフレームが共通ということで誤解されがちですが、ジムニーとジムニーシエラは乗ったら全く別物です。エンジンと足まわりが違うので、当然といえば当然ですね。

細かい話はこれから出るだろう試乗記にお任せしますが、乗り味としてはジムニーはかなりやわらかく、ジムニーシエラは意外にしっかり系でちょっと“バタ臭さ”(欧州車っぽさ)を感じさせます。高速巡航はシエラのほうが得意でしょうが、ちょっとでも街中をキビキビ走りたいのなら、ターボ付きのジムニーでしょう。

気をつけてほしいのは、もしアナタが「気に入ったのはシエラなんだけど……」と思ったのなら、価格差や納期を理由に安易に妥協しないことです。上述の通り、両モデルは乗ったらかなり性格が違います。もし「ジムニーでもいいかな」と思ったとしても、必ず試乗してから判断してください。

いかにもクロカン然としたスタイリングが魅力の、新型「ジムニー」(右)と「ジムニーシエラ」(左)。(写真=荒川正幸)
いかにもクロカン然としたスタイリングが魅力の、新型「ジムニー」(右)と「ジムニーシエラ」(左)。(写真=荒川正幸)拡大
パワープラントに見る、市街地での痛痒(つうよう)感のなさは「ジムニー」に分がある。制御のうまさも含めて、日本専用開発の軽自動車用パワープラントの面目躍如。
パワープラントに見る、市街地での痛痒(つうよう)感のなさは「ジムニー」に分がある。制御のうまさも含めて、日本専用開発の軽自動車用パワープラントの面目躍如。拡大
一応ですが、無責任なことを言わないよう、近所のディーラーで「ジムニー」と「ジムニーシエラ」、試乗してきました。こちら証拠写真です。
一応ですが、無責任なことを言わないよう、近所のディーラーで「ジムニー」と「ジムニーシエラ」、試乗してきました。こちら証拠写真です。拡大
証拠写真その2。正直なところ、新型は上級グレードのアルミホイールより、下位グレードの鉄チンホイールのほうがカッコいいと思う。
証拠写真その2。正直なところ、新型は上級グレードのアルミホイールより、下位グレードの鉄チンホイールのほうがカッコいいと思う。拡大

「3代目の未使用車」はどうなの?

(Q3)普通のクルマから乗り換えても、大丈夫ですか?

(A3)多少の不便は覚悟してください。

いかにジムニーを愛する者とはいえ、読者にウソはつけません。なんだかんだ言って、これは特殊なクルマです。ドアが2枚しかないことによる不便は見れば分かりますが、ほかにも、(1)アクセル全開でも遅い、(2)燃費も「イマドキの軽&小型車と一緒」とはいかない、等については覚悟しておいてください。
逆に乗り心地は問題なし。世界屈指の本格オフローダーですが、オンロードでのマナーは従来モデルよりずいぶん洗練されています。むしろ、“軽量化命”なイマドキの軽&小型車より、ずっと安心感のある走りを味わえるでしょう。

(Q4)新型の価格と納期に耐えられないんですが……

(A4)あえての3代目という選択肢も、アリといえばアリ

新型の数少ない欠点のひとつが、価格ですね。各種装備の追加を思えば致し方ないところですが、従来モデルよりおおむね10~20万円ほどアップしてしまいました。また冒頭で触れた納期の長さも、「今すぐクルマがほしい!」という人には耐えられないところでしょう。

通常であれば、こんなときは「先代の未使用車がオススメ!」と言えるのですが……。3代目のジムニー、現状だとあまり値落ちしていませんね。大手の中古車物件サイトを何カ所かさらいましたが、2017、2018年登録(ジムニーは軽自動車なので届出ですね)の未使用車が、だいたい車体価格150万円から。ベーシックな「ジムニーXG」なら110万円台から個体がチラホラしていますが、全体的には、おおむね「新車時の車体価格をキープか、微減」といった感じ。オプション装備やアクセサリーの分を思えばお買い得なのでしょうが、うーむ。

