【F1 2018 続報】第12戦ハンガリーGP「再び雨に笑ったハミルトン」
2018.07.30 自動車ニュース![]() |
2018年7月29日、ハンガリーのハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第12戦ハンガリーGP。前戦ドイツGPでもレース終盤の雨で奇跡的な勝利を飾ったメルセデスのルイス・ハミルトンが、今回も雨に救われた格好となった。
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三強三様のハンガリー
1986年に東欧初の開催となったハンガリーGPも、今年で33回目を迎えた。コース幅の狭い低中速コーナーが連続する、一周4.3kmのハンガロリンクは、仮にパワーやスピードに劣るマシンでも後続を抑えきることのできるトラックとして知られている。
そんなコース特性に照準を合わせてきたのは、同じように抜きにくいモナコGPで今年勝利をおさめたレッドブルだった。ダニエル・リカルドは、前戦ドイツGPで戦略的にルノーのパワーユニットのエレメントを交換。グリッド降格ペナルティーを受ける代わりに、1週間後のハンガリーGPにフレッシュな状態で臨むことを選択した。夏休み明けのベルギーGP、イタリアGPと続くパワーサーキットで不利な戦いが予想されるレッドブルは、メインストレートでも800m程度しかないここで、何としても今季4勝目を手にしたかった。
2014年からのV6ハイブリッド時代の戦績を振り返れば、レッドブル1勝(2014年)、フェラーリ2勝(2015年、2017年)、メルセデス1勝(2016年)で、連覇したチームはない。今年のベストパッケージとの呼び声高いフェラーリは、セバスチャン・ベッテルが2年連続優勝を目指し、またメルセデスは、苦戦した昨年の雪辱を果たさんと、それぞれがさまざまな思惑を胸にハンガリーにやってきた。
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恵みの雨に助けられ、ハミルトン5回目のポール
例年、真夏の暑さに襲われることの多いハンガロリンク。今年も金曜日から気温30度、路面温度は50度に達する厳しい天候のもと行われることとなった。この暑さで弱さを見せたのがメルセデス勢。3回のフリー走行で一度もトップタイムを記録できずに、度々スピンを喫する始末。快調なペースのフェラーリ、そしてレッドブルに後れを取ったのだが、予選直前になって降った雨で戦況が一変することになる。
全車出走の予選Q1序盤はドライタイヤでの走行も可能だったが、セッションが進むにつれ雷雨がひどくなり、各陣営は読みきれない空模様に翻弄(ほんろう)されることに。このうちレッドブルのリカルドは、辛くもQ1を突破するもQ2で脱落という憂き目にあい、12番グリッドというハンディを背負うことになった。
トップ10グリッドを決めるQ3では、各車ウエットタイヤを装着し水煙をあげてのアタック。ドライで苦しんでいたメルセデスは、水を得た魚のように快速に飛ばし、ルイス・ハミルトンが今季5回目、ハンガロリンクで6回目、キャリア通算77回目のポールポジションを獲得。バルテリ・ボッタスが2番手で続き、シルバーアローは今シーズン4度目のフロントロー独占に成功した。
2列目はフェラーリの2台。滑りやすい路面で気迫のこもった走りを披露したキミ・ライコネンが予選3位、ベッテルは4位だった。中団チームからも、雨を味方につけたドライバーが上位グリッドに食い込み、ルノーのカルロス・サインツJr.は5位に。トロロッソは今年初めて2台そろってQ3まで駒を進め、ピエール・ガスリー6位、レッドブルのマックス・フェルスタッペンを間に挟み、初Q3となったブレンドン・ハートレーは8位につけた。5列目はハースの2台が並び、ケビン・マグヌッセン9位、ロメ・グロジャンは10位からレースに臨むこととなった。
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メルセデス1-2に、陽動作戦を仕掛けたフェラーリ
