「ハイ、メルセデス」で話題の「MBUX」
試して分かった「できること」と「できないこと」
2018.10.31
デイリーコラム
とにかくいじってみたい!
2018年10月18日に国内デビューした新型「メルセデス・ベンツAクラス」。その商品発表会でクルマのカッコよさに感激した筆者だが、会場で行われた「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」のデモンストレーションにも大感激した。
ご存じの方も多いと思われるが、MBUXはメルセデスの最新鋭の車載インフォテインメントシステムである。「ハイ、メルセデス」で起動する優れた音声認識システムを備えており、自然な対話のようにして、カーナビの目的地設定をしたり、車両の機能をコントロールしたりできる。詳しくはこちらやこちらをご参照いただきたいのだが、とにかく筆者は、いじってみたくてたまらなくなった。
輸入元であるメルセデス・ベンツ日本(MBJ)に問い合わせてみると、まだ広報活動用の貸し出し車両は用意していないのだが、ユーザー向けの展示車両があるのでそれをどうぞという寛大な対応をしていただく。というわけで某日、東京・六本木にあるメルセデスのブランド発信施設「Mercedes me(メルセデス ミー)」にお邪魔してきた。MBUXとの“交流”の様子をお伝えする。
拡大 |
関西弁は使えるのか!?
まずはお手本どおりの使い方をチェックする。MBUXは「暑い」と言えばエアコンの温度設定を1℃下げてくれるし、「寒い」と言えば今度は1℃上げてくれる。音声認識もその後の作動もスムーズで、このあたりについては、Appleの「Siri」にもヒケを取らないように感じた。ただし、暑いと思っているときに1℃ぽっち下げてもらっても……というのが正直なところだ。そこで今度は「とても暑い」と言ってみる。するとMBUXは反応しなかった。MBJのスタッフに聞いてみると「そういう場合は温度を直接指定していただければ」ということで、「温度を20℃に」と言うとMBUXは即座に対応してくれた。
続いてはカーナビ機能を試す。「東京タワーに行きたい」と言うとセンタースクリーンに目的地候補が3つほど表示される。このときは「東京タワー」「モスバーガー東京タワー店」「31アイスクリーム東京タワー店」の3つだったが、それぞれに番号が振られているので、好みのものを指定すれば目的地設定は完了する(住所はどれも同じだけど)。ちなみに「東京タワー、行ってみたいねん」と、テキトーな関西風の言葉づかいをしてみたのだが、問題なく認識された。
目的地ではなく、目的を伝えてもいいのが面白いところで「おすしを食べたい」「カレーを食べたい」と言ってみると、それぞれ近隣のお店がきちんと表示される。もちろん、「ガソリンを入れたい」でも「野球をしたい」でもOKである。
このほかにも「フジテレビが見たい」「TOKYO FMを聞きたい」「アンビエントライトの色を赤に」といったものも試してみたが、まず音声認識を失敗することがないし、対応もスピーディーかつ正確である。「燃費データ教えて」と聞くと「リセット後の燃費は27.6キロメートルパーリッターで……」と読み上げてくれたり、「ETCカード入ってる?」と聞くと「ETCには非対応です」(デモカーのためETC車載器が装着されていなかった)と教えてくれたりと、細かなところにも目配りができている。
できないことを探し求めて
しかし、相手は王者メルセデス・ベンツ(の車載インフォテインメントシステム)である。自然なやり取りができる一方で、「これくらいはできて当然」という気持ちが筆者にあったのも事実だ。そこでひと泡吹かせてやろう(?)と考え、ポケットに忍ばせていた「マル秘コマンドリスト」を取り出した。要は、これはできないだろうとか、この質問で困らせてやろうといった、ちょっとイジワルなコマンド&質問をまとめたものである。
さて、どれから試してやろうかと考えている筆者に向け、MBJのスタッフから「それ、ほとんどできませんよ」というキツいひと言が。「メモ帳を開いたときに中身が見えちゃいました♪」と言われてしまってはぐうの音も出ない。
ちなみに用意していたコマンドの一部をここにさらすと、「エンジンを止めて」「ドライブモードをスポーツに変更」「『フォルクスワーゲン・ゴルフ』についてどう思うか教えて」といったものである。
このうち、エンジンやドライブモードについては、誤作動したときの危険を考慮して、あえて対応していないそうだ。シートポジションの調整やドアウィンドウの開閉、アダプティブクルーズコントロールの設定なども同様である。「あそこの駐車場でメルセデスのエンジン止めてご飯食べよう」といった会話に反応して、走行中にエンジンが止まってしまうかもしれないし、助手席の同乗車が「シートを倒して」と発したときに、運転席が倒れてしまうかもしれない。そうした危険を遠ざけるための判断だそうである。
できないことでも認識はしている!?
