第101回:中年カーマニア、9年後の再会
2018.09.04 カーマニア人間国宝への道モテないカーマニア、大健闘
夏休み、皆さまにおかれましては、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は、昔のカーマニア仲間の“クマ”から連絡をもらいました。
「どうもご無沙汰です。清水さんのモテないBMWの記事を見て、なんとなくメッセージを送ってみました。自分も最近、18年落ちのBMWを買ったので」
クマは元カメラマン。ハチロク(カローラレビン)以外に興味がないタイプのカーマニアでしたが、昔一緒にサーキットに練習に行ったり、モンゴルや軍艦島に取材に行ったりしました。
その後彼はカメラマンをやめ、トラックの運転手になり、疎遠になっていましたが、かつてのモテないカーマニアは、どんな中年(48歳)になったのでしょう。
清水(以下 清):久しぶりだね。何年ぶりかなぁ。
クマ(以下 ク):一緒に筑波の走行会に行って以来、9年ぶりですね。清水さんは「328」、僕はハチロクで。
清:前の黒い328時代か~。オレ、また328に戻ったんだよ。クマはまだハチロク乗ってるの?
ク:乗ってますよ。街乗り1台、ミサイル1台の2台態勢です。あと「ビート」と、ツレの「スープラ」(A70型)と、この間BMWの「330ci」が増えて、クルマバカ状態です。
清:ツレ! ツレができたんだ! しかもスープラが愛車ってことは、カーマニア仲間だね?
ク:なんせモテないカーマニアなんで(笑)、相手もカーマニアじゃないと、可能性ないですから。
清:モテないカーマニア、奇跡の大勝利だね!
ク:ハハハ。
充実の激安ラインナップ
清:それにしてもハチロクはともかく、ビートってすごいな……。
ク:足です。25万円でした。
清:BMWは?
ク:15万です。
清:見事に激安車ばっかり。充実したカーマニア生活送ってるね~。
ク:でも、ハチロクはめちゃめちゃ値上がりしちゃったんで、最近買った街乗り用は、100万しましたよ。あと、税金がキツイです。
清:そうか、古いのばっかりだもんね。
ク:ハチロクが35歳、ビートとスープラが26歳、BMWも18歳ですから。
清:ひょっとしてBMWって、初めてのガイシャ?
ク:ですね。
清:なんでまた。
ク:安かったんで、なんかいいかもと思って、「エッセ」のMT車から買い替えました。
清:エッセのMT車! オレも一時乗ってたよ! そっからBMWってシブすぎる!
ク:値段はほぼ一緒ですから、似たようなもんです。
清:初めてのBMWはどう。
ク:いい感じですよ。なんかどっしりしてて、いままで乗ってきたクルマと少し違うな~って思います。
清:かなり違うだろうねフフフ。しかもAT車でしょ?
ク:久々のAT車です。
清:クマもようやく、オッサンの駆けぬけるヨロコビに惹(ひ)かれるようになったのかな。
ク:いやあ別に。ただ会社の同僚には、「BMWじゃん!」って驚かれました。値段言ったらもっと驚かれましたけど。
清:何年たっても高級車だと誤解される(笑)。そこが国産車との最大の差かもね~。
古き良きカーマニアライフ
清:結局クマは、ハチロクを通算何台買ったわけ?
ク:えーと、ハコ替えも2~3回あったんで、よくわかんないけど9台ですかね。
清:ハコ替えって何?
ク:サビとかクラッシュとかでボディーが死ぬと、新しいクルマ買ってガワだけ使って、中身を総とっかえするんです。
清:それ、全部自分でやるんだよね。
ク:やりますよ。
清:40代にしてカーマニア仲間のツレができて、ハチロクのハコ替え自分でやってるなんて、カーマニアの鑑(かがみ)だね。
ク:ホントはもうめんどくさいんですけど、体が勝手に動いちまうんですよ。街乗りグルマも、取りあえずシャコタンにしないと気が済まないし。
清:すばらしいかな、古き良きカーマニアライフ! ところでさ、ハチロクのミサイルって何?
ク:これです。
清:こ、これがミサイル? ミサイルに撃墜された機体の残骸じゃないの!?
ク:違いますよ。この間のエビスのドリフト祭りでも、ほぼこの状態でガンガン走ってましたから。ただ、また少しクシャッとやっちゃったんで、いよいよハコ替えしないとダメなんですけど。
清:えっ、クマっていま、ドリフトの人になってるの!?
ク:そうですよ。
中年カーマニアも、変身するし成長するのだ! という事実に打ち震えつつ、次回に続きます。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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