キャデラック・エスカレード プラチナム(4WD/8AT)/XT5クロスオーバー プラチナム(4WD/8AT)
アメリカンラグジュアリーの今 2018.10.07 試乗記 キャデラックがラインナップする2つのSUV……古式ゆかしきフルサイズモデル「エスカレード」と、モダンな世界戦略車「XT5クロスオーバー」に試乗。両モデルの出来栄えと、成長を続けるプレミアムブランド、キャデラックの現状をリポートする。再興のプロジェクトは第2フェーズに
読者諸兄はキャデラックがいま、「もう一度キャデラックをクールにするための新しい10カ年計画」の途上にあることをご存じだろうか。2014年に同ブランドのプレジデントに就任したヨハン・ダ・ネイスン氏のもとでつくられたプランで、3つのフェイズに分けられている。
- 2015→2017 投資と上昇の時期
- 2018→2020 加速する時期
- 2021→2025 リードする時期
ダ・ネイスン氏は就任早々、キャデラックの本社をデトロイトからニューヨークに移転し、エネルギーあふれる、モダンでハイテックなブランドに生まれ変わらせようとした。上記に見るように、現在はその第2フェイズに突入している。
ダ・ネイスン氏自身は2018年早々にGMから離れ、現在は新プレジデントのスティーブ・カーライル氏が率いているけれど、10カ年計画はそのまま進行中で、第2フェイズでは半年に一度のペースで新型車を発表、日本にもこの3年の間にそれを導入する。さらに「キャデラック・ハウス」というデザインスタジオで用いるような照明を備えたショールームをもつディーラーを日本で拡大していく予定だという。
昨2017年、キャデラックはグローバルで35万9000台を販売。過去最高は1978年の36万台で、ということは、2018年は40年ぶりの記録更新になるに違いない。
というようなことを、さる9月某日、河口湖を見下ろす高台にある高級旅館「ふふ河口湖」をベースにした試乗会におけるプレゼンで知った。トランプ大統領が巻き起こした米中貿易戦争の行方も気になるところではあるけれど、少なくともこの試乗会が開かれた時点では、キャデラックは中国市場で好評で、イケイケなのであった。
でもって、現在あるキャデラックの3種類のセダンと2種類のSUVの日本仕様のうち、webCGでは中型のXT5クロスオーバーと、フルサイズのエスカレード、2台のSUVを選択し、1台ずつ河口湖周辺チョイ乗りドライブに連れ出した。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いろんな部分が“いまどき珍しい”
まずは5人乗り、中型SUVのXT5クロスオーバーである。2015年暮れのロサンゼルスモーターショーで発表され、翌年の春から生産開始、日本では2017年秋に販売開始している。現行キャデラック中、グローバルで最も売れているモデルだ。
エンジン横置きのプラットフォームは軽量がジマンの新開発モノで、先代にあたる「SRXクロスオーバー」より126kg、「アウディQ5」(たぶん先代)より45kg、「メルセデス・ベンツGLE」より295kgも軽い、とキャデラックは公言している。3.6リッターV6はいまどき珍しい自然吸気で、最高出力314ps/6700rpm、最大トルク368Nm/5000rpmという高回転型で、ファミリーSUVとしては、いまどき珍しいぐらい排気音が大きい。負荷がかかっていないときには2気筒休んで燃費を稼いでいるはずだけれど、河口湖周辺、いや、おそらく高速道路でアクセルペダルを踏んだり緩めたりしても、気づかないだろう。
センターコンソールのスイッチで、「ツーリング」モードを選べば、前輪駆動になり、「全輪駆動」を選べば、足が柔らかいまま4WDに切り替わる。「スポーツ」にすると、明確に硬くなる。SUVのつねで、タイヤが235/55R20とでっかい。それにしては河口湖周辺の荒れた路面でもそう悪くはない。「リアルタイムダンピングサスペンション」という可変ダンパーがいい仕事をしているのだろう。
ルームミラーに車体後部のカメラの映像を映し出すシステムは、映像もクリアで、よいアイデアである。後席に美人を乗せたりしたとき、ジロジロ見ることができなくて残念な場合もあるかもしれないけれど、あ、そういうときはミラーに戻せばよいのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
端々に見られるライバルとの違い
試乗車は「セミアニリン フルレザー シート」のプラチナムだったので754万9200円。安いほうだと668万5200円。アウディQ5の一番高いのが691万円。ただし、Q5は2リッター直4ターボにすぎないから、セグメントが異なるという見方もできる。一方、メルセデス・ベンツGLEの日本仕様は3リッターのV6ディーゼルのみで、878万円もする。キャデラックは、Q5ともGLEとも異なる独自のキャラクターをつくり出そうと奮闘しているわけである。
ガラパゴスの日本列島に住んでいると、キャデラックのモダン&ハイテク路線はインターナショナルに過ぎてピンと来ないわけだけれど、テスラに対抗すべく、アメリカではハイウェイ上での自動運転システムが実用化されていて、それが日本市場にも導入されれば、極東のプレミアムブランドの勢力地図も一気に変わる可能性が、ないとはいえない。