ピレリが持ち込んだタイヤは、ドイツGPと同じく、ミディアム、ソフト、そしてひとつ飛ばしてウルトラソフトという3種類。予選がウエットだったため、各車、自由にスタートタイヤが選択可能となった。真夏の厳しい日差しに照らされた決勝日は、気温33度、路面温度は57度まで上昇。上位10台は、ベッテルとサインツJr.がソフト、それ以外はウルトラソフトを履いて、70周のレースに向かった。
1位ハミルトン、2位ボッタスとメルセデスはスタートから1-2をキープ。ベッテルがチームメイトを抜き3位に上がり、4位ライコネン、5位にはフェルスタッペンが上がり、オープニングラップを終えた。
トップを守ったハミルトンは、5周して3秒台のマージンを築くとペースをコントロール。2位はチームメイトのボッタスなのだから、過度な心配は無用だった。6周目にフェルスタッペンがパワーを失いマシンを止めるとバーチャルセーフティーカーが入り、タイヤをいたわりたいハミルトンにとってはさらに都合のいい展開となった。
15周して、トップランナーの先陣を切って4位ライコネンがピットイン。ウルトラソフトからソフトに替えてコースに戻った。この動きをカバーすべく、メルセデスも翌周2位ボッタスをピットに呼び、ソフトタイヤを装着して第2スティントを始めた。フェラーリのこの陽動作戦が、レース終盤に効いてくることになる。
まだタイヤ交換をしていないトップ2台の間には8秒の差。速いがもろいウルトラソフトを履く先頭のハミルトンと、より長いライフのソフトで走る2位ベッテルは、同じようなタイムで周回を重ねていたが、20周を過ぎるとハミルトンのペースが鈍り、ギャップは6秒台へ。これを潮時と見たメルセデスは、25周を終えてハミルトンにソフトタイヤを与え2位で復帰させた。スタートタイヤで走り続ける首位ベッテルとハミルトンとの差は、この時点で13秒。3位ボッタスは、トップから22秒後方を走っていた。
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ボッタスの不運、ハミルトンの幸運
レースの折り返し地点を過ぎて、再びフェラーリが動いた。39周目、3位ボッタスを抜きあぐねていた4位ライコネンが2度目のタイヤ交換を行い、ソフトを履いて5位でコースに復帰。さらに翌周にはベッテルがこの日唯一のピットストップでウルトラソフトを装着、3位から先行する2台のシルバーアローを追った。
序盤のライコネンに合わせたピットストップで、ロングランを強いられることになった2位ボッタスに、フレッシュなウルトラソフトの3位ベッテルが迫ってきた。当初は踏ん張っていたボッタスだったが、残り15周の時点でベッテルの猛チャージを受け、リアタイヤが苦しくなり防戦一方に。やがて4位ライコネンまでが数珠つなぎとなった。
そんな接近戦の均衡を破ったのはベッテルだった。65周目のターン2、アウトからボッタスをオーバーテイクし2位奪取に成功。しかし抜かれたボッタスはうまく止まりきれず、フェラーリとメルセデスは接触。ボッタスのマシンはフロントウイングを壊し、ライコネンにも抜かれ4位に後退してしまう。
ボッタスの不運はこれで終わらなかった。手負いのマシンでゴールを目指したものの、今度はリカルドに襲われることになり、メルセデスとレッドブルは接触。はじき出されたリカルドはコースに戻ると再びボッタスに牙をむき、ファイナルラップで4位の座を仕留め、ボッタスは5位でチェッカードフラッグを受けたのだった。
後方のゴタゴタとは無縁のレースを終えたハミルトンは、2位ベッテル、3位ライコネンを従えて、ドイツGPから2連勝。いずれの勝利も、雨が勝敗を分ける重要な要素となった点で共通している。今季最多の5勝をマークしたハミルトンは、4勝しているベッテルに今シーズン最大の24点の差をつけることができたのだから、まさに恵みの雨だったといえよう。
3連戦+2連戦を終え疲労困憊(こんぱい)のF1サーカスは、待ちに待ったサマーブレイクに突入。第13戦ベルギーGP決勝は、8月26日に行われる。
(文=bg)