まあ、それでも値段が下がっていることは事実ですし、新型を新車で買ったときとの価格差と、その後の長~い納車待ちを思えば、そこそこに魅力的な対抗案なのではないでしょうか。型遅れになったとはいえ、オフロード性能は依然として一級品(詳しくは過去記事参照)。長足の進化を遂げた新型だって、フレームや足まわりには、この世代をベースに考えられたものを使用しています。

もちろん、基本設計が20年前のクルマゆえ、オンロードでのマナーや安全装備、快適装備などについては新型にはかないません。後は、そうした部分と上述の価格差、確実に差がつくだろうリセールをどう考えるかでしょう。取りあえず、新型の納期を見て“ジムニーライフ”をあきらめようとしているアナタ、ぜひこの選択肢をご一考あれ。

2014年夏に登場した、JB23型の最終モデルの「XC」。高年式の先代ジムニーは、歩行者保護のために盛り上がったボンネットが特徴だ。
2014年夏に登場した、JB23型の最終モデルの「XC」。高年式の先代ジムニーは、歩行者保護のために盛り上がったボンネットが特徴だ。拡大
先代最終型の「ジムニーXC」のインストゥルメントパネルまわり。これでも初期のものと比べればモダンになったほうだが、新型と比べるとやっぱり時代を感じる。
先代最終型の「ジムニーXC」のインストゥルメントパネルまわり。これでも初期のものと比べればモダンになったほうだが、新型と比べるとやっぱり時代を感じる。拡大
本文で紹介したオンロードでの乗り心地や装備の充実度に加え、車内の広々感も新型と従来型の大きな違いだろう。
本文で紹介したオンロードでの乗り心地や装備の充実度に加え、車内の広々感も新型と従来型の大きな違いだろう。拡大
特別仕様車の「ジムニーシエラ ランドベンチャー」。必要な装備が一通りそろっていることも、中古車の魅力だろう。新車の場合、カーペット1枚から別料金で買わないといけないので。
特別仕様車の「ジムニーシエラ ランドベンチャー」。必要な装備が一通りそろっていることも、中古車の魅力だろう。新車の場合、カーペット1枚から別料金で買わないといけないので。拡大
発表会場に展示された新型「ジムニー」のランニングシャシー。新型のシャシーや足まわりは、基本的に従来モデルのコンセプトを進化、発展させたものだ。
発表会場に展示された新型「ジムニー」のランニングシャシー。新型のシャシーや足まわりは、基本的に従来モデルのコンセプトを進化、発展させたものだ。拡大

より深い世界を見たい人にはオススメですが……

(Q5)だったらいっそ、2代目とかどうなの?

(A5)その先には深い沼が待ち受けているでしょう。

2代目ジムニー、カッコいいですよね。チーフエンジニアの米澤氏も「JA型が一番好き」とおっしゃっていましたし、皆さまの気持ち、分からなくはありません。余談ですが、記者も一番のお気に入りはJA71型のパノラミックルーフだったりします。

しかしあえて言わせてください。少なくとも漠然と「2代目とかどうかな?」と思われているようでしたら、より新しい世代のジムニーを選ぶべきでしょう。理由はいくつもありますが、ひとつは単純に古いから。モデルライフは1981年から1998年。乗り味がいささかワイルドなのはもちろんのこと(かなりオブラートに包んだ表現です)、一番新しいものでも20年前なわけですから、骨に神経、関節、心臓と、これからいろいろ起きてくるお年頃です。

もうひとつ理由として挙げられるのが、17年間のモデルライフで度重なり、見過ごせないレベルの大幅改良を受けていることです。比較的身近なJA11型以降のジムニーだけを見ても、最高出力の向上、パワーステアリングやオートマチックトランスミッションの採用、リーフスプリングからコイルスプリングへの変更、エアロッキングハブの採用と走行中の2駆・4駆の切り替えが可能なドライブアクション4WDシステムの導入などなど、その変更は枚挙にいとまがありません。

「自分がどんなジムニーがほしいか」をきちんと把握し、それがいつの時期に生産されていたかを知らないと、誤ったクルマ選びをしてしまいます。しかも、仮に「リーフスプリングの64ps仕様がほしい!」と思っても、そのジムニーの生産時期はわずか1年。探してもタマがない、という事態も覚悟しなければならないでしょう。それでもほしいという方は、まずは専門店に相談することをオススメします。

