クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

レクサスES300h“バージョンL”(FF/CVT)/ES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)

ホッとするサルーン 2018.11.30 試乗記 下野 康史 日本国内での販売がいよいよ始まった、レクサスのセダン「ES」。新型では、従来モデルで好評だった“快適性”を一段と磨き上げたというのだが……? 最上級グレードとES初のスポーティーグレード、2モデルの試乗を通して乗り味をチェックした。

海外の売れっ子を日本でも

レクサスセダンの新顔が「ES300h」である。レクサスESの名では本邦初登場だが、なつかしい「トヨタ・ウィンダム」の血を引く大型FFセダンである。アメリカでは1989年以来これが7代目のESにあたる。いまは米国のレクサス販売もSUVが優勢だが、かつては年間8万台以上を売ったこともあるセダン系の稼ぎ頭である。

ES300hの基本構成は、1年ほど前に出た「トヨタ・カムリ」と同じだ。レクサスでは「GA-K」と呼ぶ新世代プラットフォーム(車台)を採用し、直噴2.5リッター4気筒にモーターを組み合わせたハイブリッドユニット「THSII」を搭載する。

ただしそこはレクサス。スピンドルグリルを与えられた4ドアボディーはカムリより9cm延長され、ほぼ5mに近い。中身にもいっそうの剛性強化と遮音対策が加えられている。エンジンとモーターの最高出力やトルクは変わらないが、システム最高出力は211psから218psに微増している。

グレードは、標準モデル、Fスポーツ、バージョンLの3種類。いちばん高いカムリハイブリッドは約440万円だが、ES300hは580万円から始まる。レンタカーのようなフリート需要は期待できないクルマだから、販売目標は月350台と控えめだ。横浜みなとみらいで開かれた試乗会ではバージョンL(698万円)とFスポーツ(629万円)を試すことができた。

これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。
これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。拡大
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。拡大
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。拡大
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。拡大
レクサス ES の中古車

意外に人気のハイテクミラー

この新型レクサスで、クルマそのものより大きな話題をさらっているのが、「デジタルアウターミラー」である。左右ドアミラーの鏡をカメラに置き換え、映像を車内の液晶5インチディスプレイで見せる。カメラもディスプレイもパナソニック製。量産車世界初のミラーレスドアミラーである。

試乗車に乗り込むと、真っ先にそのディスプレイが目に入る。パワーユニットを起動すると、映像が立ち上がる。初物だが、思いのほか違和感はない。フェンダーミラー時代を知っているオヤジでも意外やすんなり使い始められた。

まず最初に感じた恩恵は、左右の視点移動量がノーマルミラーよりはるかに小さいこと。特に運転席側ディスプレイはすぐそこにある。アオリ運転には敏感になりそうだ。

画角も広く、後輪アルミホイールの盤面がわずかに見える。鏡のドアミラーでは真似できないアングルだろう。バックギアに入れたり、右左折でウインカーを出したりすると、さらに画角を広げる機能もある。カメラのハウジングはドアミラーよりずっと細身だから、フロントピラーまわりの死角が減るのもいい。今回は好天の昼間だったが、サイドウィンドウが曇っていたり、雨滴でぬれていたりしても、当然その影響は受けない。夜間は実際よりも明るく映るらしい。

ただ惜しいのは、映像の精彩度が低いこと。それでも機能的には十分だが、ダッシュボードにあるディスプレイ類の鮮やかさに比べると、見劣りする。原因はカメラのほうで、130万画素しかない。信頼性や耐久性の保証を考えると、まずはこれでスタートした、ということのようだ。でも、可能性は大きい。スーパーカーのような、デザイン優先、視界二の次のクルマを救うデバイスにもなるだろう。デジタルアウターミラーはバージョンLにのみ20万円(税抜き)のオプションとなるが、7割が選んでいるという。

サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。
サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。拡大
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。拡大
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。拡大

新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。


	新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。
	拡大

畳の上を歩くがごとし

ハイテクドアミラーに目を奪われていると、ふと忘れがちだが、ES300h“バージョンL”はゆったりした快適な大型サルーンである。まず乗り心地がいい。骨太でフラットなドイツ車のテイストとは違う、徹底して当たりの柔らかい、やさしい乗り心地だ。

標準モデルとバージョンLには新開発の「スウィングバルブショックアブソーバー」が備わる。ダンパーのピストン部に10ミクロンの隙間(オイル流路)をつくることで、ごく微小な初期入力から減衰効果を発揮するというKYB製のメカニカルダンパーだ。特に町なかを流しているときの、畳の上を歩いているような乗り心地は、その恩恵かと思われた。

カムリで経験済みの2.5リッターハイブリッドは、さらに静かになった。モーターのみの走行中には「EV」マークが計器盤に出るが、基本、エンジンっぽさが“勝って”いる。その意味で、ナチュラルなハイブリッドである。