ゴルフについてどう思う? という質問については、できないと知った上であえて試してみた。確かに答えられず、MBUXは何のレスポンスもしない。先述した「とても暑い」も含め、できないコマンドに対しては無言を貫くのがMBUXの流儀のようだ。しかし筆者は、この無言を貫くという対応が、実はMBUXの優れた部分のひとつではないかと思うのである。「ゴルフに行きたい」と言うと、MBUXはゴルフ場やゴルフ練習場、ゴルフ洋品店などをしっかりとサジェストしてくれる。ということは筆者のくだらない質問と、ゴルフに行きたいという要望とをしっかりと聞き分けている。つまり、無言で対応せざるをえない事柄については、対応の仕方を人間から教わっていないだけということではないだろうか。
この点に関しては「まだMBUXは勉強中です」と、MBJの担当者からあっさりと白旗宣言が出た。しかし、実は本国ドイツバージョンには、こうした雑談モードのような機能がすでに一部実装されているらしい。日本語バージョンについても「12月の納車まではまだ少し猶予がありますので……」と、含みを持たせた。
結局、この日の体験でできなかったのは、メーカーが安全性に配慮してオフにしていることと、利便性にはまったく関係のない余計なことだけだった。つまり、普通のことが普通にできた。コツなども必要なく、日本語が話せれば誰でも使える。
土地勘のない場所への家族でのドライブ。お父さんが「ちょっとトイレ」とコンビニへ寄った隙に、子どもたちがカーナビの目的地をトイザらスに変更するといったようなことは、造作もないことなのである。
(文と写真と編集=藤沢 勝)
拡大 |

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
-
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車NEW 2026.1.14 基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。
-
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して 2026.1.13 マツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。
-
やめられない、とまらない! 2026年は一気に普及してほしい、自動車の便利な装備3選 2026.1.12 2025年に体験したなかで、2026年以降はもっと普及してほしいと思わずにはいられない、自動車の装備・機能とは? 数々の国産車・輸入車に試乗した世良耕太がイチオシのアイテムをピックアップ。その魅力について語る。
-
激変する日本の自動車関連税制! 実際のところ私たちにどんな影響があるの? 2026.1.9 ガソリン税の暫定税率廃止に、環境性能割の撤廃と、大きな変化が報じられている日本の自動車関連税制。新しい税制は、私たちにどんな恩恵を、あるいは新しい負担をもたらすのか? 得をするのはどんなユーザーか? 既出の公式発表や報道の内容から考えた。
-
「ランクル“FJ”」はいつだっけ? 2026年の新車発売カレンダーを確認する 2026.1.7 2026年も注目の新車がめじろ押し。「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」「日産エルグランド」「マツダCX-5」など、すでに予告されているモデルの発売時期を確認するとともに、各社のサプライズ枠(?)を予想する。
-
NEW
第857回:ドイツの自動車業界は大丈夫? エンジニア多田哲哉が、現地再訪で大いにショックを受けたこと
2026.1.14エディターから一言かつてトヨタの技術者としてさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さん。現役時代の思い出が詰まったドイツに再び足を運んでみると、そこには予想もしなかった変化が……。自動車先進国の今をリポートする。 -
NEW
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.14試乗記「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。 -
NEW
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車
2026.1.14デイリーコラム基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。 -
NEW
第98回:「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」(前編) ―レースで勝つためなら歪なデザインも許される?―
2026.1.14カーデザイン曼荼羅“世界のTOYOTA”の頂点を担う、「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」。話題騒然の2台のスーパースポーツを、カーデザインの識者と大検証! レースでの勝利に振り切ったGR GTの歪(いびつ)な造形は、果たしてアリや、ナシや? -
NEW
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して
2026.1.13デイリーコラムマツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。 -
最近のターボ車が“ドカン”とこないのはなぜ?
2026.1.13あの多田哲哉のクルマQ&A内燃機関車のなかで、ターボ車の比率が高まりつつある。しかし、過給に際して、かつてのような「ドカン」と急激に立ち上がるフィーリングがなくなったのはなぜか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。




