2代目の最初期モデルであるSJ30型。エンジンは初代譲りの0.55リッター水冷2サイクルが採用されていた。
2代目の最初期モデルであるSJ30型。エンジンは初代譲りの0.55リッター水冷2サイクルが採用されていた。拡大
初めて4サイクルのターボエンジンが設定されたJA71型。写真は盛り上がったルーフ形状が特徴の「パノラミックルーフ」。
初めて4サイクルのターボエンジンが設定されたJA71型。写真は盛り上がったルーフ形状が特徴の「パノラミックルーフ」。拡大
軽自動車規格の改定に合わせ、0.66リッターのターボエンジンが搭載されたJA11型。リーフスプリングを採用した最後の「ジムニー」として、中古車市場でも人気の高いモデル。
軽自動車規格の改定に合わせ、0.66リッターのターボエンジンが搭載されたJA11型。リーフスプリングを採用した最後の「ジムニー」として、中古車市場でも人気の高いモデル。拡大
2代目の末期には、SOHCエンジンのJA12型とDOHCエンジンのJA22型が設定された。ともにサスペンションにはジムニー初のコイルスプリングを採用。……ご覧いただければ分かる通り、最初期のSJ30型とは全く別物といえるほどに進化を遂げていた。
2代目の末期には、SOHCエンジンのJA12型とDOHCエンジンのJA22型が設定された。ともにサスペンションにはジムニー初のコイルスプリングを採用。……ご覧いただければ分かる通り、最初期のSJ30型とは全く別物といえるほどに進化を遂げていた。拡大

若者よ(ジジイも)ジムニーに乗れ!

……以上です。多少なりとも参考にしていただける箇所があったでしょうか?

ちまたでは若者のクルマ離れがささやかれていますが、おサイフ事情の切ない若者にこそジムニーに乗ってほしいと思います。先代のJB23型なら、支払総額2ケタ万円前半という物件もそこそこに出回っていますし、そこから先にはスポーツカーにも輸入車にも勝るとも劣らない、広くて深い世界が広がっています。横にどんなクルマが並んでも胸を張れるクラスレスな存在感も、ジムニーだけの魅力でしょう。

もちろん、いい大人の「上がりの一台」としてもジムニーは最適でしょう。この小さなクロカンには、伝統を尊び、プロの道具に憧れ、つつましさを善とし、コストパフォーマンスのよさに作り手の良心を見いだす、そんな今日の私たちに訴えかける“美徳”が勢ぞろいしています。

コンセプトカー「X-LANDER」に感銘を受けたサトータケシ氏ではありませんが、私自身も「いつかはクラウン」より「いつかはジムニー」と言われたほうが、はるかにしっくりきます。ジジイになったらどうせスポーツカーに乗れるほどの体力も残っていないでしょうし、AT仕様のクロカンに乗って近所の河原にでも出掛け、日がな一日文庫本を読んで過ごしたい。そんなヌルい終末のカーライフを思い浮かべるとき、想起されるのはやっぱりジムニーなのです。

(文=webCGほった/写真=荒川正幸、スズキ、webCG)

前ページの流れに従って初代のことにも触れておくと、これは完全にクラシックカーである。購入、維持、使用には相応の覚悟が必要となるだろう。
前ページの流れに従って初代のことにも触れておくと、これは完全にクラシックカーである。購入、維持、使用には相応の覚悟が必要となるだろう。拡大
中古車も含めた場合、記者の個人的なオススメは先代モデルのJB23/JB33/JB43型。人気車種だけに値落ちはシブいが、そこは年式・走行距離とご相談を。タマ数は豊富だし、その辺の融通は利かせやすいはずだ。
中古車も含めた場合、記者の個人的なオススメは先代モデルのJB23/JB33/JB43型。人気車種だけに値落ちはシブいが、そこは年式・走行距離とご相談を。タマ数は豊富だし、その辺の融通は利かせやすいはずだ。拡大
皆さんぜひ、よいジムニーライフを!
皆さんぜひ、よいジムニーライフを!拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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