ただ、バージョンLはいちばん重いカムリと比べても車重が130kg以上重いため、ガツンとくるようなパンチはない。パワートレインだけではなく、前述の乗り心地も、ペダルフィールをはじめとする操作類のタッチも、決してガツンとはこない。外観こそアグレッシブだが、乗るとサクララウンジのようにホッとして癒やされる。ES300hの持ち味はそのへんだと思う。

後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。


	後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。
	拡大
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。拡大
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。拡大
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。拡大

VIPカーとしてもイケる

Fスポーツは電子制御ダンパー(AVS)を備え、19インチホイールを履く。車重(1720kg)はバージョンLより10kg軽い。

パワートレインはまったく同じだが、ドライブモードの「スポーツ」の上に、こちらは「スポーツ+」がある。それを選ぶと、タコメーターが赤くなるので、てっきり動力系の制御も変わっているのかと思ったら、スポーツ+で変わるのはAVSの硬さと電動パワーステアリングの重さだけだった。しかし、バージョンLからFスポーツに乗り換えると、車重の差以上に軽くなった印象がある。ヤングアットハート向きのES300hである。

全長5m近いのだから、リアシートの足もとは広大だ。シート座面もカムリより高く、見晴らしにすぐれる。VIPカーとしても使えそうだ。

駆動用のリチウムイオン電池は後席クッション下に置かれ、トランクルームも広大だ。バッテリーをここまで黒子にできたら、シューティングブレークのようなカッコいいステーションワゴンをつくってみたらどうだろう。デザイン優先で斜め後方視界が悪くなっても大丈夫。デジタルアウターミラーがあります。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。


	7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。
	拡大

“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。


	“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。
	拡大
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。拡大
レクサスES300h“バージョンL”
レクサスES300h“バージョンL”拡大
センターコンソールのシフトレバー周辺には、タッチパッドを使ったインフォテインメントシステムの操作デバイスが備わる。
センターコンソールのシフトレバー周辺には、タッチパッドを使ったインフォテインメントシステムの操作デバイスが備わる。拡大
助手席の側面には、リクライニングと前後スライドのスイッチが用意される。これにより、後席側からの操作も可能に。
助手席の側面には、リクライニングと前後スライドのスイッチが用意される。これにより、後席側からの操作も可能に。拡大
オプションまたは標準装備として用意される三眼LEDヘッドランプ。ウインカーは、光線が車体外側に流れるように見えるシーケンシャル式となっている。
オプションまたは標準装備として用意される三眼LEDヘッドランプ。ウインカーは、光線が車体外側に流れるように見えるシーケンシャル式となっている。拡大

テスト車のデータ

レクサスES300h“バージョンL”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1865×1445mm
ホイールベース:2870mm
車重:1730kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3600-5200rpm
モーター最高出力:120ps(88kW)
モーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
タイヤ:(前)235/45R18 94Y/(後)235/45R18 94Y(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:23.4km/リッター(JC08モード)/20.6km/リッター(WLTCモード)
価格:698万円/テスト車=757万8320円
オプション装備:デジタルアウターミラー(21万6000円)/デジタルインナーミラー(10万8000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万8680円)/おくだけ充電(2万3760円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ等>(1万1880円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2816km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

レクサスES300h“Fスポーツ”
レクサスES300h“Fスポーツ”拡大
“Fスポーツ”専用デザインの計器盤。メーターリングは可動式で、デザインを変化させつつ、さまざまな情報をドライバーに伝える。
“Fスポーツ”専用デザインの計器盤。メーターリングは可動式で、デザインを変化させつつ、さまざまな情報をドライバーに伝える。拡大
ドライブモードのセレクターは、メーターバイザーの左側に。ダイヤルをクリックすることで好みのモードに切り替えられる。
ドライブモードのセレクターは、メーターバイザーの左側に。ダイヤルをクリックすることで好みのモードに切り替えられる。拡大
スポーティーグレード“Fスポーツ”のステアリングホイールには、ディンプル本革を採用。リムの下部には専用のエンブレムも添えられる。
スポーティーグレード“Fスポーツ”のステアリングホイールには、ディンプル本革を採用。リムの下部には専用のエンブレムも添えられる。拡大

レクサスES300h“Fスポーツ”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1865×1445mm
ホイールベース:2870mm
車重:1720kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3600-5200rpm
モーター最高出力:120ps(88kW)
モーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)235/40R19 92Y(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:23.4km/リッター(JC08モード)/20.6km/リッター(WLTCモード)
価格:629万円/テスト車=696万9320円
オプション装備:ハンズフリーパワートランクリッド<挟み込み防止機能付き>(7万5600円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W/フロントセンターコンソール後部およびラゲッジルーム内>(4万3200円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(6万4800円)/デジタルインナーミラー(10万8000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万8680円)/おくだけ充電(2万3760円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ等>(1万1880円)/ITS Connect(2万7000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2772km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

レクサス ES の中古車
関連キーワード
関連記事
関連サービス(価格.com)

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。