次に乗ったキャデラック・エスカレードは、大きいことはいいことだ、のわかりやすさに魅了される。そのでっかいこと。ドアを開けると、ボディー下部からステップがシュッと出てくる。これがないと運転席にもよじ登れない。全長5195×全幅2065×全高1910mm! ホイールベースは2950mmと、「ロールス・ロイス・ファントム」ほどではないけれど、後ろを振り返ると、背が高い分、室内が広大な洞窟のように感じる。「プラチナム」の場合、2列目がキャプテンシートになっていて、真ん中がどかんと広がっている。7人乗りなのだ。
スターターボタンを押せば、ヴァフォンッ! と6.2リッターのV8 OHVが目覚める。8段オートマチックのシフトレバーは右側にあって、昔ながらに手前に引いてガチャンコガチャンコしながらNからDに入れる。そうしてブレーキをリリースすれば、巨体はスッと動き出す。アクセルを踏み込むと、最高出力426ps/5600rpm、最大トルク623Nm/4100NmのアメリカンV8がヴオオオオオッと空気を震わせる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
やっぱりアメ車はでっかくないと!
乗り心地はトラックである。なんせ、もともとトラックなのだからしようがない。いや、しようがないのではなくて、そこが魅力なのだ。静粛性やら乗り心地やら、快適性に関して、そうとう手が入っている。ダンパーにはGMお得意の「マグネティックセレクティブライドコントロール」が使われている。この可変ダンパーの貢献もあって、285/45R22という巨大なタイヤを履いているにもかかわらず、路面からの直接的なショックはほとんどない。
そもそも現行エスカレードは2015年に登場した4代目で、このときプラットフォームを新調している。キャデラックのエンジニアたちは「メルセデス・ベンツGクラス」の開発陣たちがそうしたように、あえてフレームのあるトラック用プラットフォームを選んだのだ、たぶん。前は独立式のダブルウイッシュボーンだけれど、後ろはリジッドで、それゆえ細かい上下動、振動を許す。これがグッド・バイブレーションになっていて、ロケンロールやヒップホップやカントリーミュージックとシンクロする。
ロールス・ロイスが宮殿だとすれば、キャデラックは丸太小屋の牧場で、これぞ「アメリカン・ラグジュアリー」といわれると、実に腑(ふ)に落ちる。丸太小屋こそアメリカの男たちが手に入れたいと夢見るものなのだから、おそらく。
というわけで、やっぱりアメ車はでっかくないと! ということを相変わらず思っちゃうのである、いまはもう21世紀だというのに。試乗したエスカレード プラチナムは1360万8000円。この値段で2650kgもの鉄の塊が購入できる。安くないですか?
(文=今尾直樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
キャデラック・エスカレード プラチナム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5195×2065×1910mm
ホイールベース:2950mm
車重:2670kg
駆動方式:4WD
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:426ps(313kW)/5600rpm
最大トルク:623Nm(63.5kgm)/4100rpm
タイヤ:(前)285/45R22 110H M+S/(後)285/45R22 110H M+S(ブリヂストン・デューラーH/Lアレンザ)
燃費:シティー=14mpg(約6.0km/リッター)/ハイウェイ=21mpg(約8.9km/リッター)(米国EPA値)
価格:1360万8000円/テスト車=1367万1900円
オプション装備:フロアマット<6枚セット>(6万3900円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:14215km
走行状態:市街地(10)/高速道路(0)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
キャデラックXT5クロスオーバー プラチナム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4825×1915×1700mm
ホイールベース:2860mm
車重:1990kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:314ps(231kW)/6700rpm
最大トルク:368Nm(37.5kgm)/5000rpm
タイヤ:(前)235/55R20 102W/(後)235/55R20 102W(コンチネンタル・クロスコンタクトUHP)
燃費:シティー=18mpg(約7.7km/リッター)/ハイウェイ=25mpg(約10.6km/リッター)(米国EPA値)
価格:754万9200円/テスト車=774万9000円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイトトゥリコート>(12万9600円) ※以下、販売店オプション フロアカーペット(7万0200円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:7556km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(10)/高速道路(0)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。

















































