第202回:苦節2カ月、待ちに待った(泣)「iPad2」がキター!
2011.07.15 マッキナ あらモーダ!第202回:苦節2カ月、待ちに待った(泣)「iPad2」がキター!
「iPad2」購入を決める
それはまだ時折肌寒い日が訪れる4月のことだった。拙著の電子書籍『イタリア式クルマ生活術』が発売されたのを機会に、ボクも自分の本を読むべくタブレット型端末「iPad2」を購入することを決めた。
多くの方がご存じのとおり、iPad2には16、32、64GBの各モデルがある。だが、これまで持っていた「iPhone 3GS」の8GBだって、まったくもって容量を使い切っていない。クルマの18カ月ローンも残っているし、締めてかかったほうがよい。ということで、最安の16GBモデルにした。
あとはWi-Fiモデルか、Wi-Fi+3Gのモデルにするか、である。そこは決めかねたので、店頭で相談することにした。価格はどの店でも同じ、ということで、10年以上お世話になっている市内のチェーン系パソコン専門店で買うことに決め、店頭に赴いた。
スタッフのフランチェスコによれば、「うちの場合、お客さんの注文は、ほとんどが3G付き」という。理由は「イタリアの場合、家はともかく公共の場所でWi-Fiが完備されているところは、まだまだ少ないから」ということらしい。
ということで、ボクもWi-Fi+3G仕様にした。イタリア価格は599ユーロ(20パーセントの付加価値税込み。約6万7000円)である。
なおイタリアではiPhoneもそうだが、いわゆる通信事業者による“縛り”はない。SIMフリーである。したがって、どこの事業者のものでもマイクロSIMを入れれば作動する。プリペイドカードのプランもある。
フランチェスコによれば「注文から納品まで目安は2週間」ということだ。当時アップルの直販サイトに表示されていた所要日数と、ほぼ同じであった。そのパソコンショップの通常の内金は商品価格の10パーセントだが、「それほど厳密でなくていい」というので、ボクは50ユーロを置いていくことにした。
するとフランチェスコは、ボクの差し出したお札を注文書控えにステープラーでガチャン!と留めた。ちなみこの行為は、イタリアではそれほど珍しいことではない。洋服屋さんでジーンズの裾上げを頼んだりすると、同様に店員が連絡用の紙に5ユーロ札をステープラーで留めたりすることがある。
ぬか喜び
注文したあとボクは「まあ、イタリアで2週間ということは、1カ月だな」と、在住15年の経験で察していた。
それでもいつ納品されてもいいように、東京の親族を通じてアクセサリーの日本語ワイヤレスキーボードなどを購入した。さすが日本、こちらは翌々日くらいに親族の家に届いた。
ところがiPad2本体は1カ月が経過しても、まだ入荷を知らせる携帯メールが来ない。フェラーリでもポルシェでも、真の愛好家はディーラーに無用な催促などせず、じっくり待つらしい。しかし小市民のボクは待ちきれなくなり、パソコンショップに顔を出してみた。
すると、フランチェスコとは別のスタッフが「iPadの16GBはたしか今日入荷があったな」と言うではないか。おいおい、それなら早く言えよ。倉庫に消えたスタッフの帰りをワクワクしながら待つ。
しかし「ほら」と差し出されたのは、ボクが注文したのと違うホワイト仕様、それも3Gなしである。どうやら別のお客が注文したものを、間違って出してきたらしい。
ぬか喜びとはこのことだ。「違う違う」とボクが言うと、店長のサンドロがやってきて、「iPad2は注文が多いうえ、東日本大震災の影響で一部のパーツ供給が遅れているため、納期が予想より大幅に伸びている」と説明する。
日本人に日本の現状を言われては、返す言葉もない。ということでボクはその日、店から撤収した。
待って得た友情
それから2週間が経過した6月初旬、海で遊んでいたら、パソコンショップから1通の携帯メールが入った。
「キター!」と思わず叫んで読んでみると、
「当チェーンではご注文のiPad2が入荷する見通しがたたないので、別ルートで発注する。もう少し待って」というものだった。
なんだよー。身内の事情を明かされても困る。とっくに日本からはキーボードだけが先に到着している。「あの50ユーロを取り返し、別の量販店を探そうか」という案も頭をよぎった。
しかし仕事が忙しく、そのままにしていたら、6月28日、「商品入荷」のメールがようやく届いた。ボクは仕事を終えてから、閉店間際のパソコンショップに駆け込んだ。すると、注文を受けてくれたときのフランチェスコが、ボクが何も言わないうちに「はい!」とiPad2の箱を手渡してくれた。周りにいたお客さんが「これがiPad2か」とボクのところに寄ってきた。フランチェスコが「彼は2カ月待ったんだ」と説明すると、そのお客さんは「クルマ並みだな」と言って笑った。
フランチェスコいわく、入荷待ち日数としては「当店の記録級」らしい。それは冗談ではなかったようだ。ボクの注文書は、箱を探してもなかなか見つからず、50ユーロ札とともに留められたそれを見つけたのは、箱のいちばん底だったからだ。
彼によれば「今、64GBのWi-Fi+3Gは即納になった。でも16GBのWiFi+3G仕様は相変わらず入荷待ち状態」だという。
やがて例の店長サンドロが出てきて、驚くべき事実を明かしてくれた。
彼が言うには「自社ルートではらちが明かないので、アキオのためにメーカーの直販サイトを通じて購入」してくれたのだそうだ。つまり今回、待ちぼうけているボクを哀れに思い、彼らはもうけなしで、いわば注文代行を敢行してくれたのだった。
ということは、ボクが直販サイトを通じて購入すれば同じことだったのだろう。だが今回の一件で、パソコンショップのお兄さんたちとの友情というオマケが付いた、とボクは思うことにした。
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望む「だんな機能」
約2カ月かかってボクの手元にやってきたiPad2である。風呂に入って身を清めてから、開封してみた。
まずはついでに買ってきた液晶保護フィルムを貼る。だが、それ以外は“裸”のままで使うことにした。クルマのシートカバーをかけないのと同様、たとえ小キズがついてもデザイナーの選んだ質感・触感をリスペクトしようという、ボクのささやかな心遣いである。
画面の指示どおり、iPhone用にも使っているパソコン内のソフト「iTunes」にアクセスし、セッティングをする。iPhoneに入れておいた各アプリが瞬く間にiPad2にも入った。
こんなに“引き継ぎ”が簡単とは。ある意味拍子抜けに近いものを感じた。「おっ」iPad2をよく見ると、勝手に日本語になっている。「イタリアで買ったのに、なぜボクの国籍が認識されたんだ? スゲー」と感激した。でもよく考えたらiTunesの言語設定をそのまま反映させただけであることがわかった。素人はこれだから困る。
かくして始まったボクのiPad2生活であるが、ひとつ困るのは、iPad2が乱雑に積まれる執筆用資料に、いとも簡単に埋もれてしまうことである。そんなとき思い出すのは、料亭でだんな衆が「ポン、ポン」と手を叩くと芸者さんがやってくるテレビドラマのシーンだ。手を叩いたり名前を呼ぶと「はーいー」とiPadが返事してくれる、名付けて「だんな機能」を次期モデルにはぜひ装備してほしいと願ってやまないボクである。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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